- Amazon.co.jp ・本 (191ページ)
- / ISBN・EAN: 9784106104589
感想・レビュー・書評
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人生を無駄にしないために必要な足場。それが人間の基本であると言っています。
本書の最後のことば 「常時ばかりではなく、非常時にも対応できる人間であるために、その基本となるのは一人ひとりの人生体験しかありません。強烈で濃厚で濃密な体験、それを支える道徳という名の人間性の基本、やはりそれらがその人間を作り上げるのです。」が結論かとおもいます。
気になった言葉は次です。
・私はある皮肉な外国人が「人は皆、その年齢ほどに見える」と言った言葉が好きなんです。つまり年を取れば、人は誰も体験がふえ、精神の内容も豊かにある。ということです。
・足場というか、基本というのは、実に大切なものです。それがないと流されます。流されれば、自分を失いますし、死んでしまうこともあります。
・理想というものは、自分自身の生活と体験によってしかがっちり捕まえることはできませんし、知識だけで人生を渡って行くことは無理な話です。それがわからないと、現実感覚まで狂い始めるでしょう。
・粗末に扱われているものからは、臭気がするんです。
・どんな状況でも自分の頭で考え、想像し、工夫して生きることが人間の基本だと私はずっと思ってきました。
・戦後、日教組が「人間はみな平等」というおかしな平等意識を作り上げましたが、先生と生徒は決して平等ではありません。
・そもそも人間は、「他人は自分を理解してくれない」という覚悟の上に、長い人生を立てていかなくてはならないのです。
・日本の教育は、この「あなた自身の頭で考える」という部分が抜け落ちてしまっているようです。
・人間も世の中も中心となる軸、芯がしっかりしないと、そこから外れているという意識もなくなっていきます。
・世の中の常識というものは、自分があるからこそ認められるのです。自分と常識とが違っていることを十分にわかっているからこそそれに従える。大勢の人が育ことだから価値があって正しいと考えるのは間違っています。
・自分自身の価値観や好みを隠して他人に迎合することに慣れてしまうと、いつまでたっても人として芽が出ないばかりでなく、抑圧された欲望が、奇怪な人間の性格を生むことになります。
・ルールという表面的なことにとらわれると自由を失いますし、なぜそういうことをするかと、尋ねられても、人を納得させる返事はできません。・
・人間の基本から叩いて叩き潰してから、人間としてスタートさせる。それこそが教育を与えられる強みだろうと思いますし、そうでないと修羅場を乗り越える力も、それより以前に、自分で物事を考える習慣も身につきません。
・自分の持って生まれたものが、その目標に適しているかどうか、何より本人が早いうちに気づかなければならないんですけどね。
・労働というのは、プロとアマの2つにはっきりと分けられます。アマは、労働時間でもって労賃を得る人のことで、プロというのは、時間と全く関係がない働き方です。本当のプロの仕事というのは趣味娯楽の領域にあるものだと私は思っています。
・酔狂とは、前後左右も見境いなく、ひたすら、惚れた相手に愚かしく入れあげることですから。
・私はむしろ、へそ曲がりをしていれば食える、と考えるほうです。とにかく、人がいかない方向を選ぶ、他人がやりたがらないことをすれば少しは自分の生きる道があるかもしれない、ということです。
・ユーモアとは人間の真実をとらえた瞬間の笑いであって、人間はあまりに本当のことを言われるとつい笑ってしまうものです。
・真実を見る、というのはまず自分をきっちり見ることです。自分を見つめていればこそユーモアが生まれるのに、そうならないのは幼稚な証拠、つまり真実を見抜く力もないし、人間というものに対するごく一般的な恐れや同感のない証拠です。
・戦後教育は、「生」を唱えるばかりで、人間の「老・病・死」をしっかり見つめることを教えてきませんでした。
・延命ではなく、最後の希望をかなえてあげるのが人間の幸せだと考えていることに、私は心の底から感動しました。
・生きて行く上で困難がない人生なんて、多分この世にはないでしょうから。その困難の中から、生き方を発見し、その困難の意味を見つけるという過程を体験したことは、私にも何度もあります。
・私自身が年を取ってからますますはっきりと、非常時には老いた人間から使い捨てる、広い意味でのトリアージがあっていいとおもうになりました。
・もともと私は自分も他人も信用していないんです。
・人間は、自分が生まれた場所と時間を変えることも、過去まで遡って運命や歴史を変えることもできません。
目次は、以下のとおりです。
はじめに
第1章 人間本来の想像力とは
第2章 「乗り越える力」をつける教育
第3章 ルールより人としての常識
第4章 すべてのことに両面がある
第5章 プロの仕事は道楽と酔狂
第6章 ほんとうの教養
第7章 老・病・死を見すえる
第8章 「人間の基本」に立ち返る詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
曽野綾子さん、82歳・・・って思ってなかった!
年齢としてはお婆ちゃんなんだけども、なんだか若々しいイメージがあった。
曽野さんの論説や対談は好きで、この「人間の基本」も再読。
ご自身の経験から、人生における様々な要点について曽野なりの視点でズバリと解説されている。
所によっては、何だか怒られているような気持ちにもなるけども、やはり、曽野さんの正しさをの感覚に触れるのは気持ちがいい。
ユーモアに溢れ、人間にとっての芯を持った方の素敵な本。
話の所々にいろいろな運命が潜んでいるのを感じることができる。
「そもそも相手の中のなにかを批判するときは、翻って自分の中にも同じものが含まれていることを理解する必要があるのです。それが自分を笑いものにできるユーモアに通じるんですから。」
「教養はもしかするとその人間の肝の据わり方だともいえます。他人にどう思われようと、自分は自分なのだという強烈な個を備えながら、大切なことを静かに語れる。人間総体としての教養と魅力を言うもの 」
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【内容(「BOOK」データベースより)】
人生を無駄にしないために必要な足場、それが人間の基本である。末端ばかりを大切にする時代にあって、それがなければ、周りに流され、やがては自分を失い、死んでしまうこともある。ルールより常識を、附和雷同は道を閉ざす、運に向き合う訓練を…常時にも、非常時にも、どんな時代でも生き抜くために、確かな人生哲学と豊かな見聞をもとに語りつくす全八章。
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第1章 人間本来の想像力とは
第2章 「乗り越える力」をつける教育
第3章 ルールより人としての常識
第4章 すべてのことに両面がある
第5章 プロの仕事は道楽と酔狂
第6章 ほんとうの教養
第7章 老・病・死を見すえる
第8章 「人間の基本」に立ち返る
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3日で読みました。読みやすい文書でした。年をとって忘れてしまっていた事を思い出させてくれた。
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小気味いい文章である。
82歳にもなる著者の言い方はいまの日本人にいい意味での「喝」である。 -
視点が時にラディカルに感じられるのは、それだけ著者が生きた時代と現代が違う様相を呈しているからだろう。
著者のアイデアとして紹介されている一年間の国民総動員奉仕活動は、聞こえ方は徴兵制のようで反発を呼びそうだけれど、ドイツでは似たような制度が有ると以前友人から聞いた。すぐに大学受験戦争に突入するよりは、そういった機会がある方がよっぽど学生も「考えて決める」人間になるのではないか。「他に与える」成果を若者に経験させる必要性は確かに有ると思う。 -
ぜひ、読んで欲しい本です。
きっと、いろんなヒントがつかめると思います。ルールより人としての常識を考えるーdo-gooder いいところを見せびらかす人には、なりたくないと思いました。 -
■マインド
A.知識というものは方向性を持たせて集約しないと、あまり役に立たない。
B.人間は「他人は自分を理解してくれない」という覚悟の上に、長い人生を立てていかなくてはならない。
C.悪い状況、もっと言えば修羅場を経験する意味というのは、肉体や筋肉と同じように精神に負担かをかけることにある。
D.自由というものは義務を果たしてこそあるもの。
E.アマは労働時間をもって労賃を得、プロは時間と全く関係ない軸での働き方である。
F.他人より面白い人生を送るとするならば、危険を冒すこと。
G.「喜べ」とは、物事の見方を意識して変えること。
この世はオール・オア・ナッシングではないのだから、どんな悲惨の中にあっても一脈の希望の光明は見つけられるし、一方で、どんなに順調と思える時でもひっくり返される脅威は常にある。 -
居酒屋あおいにて、飲みながら読んだ。
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すごいためになりました。
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現代の日本社会への批判の本だ。今のニッポンは、甘ったれすぎ!過保護すぎ!他人任せすぎ!もっとしっかりせい!という説教だな。だが私にとっては共感するところが多かった。世間の言説をそのまま受け入れるのではなく、もっと自分の頭使って自分で考えろと。
100%の善人もいなければ100%の悪人もいない。誰もがその中間にいる。なんでも善か悪かに二分する考え方は幼稚すぎ。
ふむふむ。おもしろいわい。著者はかなり年上だけど。