- Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784106106736
感想・レビュー・書評
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熱い。著者は圧倒的な熱量に満ちている。もともと熱い気質の持ち主なのだろうけれど、その熱量は高次脳機能障害になった後も冷めることはない。いやむしろ更にその熱量は高まったのかもしれない。それは高次脳機能障害になったことは著者にとって僥倖だから。と自身は語っているけれど、自分が逆の立場だったら果たして障害を抱えてしまった無様な様を本にしようなんて思っただろうか。それは著者がもともとライターだったからだろうか。いやそれだけではない。世にどうしても伝えたいメッセージが著者にはあったからなのだ。そのことが読んでいくうちにズンズン伝わってきた。
書きたいことの元ネタが自分自身のカラダ。取材先は自分自身のカラダにある。そんな状況下にある圧倒的熱量のあるライターが書くノンフィクションが面白くないわけがない。ライターさんに向かって「うまい」なんて、恐れ多いのだけれど、絶妙な空気感なのだ。高次脳機能障害なんて、どう考えても暗い内容しかイメージできないけど、なんというか、クスッと笑ってしまう、人間味のある文体なので親しみやすいし、どんどん読み進めたくなる。
この渾身の力作、とにかくいろんな人に読んでほしいと思います。どんな人にも必ず気づきがある一冊だと思います。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
機能していた→壊れた、という境界がはっきりとする経験によって得られる、もしかしたらあの人たちは、生まれつきここが壊れていて、それでもなんとか生き延びて、でも完全には上手くやれないから生きづらいのではないのだろうかという気付き。幼少時に弾かれてしまった人々や、軽度と判断されてしまう障害者や、あるいは高齢者。「キレる高齢者」なんてのも、こういう症状なのだろうと思うと、見える世界が変わる。
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ノンフィクション作家である著者が、脳梗塞で倒れ、自らを取材対象とした一冊。
薄い新書ではあるが、色々な視点で読める、①脳梗塞の後遺症やリハビリ。機能面でだけではなく、メンタルに影響があるとは驚いた。②著者が取材対象にしている人への理解の変化、③家族、人とのつながり。
深刻な話でありながらユーモアを交えて語ることができるのは、難しい厳しい境遇な人々の話を一般人に読ませようと努力してきた著者ならではなのだろう。
この本を書き上げるに、病前と比べどれだけの時間と労力を要したのかはわからない。著者の回復を祝すとともに、これからも著者ならではの、弱者に光を当てた報道を願いたい。 -
マイノリティを取材する記者が脳梗塞を発症。マイノリティには発達障害と思わしき人も多く、自身が高次脳機能障害となったことで「当事者認識を言語化する」作業を行った本。当事者としてしかわからない認識を記者として記載されていのでリアルに理解しやすい。圧巻は後半部分。著者夫婦の歴史から始まり、著者の自伝的要素も入り、再生の物語。面白いと言ったら失礼だが読ませる文章で「深刻だけど笑える」本。
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41歳働き盛りのフリーランスライターが脳梗塞を発症し、その後のリハビリの日々を軽妙に記述。最悪自殺を考えてしまうほどの過酷な日々のはずなのに、ユーモアな文体で記載されていてついつい笑いを誘われた。脳梗塞を患うことでわかった既視感を実体験に基づいて記載していて感銘を受ける点が多々あったかな。
P9
あれ?この不自由になってしまった僕と同じような人を、僕は前に何度も見たことがあるぞ?
それはうつ病や発達障害をはじめとして、パニック障害や適応障害などの精神疾患・情緒障害方面、薬物依存や認知症等々を抱えた人たち。僕がこれまでの取材で会ってきた多くの「困窮者たち」の顔が、脳裏に浮かびました。
なるほど、原因が脳梗塞だろうと何だろうと、結果として「脳が壊れた」(機能が阻害された)状態になっているならば、出てくる障害や当事者感覚には多くの共通点や類似性があるようなのです。 -
脳梗塞で高次脳機能障害になった鈴木さんのルポ。本人自身の体験から語られているので、その辛さがよく分かります。
それでも面白おかしく書かれているので、気落ちすることなく読めます。
自分自身健康だと思っていますが、気をつけなあかんなと実感しました。
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#2016年87冊目 -
2016.9.16