- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784106106873
作品紹介・あらすじ
民主主義を信じるほど、不幸になっていく。憲法論争、安保法制、無差別テロ、トランプ現象……戦後70年であふれだすのは、民主主義の欺瞞と醜態である。国家を蝕む最大の元凶を、稀代の思想家が鋭く衝く。
感想・レビュー・書評
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雑誌「新潮45」に連載されている「反・幸福論」の2015年8月~2016年5月号を収録したもの。シリーズ6冊目。
著者の政治信条には賛同しかねる部分も無いわけではないが、民主主義を盲信・絶対視することの危うさに警鐘を鳴らす著者の考えに強く頷いた。
著者は、「デモクラシーとは、本質的に、他者を貶め、自己主張を繰り返し、自己の権利を大声で叫ぶ、体のいい、しかし「品の悪い権力闘争」だと理解すべきなのかもしれ」ない極めて危ういシステムなのであり、それは古代アテネの時代から自明のことだった。日本は、明治期に西洋の価値観や制度を盲目的に取り入れ、戦後の占領政策によって西洋のイデオロギーを強力に刷り込まれてしまったため、民主主義の負の部分を認識できていない。もうそろそろ「自由や民主主義…を絶対的な正義とみなすという自己就縛からさめるべきだ」という著者の主張、その通りだと思う。
「民主政治は常に不満分子を生み出し、また、新たに彼らの主張を実現してくれる指導者を選ぶために、政治は不安定になり、社会はそれまで以上に不確定なもの、偶然的なもの、恣意的なものによって揺り動かされてしまう」だけで、社会をよい方向に進化させることは期待できない、というのも、やや悲観的に過ぎるきらいはあるが、現代のグローバルな政治状況を端的に言い表している。
なお、第一次大戦に参入するにあたって、本来自国の利益を最大化させるための手段であるはずの戦争に「世界の民主主義を守る」という(見せかけの)道徳的意味を与えたウィルソン大統領が、その後のアメリカの戦争スタイル(正義のための戦争)を規定した、という歴史解説も勉強になった。 -
佐伯啓思先生による時事評論になります。5冊目?くらい?
その折々に感じ入る視点と表出される選び抜いた氏の言葉は
やはり自分たち凡俗の者等にとっては「ちょっと高め。
だけれど背丈と手を伸ばせば届くかも」そう感じさせる内容です。
阿呆な自分は読み返す必要も当然あるわけですが。
そういう辺り、読み手の好奇心と渇望を満たしていただける
そんな文章文体だと思います。
要は佐伯先生が一般向けに落としてくださっているわけです。
難しいことを解りやすい形で述べておられるのは才の成せる
教養故でしょう。阿呆は阿呆なりに理解して居ります。 -
ようやく憲法改正論議とトランプ勝利の意味がわかった
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西欧発の、観念・価値観「民主主義」なるものを明治以来日本社会は、一応、その姿を追いながら、国家としてのあるべき理想を求め歩んできたようだ。
だが、われわれは、民主主義あるいは、その根底を支えるとされている憲法について真剣に考えてきたのだろうか?
佐伯氏は、戦後70年で露呈したのは「憲法」「平和」「国民主権」を正義とするのは欺瞞と醜態だったと喝破する。
安保体制、無差別テロ、トランプ現象、直近の出来事から佐伯氏が本質を鋭く衝いたものであり、知的刺激に満ちた本格論考でありました。
内容ですが、
第1章 日本を滅ぼす「異形の民主主義」
第2章 「実体なき空気」に支配される日本
第3章 「戦後70年・安倍談話」の真意と
「戦後レジーム」
第4章 摩訶不思議な日本国憲法
第5章 「民主主義」の誕生と歴史を知る
第6章 グローバル文明が生み出す野蛮な無差別テロ
第7章 少数賢者の「民本主義」と愚民の
「デモクラシー」
第8章 民主主義政治に抗える「文學」
第9章 エマニュエル・トッドは何を炙り出したのか
第10章 トランプ現象は民主主義そのもの
ということです。
私的な読書との関係ですが、「昭和の三傑」「東京裁判」
「シャルリとは誰か」について、佐伯氏の考え方、特に「シャルリとは誰か」はギブアップしたのですが、トッドさんが何を書いたのかよく解りました。
いつも、佐伯氏の脳みそのフィルタリングで助かっております(笑)。 -
自由や民主主義
絶対的な正義?
価値の絶対化→我欲と驕り -
「民主主義」の本来の意味と数々の抗議活動において使われる「民主主義」の意味は、確かにずれているのかもしれない。
とはいえ、実際に行動で表現することは、民主主義のあるべき姿とは別に尊重されるべきものなのではないかとも思う。 -
民主主義 英語でdemocracy
democracy 民主政
democratism