ポピュリズム ~世界を覆い尽くす「魔物」の正体~ (新潮新書)

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  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106107092

作品紹介・あらすじ

これは「民主主義の自爆」である。エリートとインテリを敵視する「思想」が、なぜ世界を席巻するに至ったのか。橋下徹氏と対決した経験も持つ社会学者が、起源にまでさかのぼって本質をえぐり出す。

感想・レビュー・書評

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  • ・国民全体が政治に関心を持ち正しい知識を持たないと、耳障りの良い言葉を撒き散らすポピュリズムは台頭してくる。
    ・国民全体が政治リテラシーを上げるなんてことは不可能であるからポピュリズムの出現はこの不安多き社会では必然だった。炎上商法、迷惑系、強メンタル信者なども同じ原理だろうと思った。
    ・まずは自分に知識をつけることを最優先とし、その後自分への不利益を最小限にするもしくはそこで得できる方法論を考えていかなければならないと危機感を持たせてくれる一冊。


    以下覚書
    ・綺麗事ではなく本音むき出しでやり返すことがポピュリズムの本質であり、それが実現されるかどうかはもはや重要ではない。
    ・弱者が自分の評価を下げずに強者へダメージを与える手段。復讐。
    ・多くの人々の本音が汚れてゆく時、ポピュリズムが台頭する。
    ・国会議員という名前であろうと、意思決定が一部の者で行われる限り貴族政である。
    ・選挙による貴族政を支持したルソーは民主主義批判の始祖とみなさせる。
    ・間接民主主義は国会議員であるエリートとその他の人民という対立構造を生み出し、その中で人民側に立つことがポピュリズムの基本構造だ。
    ・民主主義のエリートvs人民という構造からポピュリズムが発生したとすると、ポピュリズムを否定することは民主主義を否定することになる。なぜならポピュリズムはもっと人民の声を拾えという訴えであるから、それを否定することは支配的な関係を肯定することになるからである。
    ・ロマン主義とは古典主義への対立として生まれた思想で、それまでの理性偏重、合理主義に対して感受性や主観に重きをおいた運動で恋愛賛美、民族意識の高揚、中世への憧憬といった特徴を持つ。産業革命の反動でもある。欧米におけるポピュリズム型の政治活動は、大なり小なりロマン主義の影響を受けている。とりわけ、いわゆる反エリート主義の中に、その波紋を見ることができる。
    ・ポピュリストは、必然的に独裁を志向せざるを得ない。政策が空虚で主張が一貫しない以上、特定の人物を投票の目印にせざるを得ないからである。当然のことながら、その人物には、多くの人々を惹きつけるだけの象徴性が必要となる。その際の最も一般的な手法が、人物攻撃になる。人民対人民の敵という二分法を設定し自分だけが人民側にいるメシアであり、批判者は改革の妨害者だと喧伝する。かくして、多くの人々が確かに改革は必要だといった形で丸め込まれてしまう。
    ・人民の敵を叩くという救世主的な演出は代議制の間接民主主義を非難することによってしか存在ない。その一方で、自らも選挙に立候補し、民衆煽動によって多くの票を集める。ここで自体は少しばかり錯綜する。ポピュリストたちは、間接民主制放棄しながら、間接民主制を利用して伸ばしているからである。
    ・対立する政党がぶつかりながらも妥協案を探すことができるのが民主主義であるがポピュリズムは人民と人民の敵という構図であるから妥協による共同意思はあり得ない。つまりポピュリズムは民主主義の破壊である。
    ・市民革命によってブルジョワジーが誕生すると、富裕層の市民は経済活動の自由と私的所有の自由を最優先し低負担低福祉の小さな政府を求めた。この市民革命によって王政を倒した状態を維持しようとするのが右派と言われる所謂保守派である。一方小さな政府を求める運動別に、富裕層ではない庶民層が自由放任より平等を強く要求する、つまり富の再分配や福祉的改革を求める動きが現れるこれが左派。ただし、伝統が何かによって保守するものが変わるので注意が必要。たとえば宗教国家では保守は伝統的な宗教の教えを守ることになる。
    ・ポピュリズム勢力に対する批判は自ら敵役を買って出る事態となる。代議制民主主義の中では国民側が変わらなければならない。
    ・ポピュリズムは大衆に迎合する態度ではなく、人心を荒廃させる煽動だ。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/685467

  • 日本維新の会批判の書。この度の衆院選の躍進について考えるヒントにはなるかもしれないが、著者の偏見も感じられるので、その辺は割り引いて読む必要はある。マジメに書けばそれなりの作品にはなったのではないかとも思えるが、新書だからこういう作りにしたのかもしれない。ただし「ポピュリズム」を敵視して、扇情的な文章を書くのもまたある種の「ポピュリズム」ではないのかと思えてしまう部分も無きにしも非ず。

  • 最後に橋下徹に対する不満をぶちまけるために書いた本なのかも。。と思うくらい感情的な部分もあったが、ポピュリズムが何なのか、何が問題なのかについては何となく学べる。ただ、議論の構成が論理的じゃないため、流れがわかりづらかった。

    米国でエリートがトランプを批判してもトランプを利するだけになっていることからわかるように、ポピュリストに煽動される人々に語りかけるには、その言語を考えなきゃいけないと思う。民衆と会話ができないマルクス主義者にはなってはいけないと、やはりどこかしら「上から目線」な本書を読んで改めて思った。

  • 丁寧なお人柄が作品通して伝わって来ます。
    フェイクニュースによって作られている部分を我々はきちんと理解しなければ行けません。
    正直頭にきます。なんでまたマスメディアの連中は誘導的な
    表現を使ってわざわざ捏造してるんでしょうね。
    当たり前の事実をそのまま・・・というのが無理なんでしょうが。
    5w1hはっきりしろと彼等自身で胸を張っておりますけれど
    ちょっとこういう「恥知らず」としか言いようがない真似は自分ではちょっと恥ずいと思うのですが。
     
     実は知り合いにおります。経歴詐称どころではない御仁を。
    いつの間にか自称「ジャーナリスト」ですよ。
    大学不法入学(すでに裏口入学ですらないのですよ)平然とこなしております。これはほんの手始めの実に可愛いものだと思い知リマして。
    というか気がついて寧ろ怖くなりましたよ。この御仁もはや何でも
    アリではないかと。疑惑のデパートどころか真っ黒クロスケ
    ではありませんかと。近頃こういう自称が如何にいい加減で有るのか
    痛感した次第であります。

  • ポピュリズムに関して述べているの部分は多いが、某政治家を批判している部分が目立ち、読んでいて「なんだかなー」と思うことが何度かあった。
    何となくフラストレーションが溜まってしまう作品であった。

  • シリーズ名 新潮新書
    発行形態 新書、電子書籍
    判型 新潮新書
    頁数 236ページ
    ISBN 978-4-10-610709-2
    C-CODE 0231
    整理番号 709
    ジャンル 政治・社会
    定価 842円

    民主主義の自爆が始まった。
      アメリカ、フィリピン、ヨーロッパ……。社会の分断を煽動する政治家が、至る所で熱い支持を集めている。エリートとインテリを敵視し、人民の側に立つと称するその「思想」は、なぜ世界を席巻するに至ったのか。ポピュリズムは民主主義にへばりついた「ヤヌスの裏の顔」であり、簡単に駆逐することはできない。橋下徹氏と対決した経験を持つ社会学者が、起源にまでさかのぼってその本質をえぐり出す。
    http://www.shinchosha.co.jp/sp/book/610709/


    【目次】
    はじめに [003-004]
    目次 [005-009]

    序章 ポピュリズムの危うさを実感するために 011
    1 「汚い方向」への煽動 011
    2 それは大阪から始まった 020
    3 問題の所在 026

    第1章 民主主義とポピュリズムの不可分な関係 032
    1 「ポピュリズム」は単なる「大衆迎合主義」ではない 032
    2 欧米も日本も「貴族政」である 035
    3 一九世紀:読み書きのできない者に選挙権を与えるべからず 040
    4 ポピュリズムの担い手は知識層だった 045
    5 反ポピュリズムを突き詰めると反民主主義になる 049
    6 国民主権は間接民主主義の中で成立する原則である 053
    7 ポピュリストの敵となった間接民主主義 058
    8 いがみあうエリート主義とポピュリズム 061

    第2章 現代型ポピュリズムとはどういうものか 067
    1 ポピュリストの実態は「デマゴーグ」 067
    2 自己規定のために必ず敵が必要となる 070
    3 民意を汲むのではなく「作る」 074
    4 ヒトラーが使ったトリック 079
    5 マスコミが魔女狩りの先兵となる危険性 086
    6 住民投票はそんなに素晴らしいのか 096
    7 小さな政府と改革詐欺 104

    第3章 民主政治を不安定化するもの 112
    1 選挙権に免許は必要か 112
    2 途方にくれた不安な個人 117
    3 反知性主義という温床 124
    4 妥協のない民主制は独裁制に転化する 133

    第4章 右派? 左派? それとも極右? 142
    1 保守とリベラルは対立概念ではない 142
    2 日本社会党が「リベラル」を訴える矛盾 150
    3 ナチスは極右なのか 153
    4 全体主義はこうして成立する 160
    5 ルペン氏は何を訴えたのか 165
    6 失業率とポピュリズムの関係 170
    7 ルペン氏のどこが差別的なのか 180
    8 国民戦線の躍進と限界 185

    第5章 二一世紀の民主主義 191
    1 「中庸な民主主義」を盾に移民受け入れを拒否 191
    2 民衆煽動の巧妙化 198
    3 ポピュリズムに毒される政治空間 210
    4 日本のポピュリズム:大阪の事例 216

    終章 ポピュリズムの危うさを確認するために 230

    あとがき(大阪にて、二〇一七年が幸多きことを願いながら 薬師院仁志) [234-235]

  • 今の政治の流れがようやくわかった。中身がないってこと

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著者プロフィール

1961年大阪市生まれ。京都大学大学院教育学研究科博士後期課程中退(教育社会学)。京都大学教育学部助手を経て現在帝塚山学院大学教授(社会学)。主な専攻分野は、社会学理論、現代社会論、民主主義研究。主な著書に『禁断の思考:社会学という非常識な世界』(八千代出版)、『民主主義という錯覚』(PHP研究所)、『社会主義の誤解を解く』『日本語の宿命』『日本とフランス 二つの民主主義』(以上、光文社新書)、『政治家・橋下徹に成果なし。』(牧野出版)、『ブラック・デモクラシー』(共著、晶文社)など。

「2017年 『「文明の衝突」はなぜ起きたのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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