いじめとひきこもりの人類史 (新潮新書)

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106108815

作品紹介・あらすじ

人類史500万年から、問題の本質をわしづかみ! 定住・占有・共同体……いったい何がヒトの社会に「いじめ」と「ひきこもり」を生みだしたのか。古代からポストコロナの未来をも見据える壮大な文明論。

感想・レビュー・書評

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  • 定住が生み出したいじめ。引きこもりもサルに見られるように動物的には異常な行動ではない。現代においてこの二つが社会問題として大きく取り上げられるのは社会によって生み出された問題を社会が解決しようとするなんとも矛盾な行為。昔からこの二つの問題があったにせよ、注目されなかったのは個々に焦点が当たることなどなかったからではないか。本当にこの問題を解決しようと思えば社会的生活を半分脱せるようになることが必要。その時々で選べるといいかも。今は全員が社会で生きなければならない。そうでない山で暮らすような人もいるがかなり困難。そこのサポートがいるのではないか。
    半遊動的、半社会的動物に生きることこそが平等になれると思う。

  • 原始時代からの考察が面白い。
    そんなにも前からある悪しき習慣だったとは。

  • 前半面白かったけど、後半マジで謎の展開。
    定住生活になってからいじめが発生するようになったとする仮説の着眼点は面白いし、人間が介入した野生動物においていじめ現象が発生するという議論の運びは一理あると思ったが、後半において展開される日本の歴史的人物を援用したエピソードの話は我田引水なのではと思うほど強引な展開になってて、霊長類学を専門とする筆者の議論がどこまで正確と言えるのか謎では?と思った。自己家畜化の話を持ってきているので、『言ってはいけない』の橘玲のように「日本人は世界で最も自己家畜化された民族である」といった議論に通じる展開になるのかと予想していたら、着地点が見えない終わりとなっている。恐らく、どういう結論にするか迷走したのではと邪推している。前半が面白かっただけに後半のグダグダな展開はかなりがっかりしてしまった。

  • 前半は良かった。進化人類学的な観点から、霊長類から人類が社会性を持つにあたってイジメというのがどうして生まれて定着していったかを解説している。現代では発達障害という性質は人類の多様性の一部であって、かつては定型とともに社会発展にプラスの存在であったことを示している。

    ところが中盤から後半がまったくいただけない。親鸞が迫害されたのはイジメ、良寛や鴨長明や吉田兼好はひきこもり、昔からこういうのはあった、みたいな話が展開される。しかしそれらの人たちは元々社会的地位がそれなりにある人たちで、権力闘争に破れたことや自らの意思によって結果的にひきこもった人たちである。現代社会で問題化しているひきこもりとは前提が大きく異なっていて、なんの役にもたたない歴史の小ネタでしかない。
    さらにはコロナ禍で日本では置き配が普及したことをもって、日本にはひきこもりの土壌がある、なんて論述を始めている。それは衛生観念や社会的な安定性がベースにあるのであって、ひきこもりと同一して話すのはこじつけでしかない。あげくの果てには総論のところで突然に社会不安者や自閉症に大麻はいいものだ!みたいな話を始めて、このひとは結局何を書きたかったのだろうかと落胆しかなかった。大麻の有用性の議論がしたかったら、別の書であらためてほしい。

    タイトル詐欺もいいところ。前半の論理展開でひきこもりの仕組みと現代での捉え方を論じてほしかった。

  • 現代におけるいじめやひきこもりの問題を人類史という大きなスケールで取り扱った本書。古代からいる異人変人を吸収する逃げ場がどんどん狭くなっていく様子を描いている。
    いじめやひきこもり、そして発達障害や社交不安障害といった問題は専門書等でよく触れるテーマではあったが、本書はそれら専門書とは一線を画す捉え方をしている。人類史という壮大な視座で捉え直すことで、異常を正常に戻すという従来の医学的な考え方から、異常正常の別はなく客観的に捉え直すことに成功している。専門家や当事者をはじめ、様々な人に読んでほしい一冊である。

  • 社会ができあがると、いじめが生まれて、そしてそこから逃げ出してひきこもる

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著者プロフィール

1954年大阪生まれ。専門は、ヒトを含めた霊長類のコミュニケーションの研究。
1983年 大阪大学大学院人間科学研究科博士課程修了
現 在 京都大学霊長類研究所教授

[主著]
ケータイを持ったサル 中央公論新社 2003年
音楽を愛でるサル 中央公論新社 2014年
自閉症の世界(共訳) 講談社 2017年

「2019年 『ニューロダイバーシティと発達障害』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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