ウクライナ戦争の軍事分析 (新潮新書)

著者 :
  • 新潮社
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本棚登録 : 61
感想 : 5
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106110009

作品紹介・あらすじ

二〇二二年二月、ロシアは空と陸から一斉にウクライナへの侵攻を開始した。双方の軍事力を比べれば短期で決着という予想に反し、ウクライナが猛反攻。泥濘の中、狙い撃ちされる戦車の列、首都にとどまる大統領と前線の高い士気――ミサイルにドローン、圧倒的な火力で迫るロシア軍に対し、欧米の軍事支援を受けるウクライナ軍との攻防は一進一退。長期化の様相を見せるなか、現代史研究の第一人者が鋭く読み解く。

感想・レビュー・書評

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  • 関心を寄せている問題に関する本で、こういう本は積極的に読んでみるべきだと思っている。そういう訳で興味深く、素早く読了した。
    ウクライナでの戦争は、残念ながら、未だ進行中である。だからこそ、「何が起きた?何故そうなった?」を少し整理する必要性も高いように思う。本書はそういう必要性を過不足なく満たすべく綴られたとしている。そして、その目標とした辺りには到達していると思う。
    両陣営が武器を置いて、停戦というようなことになっても、状況が落ち着くのに相当な時間も要してしまいそうな状況になってしまっているようにも見える。戦闘そのものは「膠着」と呼び得るような時期も経ているのだが、本書は開戦の頃やその以前の話題から、本年4月頃迄の事柄、ここまでの経過を踏まえた展望というような内容になっている。
    本書は「ここまでのあらすじ」ということでもないが、“開戦”以来の主だった戦闘を巡って伝えられていることが巧く整理されていて、非常に好かったと思う。
    また、話題になっている事柄に関して、「それはこういうモノである」と要領よく説明しているのも本書の好さだと思う。「ドローン」やら「無人機」から、兵士が携行する対戦車ロケット、大口径榴弾砲やロケット弾発射装置、各種艦艇や航空機というような、ニュースに登場するモノが判り易く説明されているのだ。
    ウクライナの戦禍の件は「進行中の事案」であり、「虚実入り交じっていると見受けられる多くの情報が飛び交っている」という情況であり、様々な観方、意見の発信も在る。そういう中ながら、本書は「後世の人が“あの時期?”と思いながら顧みることも出来るかもしれない」というような感じ、「判る範囲で“歴史”として事態を見詰めて綴る」というような雰囲気が感じられた。そういう意味で、出逢って善かった一冊だ。広く御薦めしたい。

  • 1回目読了。
    ウクライナ対ロシアの戦争を軍事的な視点でよく分析されていた。また、私達の予想を裏切り、ウクライナが検討している理由がよく分かる。
    この戦争が現代戦における教科書となるだろう。アメリカも中東から撤退し、自国の兵器を使用する機会がなくなり、また他国においてもこの戦争で兵器の性能を試す機会になるはずである。兵器の性能、戦略作戦戦術、サイバー宇宙領域、ドローン、情報、ミリタリーからノンミリタリーまで全てを使用したハイブリット戦により、大国ロシアを退かせることができることがわかる。これは、中国やイスラエルもよく学んでいるはずである。日本も学ばなければならない。
    また、この戦争を停めるには、アメリカや中国ではだめだろう。ロシアはアメリカを嫌うし、中国は中立的に見えても、自国利益の為であるだろう。(中国は、ロシアとウクライナに恩を売りたいはずである。台湾侵攻や輸出入面で考えると。)だからこそ、日本が間に入るべきではないか。両者ともに友好的であり、被爆国の日本が中立的に停戦協議を設けることは、大きな意義があると思う。ただ金を出すだけでなく、世界平和を実現させる為動くときではないだろうか。

  • 【配架場所、貸出状況はこちらから確認できます】
    https://libipu.iwate-pu.ac.jp/opac/volume/565724

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著者プロフィール

1932年,山口県生まれ。東京大学法学部卒業。官僚として大蔵省、防衛庁などに勤務の後、拓殖大学教授、千葉大学教授、日本大学教授などを歴任。専門は日本近現代史、軍事史。法学博士。著書に、『日中戦争史』(河出書房新社)、『慰安婦と戦場の性』(新潮社)、『昭和史の軍人たち』(文春学藝ライブラリー)、『南京事件―虐殺の構造』(中公新書)、『昭和史の謎を追う』(文春文庫)、『盧溝橋事件の研究』(東京大学出版会)、『病気の日本近代史―幕末からコロナ禍まで』(小学館新書)、『官僚の研究―日本を創った不滅の集団』(講談社学術文庫)など多数。

「2023年 『明と暗のノモンハン戦史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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