新潮日本古典集成〈新装版〉 金槐和歌集 (新潮日本古典集成 新装版)

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  • Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106208461

作品紹介・あらすじ

読みやすい! わかる! 好評シリーズが装いを新たに。古語辞典は不要です! 。独創的な歌人として名高い鎌倉三代将軍・源実朝の全和歌を収める『金槐和歌集』。

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  • 大河ドラマ『鎌倉殿の13人』で柿澤勇人さん演じる実朝に心を奪われた一人の私です。元々1185年以降の歴史はほぼ知らず、三代将軍は甥の公暁・大銀杏・暗殺、それから歌人として名を馳せていたらしい…くらいの知識でした。
    ドラマ内で柿澤さんがよむ声があまりに美声というのもありましたが、あんなにまっすぐで、運命に翻弄された実朝という人がどういう和歌を詠んでいたのかというのが気になって手に取りました。ドラマのイメージとあまりにもぴったりだと思ってしまったのは私だけ笑?素直に、伸び伸びと詠っているのが、あまりにも悲しい、それが美しいという感じでした。以下好きだった和歌


    ・山里に家居はすべし鶯のなく初こゑの聞かまほしさに
    ・ふるさとに誰しのべとか梅の花むかしわすれぬ香に匂ふらむ
    ・わが袖に香をだにのこせ梅の花飽かで散りぬるわすれがたみに
    ・あをによしならの山なる呼子鳥いたくな鳴きそ君も来なくに
    ・ 桜花ちらば惜しけむたまぼこの道ゆきぶりに折りてかざさむ
    ・立ちかへり見れどもあかず山吹の花散る岸の春の川なみ
    ・行く春のかたみと思ふを天つ空有明の月は影も絶えにき


    ・小夜ふけて蓮の浮葉の露のうへに玉と見るまでやどる月影
    ・岩くぐる水にや秋のたつた川川風すずし夏のゆふぐれ


    ・身につもる罪やいかなるつみならむ今日降る雪とともに消ななむ
    ・乳房吸ふまだいとけなき嬰児(みどりご)とともに泣きぬる年の暮かな

    雑 (怒涛に全部好きだった…)
    ・うつせみの世は夢なれや桜花咲きては散りぬあはれいつまで (この世は全て夢だから、桜の花も咲いてはすぐ散ってしまうのか。ああ、私はいつまで世にあるのか)
    ・思ひ出でて夜はすがらに音をぞ泣くありしむかしの世々のふるごと(その昔の、あの時この時の古い記憶がつぎつぎと脳裏によみがえり、夜通し声を上げて泣いている)
    ・朝ぼらけあとなき浪に鳴く千鳥あなことごとしあはれいつまで(…お前たちこそああいつまでの命だと思っているのか)
    ・物いはぬ四方の獣すらだにもあはれなるかなや親の子をおもふ

    無常を
    ・かくてのみありてはかなき世の中を憂しとやいはむあわれとやいはむ (生きていても、ただもうはかないばかりのこんな世の中を、つらいと言っていいのかかなしいと言うべきなのか。まったく嘆くすべさえない)
    ・現とも夢とも知らぬ世にしあればありとてありと頼むべき身か(夢とも現実ともつかぬこの世だから、生きているからといって本当に、それを頼みに出できる身であろうか)

    ・とにかくにあればありける世にしあればなしとてもなき世をも経るかも(生きてさえいれば、どのようにしてでも渡ってゆける世の中だ、何もなくて困っているとはいえ、それなりに日々を送っているのだな)
    ・聞きてしも驚くべきにあらねどもはかなき夢の世にこそありけれ(人が死んだと聞いたからといって、格別驚くにはあたらないが、それにしても、何ともはかない夢のようなこの世ではないか)
    ・世の中にかしこきこともはかなきも思ひしとけば夢にぞありける(この世の中では優れているものも取るに足りぬものも、よくよく考えてみれば、いずれも夢のようにはかなくもろもいものだ)
    ・世の中は鏡にうつる影にあれやあるにもあらずなきにもあらず(世の中は鏡に映る影なのだろうか。存在するでもなく、しないでもない)
    ・炎のみ虚空に満てる阿鼻地獄行方もなしといふもはかなし (阿鼻地獄、それ以外に死後の私が行きつくところはないというのも、まことに情けないことだ)
    ・時により過ぐれば民の嘆きなり八大龍王雨やめ給へ
    ・大海の磯もとどろに寄する波破れて砕けて裂けて散るかも

    実朝歌拾遺
    ・咲きしよりかねてぞ惜しき梅の花散りの別れはわが身と思へば(梅が咲いたばかりなのに、花を落とすありさまが頭にちらつき、今からもう惜しまれてならない。散るのを見ずに命を散らすのは、むしろ私の方なのだと思うと)
    ・朝浄め格子な上げそゆく春をわが閨のうちにしばしとどめむ
    ・出でて去なばぬしなき宿となりぬとも軒端の梅よ春を忘るな
    ・夏はただうつせみの世の夢なれや覚むる枕に秋風ぞ吹く(昨日までの夏は、はかないこの世の夢のひとこまにすぎなかったのか。目が覚めてみると、枕の辺りにはもう秋風が吹いている)

  • 実朝は建暦三年(一二一三年)頃に自選の歌集を編纂した。この歌集は『金槐和歌集』と呼ばれるようになる。「金」は「鎌倉」の鎌の字の「かねへん」である。「槐」は大臣の唐名である。周代の朝廷では三本の槐エンジュを植えて、太師、大傅たいふ、太保たいほうの位置を定めたことに由来する。ここから金槐は鎌倉右大臣となる。『金槐和歌集』は春・夏・秋・冬と賀・恋・旅・雑の八部で構成されている。

  • 玉石混淆。万葉調などと呼ばれるが、秀歌に万葉調が多いだけで、実際は新古今和歌集・古今和歌集よりか。

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