小林秀雄全作品 11

著者 :
  • 新潮社
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  • Amazon.co.jp ・本 (346ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784106435515

作品紹介・あらすじ

広大な、深刻な実生活を生き、実生活について、一言も語らなかった作家-、ドストエフスキー。その実生活の評伝、迫真の彫像。全文新字体、新かなづかい、そして脚注。

感想・レビュー・書評

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  • 2021/8/12

    この小林秀雄のドストエフスキイ論を、米川先生は社会思想史だと言ったが、これは言い得て妙だと思う。小林はドストエフスキイを、彼の手紙や伝記をもとに死児を想う母のように眺めるが、その眺め方は決して偉人としてではなく、あくまでロシアの過渡期を生きた1人の人間としてである。

    彼がゴッホについて書いたときも同じだった。ゴッホはたしかに類稀な画家なのだが、決して偉人ではない。彼のどうしようもない個性がそうさせたに過ぎない。それは社会、あるいは先天的に決められた運命の要請に応じただけである。

    小林が書くドストエフスキイの生涯を俯瞰すれば、彼もそれらに応じざるを得なかったに過ぎないことがよく分かる。

    では当時の社会思想とは具体的にどうだったのかと問われるが、小林は持ち前の博学で緻密に緻密にドストエフスキイを取り巻く状況を説明する。よくもまぁ、これだけの知識があるなと感心する。そしていつも小林の文章を読んだ後は、自分の卑小さに頭を抱える…。

  • 人生の謎について

     サント=ブウヴが、こういう事をいっている。
    「人生の謎とは一体何であろうか。それは次第に難しいものとなる、
    齢をとればとる程複雑なものとして感じられて来る、そしていよいよ裸な
    生き生きとしたものになって来る」
    (中略)
    人生の謎は、齢をとればとる程深まるものだ、とは何んと真実な思想であろうか。
    僕は、人生をあれこれと思案するについて、人一倍の努力をして来たと
    思っていないが、思案を中断した事もなかったと思っている
    (中略)
    併し謎は解けないままにいよいよ裸に、いよいよ生き生きと感じられてくるならば、
    僕は他の何が要ろう。要らないものは、だんだんはっきりして来る。(p552)

     ぼくは、世界を全く知らなかったときは、なにもかもわかっているように思っていた。
    しかし、少し世界のことがわかると自分は全くもって何も知らないということがわかった。
    日々人生の謎は深まるばかりだ。だけど、なにかもわかっているように思っていた時よりも人生というものを生き生きと感じられるようになっていたことに気づいた。

  • 2009/
    2009/

    満洲の印象. 小川正子「小島の春」. 文芸月評17. 「文学界」編輯後記22. 正宗白鳥「文壇的自叙伝」. エーヴ・キューリー「キューリー夫人伝」. 島木健作君. 映画批評について. クリスティ「奉天三十年」. 現代の美辞麗句. 疑惑1. 読書について. 現代女性. 文芸月評18. 「文学界」編輯後記23. ドストエフスキイの生活. 比類なき精神 米川正夫著.

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著者プロフィール

小林秀雄
一九〇二(明治三五)年、東京生まれ。文芸評論家。東京帝国大学仏文科卒業。二九(昭和四)年、雑誌『改造』の懸賞評論に「様々なる意匠」が二席入選し、批評活動に入る。第二次大戦中は古典に関する随想を執筆。七七年、大作『本居宣長』(日本文学大賞)を刊行。その他の著書に『無常といふ事』『モオツァルト』『ゴッホの手紙』『近代絵画』(野間文芸賞)など。六七年、文化勲章受章。八三(昭和五八)年、死去。

「2022年 『戦争について』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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