ブラジルへの郷愁

  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (233ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120041587

感想・レビュー・書評

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  •  文化人類学の古典的な名著であり、20世紀を代表する現代思想である構造主義を広く世に知らしめた『悲しき熱帯』の著者による写真集。著者自身が体験した1930年代のブラジルが、強い、共感と「Saudade(郷愁)」とによって紹介される。
     現代思想の多くは、それまでの旧弊な西洋哲学への批判をその出自に持つ。表に出ている現象ではなく、その現象を無意識のうちに現前させている構造(システム)に着目した構造主義も例外ではない。著者は『悲しき熱帯』によって大きな名声を得たが、一方で、西洋という怪物の前では非力であったろう。著者の抱えるその間隙が、本書に深い透明感を与えている。

  • ねえ。どうして猿を頭にのせるの?
    ほんとうに興味深くおもしろかった展覧会 企画展「アマゾンの生き物文化」をおもいだした。
    鍋のフタをあけたら猿のスープ!という衝撃の映像。猿の毛皮のかつら?帽子?の展示もあった。ギャラリートークもおもしろかったなー。

  • 写真
    古典

  • プロローグの最初の1ページ半。
    むかーし行った旅での虫除けの匂いの記憶、かすかになっても、同じ匂いによって体験される当時の記憶。に対して、そんとき撮影の写真は物として残っとるが、かつての体験を留めちょらん。だのに、それをかつての旅の実体として読者に見せるっていうこと。について言及。
    重要な写真の性質ですねぇ。
    記憶と写真はズレる。当然。写真は眼ぇじゃぁない。
    でも観る人はそれが撮影者の眼ぇであるかのように観るのね。
    この騙し合いを社会人類学者が指摘ってのが凄いよね。ソンタグじゃないのよ。

    サウダージ!何よりも偉大な時間

    あぁ、「学者さんになりたい」 ( 孫悟飯 )

  •  1930年代のブラジル滞在中に撮影した写真180点に素敵な文章を添え、『悲しき熱帯』から39年後の1994年に刊行された本書。先住民との出会い、ファインダー越しにとらえた彼らの表情―。20世紀最高の知性の1人とされる人類学者の若き日々の体験を鮮烈に伝える、稀有の記録。書籍ですが、写真集?いや、アイデアの凝縮された一言集?と1度に3度楽しめる本書。翻訳が良いからだと思いますが、レヴィ=ストロースと直接に対話しているような気分が味わえます。

  •  1995年に邦訳の初版が出、その後絶版になっていたクロード・レヴィ=ストロース(1908-2009)の写真+キャプション集『ブラジルへの郷愁』が、先々月、単行本サイズに縮刷され再刊された(中央公論新社 刊)。1930~39年のブラジル滞在を記した代表的著作のひとつ『悲しき熱帯』(1955)の39年後の別版で、ブラジル内陸部に居住するカデュヴェオ族、ボロロ族、ナンビクワラ族、ムンデ族、トゥピ=カワイブ族を、若き日のレヴィ=ストロース自身が愛機のライカで撮影した180点のスナップとキャプション文で編まれている。
     この本の出版に際してレヴィ=ストロースが取った姿勢は、全否定とまでは言わないまでも、非常にアンビバレントなものだ。「あらためて眺めてみると、これらの写真はある空白の印象、レンズには元来とらえられないはずのものの、欠如の印象を、私に与える。」と序文に寄せている。また、彼はこうも言っている。「核による地球全体におよぶ破滅のあとで、あちこちの散在して生きのびている人の群れを想像してみるといい。」

     訳者の川田順造も、あとがきにこう書き残している。「著者が地の果てと思われるような奥地にまで訪ねて行った先に発見したのは、『未開人』の原初の姿ではなく、白人の侵略の300年余りの歴史の中で、追われ、殺され、落魄して『未開になった』人々だった」と。彼らは、16世紀まではアマゾン川流域に高度な都市文明を築き、白亜の屋敷と豊饒なる食糧倉庫、そして花咲き乱れる庭園に囲まれて揚々と暮らしていたが、20世紀の彼らは無残にも、ジャングルの中で全裸で地べたに寝起きしている。それでも、彼らに向けられる著者のファインダ越しのまなざしはどこまでも温かいのだが、その温かみがかえって、のちに著者自身を暗くさせてしまう、ということだろうか。
     Tristes tropiques(悲しき熱帯)とは、最終戦争や環境汚染の果てに現出されるであろう私たちの未来をも、指し示している。かぎりなく「未開」としか思えぬナンビクワラ族の素っ裸の女たちの笑顔を眺めながら、たしかに私は居心地の悪さも感じとらざるを得ない。

  • 人類学者レヴィ=ストロースのブラジル調査旅行の写真集。
    レヴィ=ストロースにとってブラジルは特別な場所であったらしい。ブラジルは、サンパウロのような西欧と同じような文明を持つ大都市と、アマゾン流域の原住民の原始的な生活が共存する国である。サンパウロを出発して車、馬、そして徒歩で徐々にアマゾンの奥へ分け入っていき、原住民の生活を写真に記録している。風俗から住民同士の交流の儀式の様子などいろいろ面白い写真を撮影しており、白黒写真のみの地味な写真集ですが、当時のアマゾンの原住民の生活の様子を知ることができます。素裸のまま地べたで眠る(布団のような寝具を使わない)生活をする人たちがいたというのは、先進国の人たちにとっては驚きの習慣だったのかもしれません。地面に転がって眠る女性を何枚も撮影しているのを見ると、彼にとってもよほど衝撃的だったようです。

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