かたちだけの愛

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120041761

作品紹介・あらすじ

自動車事故で、片足を切断する大怪我を負った女優の叶世久美子。偶然、現場に駆けつけたデザイナーの相良郁哉は、その後、彼女の義足を作ることになる。しだいに心を通わせていく二人は、それぞれの人生の中で見失っていた「愛」を取り戻そうとするが…。平野啓一郎が描く、愛のかたち。

感想・レビュー・書評

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  • 久々の平野啓一郎作品、これで5作品目の読了となりました。

    著者の作品、小説よりも真っ先に手にしたのは「私とは何か」(講談社現代新書)、「個人」から「分人」へという考え方に感銘を受けそこから何冊か購入し、大切に読み進めています。

    本書は購入本ではなく、地区センターからお借りしました。
    (明日が返却日ってことに気付き、休日を利用して読み終えました)

    平野啓一郎が描く恋愛小説ですが、著者の作品では私の知らない日本語(単語という意味ではなく、表現の仕方や使い方といった感じ)が散りばめられていて、同じ時代を生きていることが恥ずかしくなる程にその才能に魅了されています。

    そんな中で手にした本書、単なる読み物としての恋愛小説と言ってしまうのは勿体ない。

    「平野文学の結晶」と評される本書、ご堪能ください。


    <あらすじ>
    自動車事故で片足を切断した女優の叶世久美子と、その義足を作ることになったデザイナーの相良郁哉。二人は互いに惹かれ合い、愛を育んでいくが、周囲の反対や誤解、嫉妬などの障害に直面する。叶はパリコレの舞台に立つ夢を追い、相良は分人という概念で愛を再定義しようとする。しかし、彼らの愛はかたちだけになってしまうのだろうか?

    この小説は、2009年から2010年にかけて読売新聞夕刊に連載されました。平野啓一郎公式サイトでは、この小説を「平野文学の結晶」と紹介されています。





    事故で片足切断の大怪我を負った女優。偶然彼女を救ったデザイナー。心を通わせていく二人は、それぞれに見失っていた「愛」を取り戻そうとするが・・・。切なく美しい、著者初の恋愛小説。

    内容(「BOOK」データベースより)

    自動車事故で、片足を切断する大怪我を負った女優の叶世久美子。偶然、現場に駆けつけたデザイナーの相良郁哉は、その後、彼女の義足を作ることになる。しだいに心を通わせていく二人は、それぞれの人生の中で見失っていた「愛」を取り戻そうとするが…。平野啓一郎が描く、愛のかたち。

    著者について

    1975年愛知県生まれ。京都大学法学部卒業。1999年、在学中に『新潮』に投稿した『日蝕』で芥川賞受賞。2008年『決壊』で芸術選奨新人賞を、2009年『ドーン』でドゥマゴ文学賞を受賞。 他の著書に『葬送』『顔のない裸体たち』など。

    著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

    平野/啓一郎
    1975年愛知県生まれ。京都大学法学部卒業。99年、在学中に文芸誌『新潮』に投稿した「日蝕」により芥川賞を受賞。『決壊』で平成20年度芸術選奨文部科学大臣新人賞、2009年『ドーン』でドゥマゴ文学賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

    • ヒボさん
      電子書籍、追い込まれますよね^^;
      寝る前にスマホを充電しちゃうので、ベッドに入ってからは出来るだけ文庫本を読むようにしています。
      何度ハー...
      電子書籍、追い込まれますよね^^;
      寝る前にスマホを充電しちゃうので、ベッドに入ってからは出来るだけ文庫本を読むようにしています。
      何度ハードカバーが顔の上に落ちてきたか(>_<)
      2023/10/14
    • なおなおさん
      ああ!あの韓国の絵本ですね。
      確かにヒボさんのブクログ本棚に突然、謎のキャラが現れました^^;
      これからも期待します(*`艸´)ニシシ
      ああ!あの韓国の絵本ですね。
      確かにヒボさんのブクログ本棚に突然、謎のキャラが現れました^^;
      これからも期待します(*`艸´)ニシシ
      2023/10/14
    • ヒボさん
      きっといろんな本がブクログ本棚を彩ってくれると思います(*^^*)
      きっといろんな本がブクログ本棚を彩ってくれると思います(*^^*)
      2023/10/14
  • 事故に遭い片足を失った『魔性』の女優久美子と助けたデザイナーの郁哉が義足の作成を通じて愛を育てていくストーリー。ほのぼのとした2人のシーンを挟みつつも何だかずっと薄暗い雰囲気があって結末はどうなるのか予想ができませんでした。
    郁哉とお母さんとの関係が私的には気になりました。狭い世間に閉じ込められて行き場のないお母さんの苦しさ、子供の頃は分からなかっただろうなと。お母さんの骨壷を開けるシーンが印象に残りました。

  • 「…人生で、何か三つだけ、自分の嫌な記憶を消してくれるって言われから、あれも入るでしょうね。」
    「わたしも、たくさんありますよ。考え出すと、余計なことまで思い出してしまいそうでふけど。ーあとの二つは?」
    「何でしょう?…今後の人生で起こるということのために取っておきます。」

    「一日二十四時間しかない中で、人間が考えられることって、三つしかないと思うんです。ー 過去のことか、現在のことか、未来のことか。焦らず少しずつ、未来のことを考えていきましょう。」

    「横軸がどれくらい人間に似ているか、縦軸が、見ている人がどれくらい共感を覚えるかでグラフにすると、基本的には類似度が高くなればなるほど右肩上がりで共感が増すんですけど、似すぎたところで、グラフがストンと落ちて、嫌悪感が強くなることを示すんです。不気味に感じる。ーで、まったく人間と同じになると、またそれが上がるんですが、そのグラフの形から、〈不気味の谷〉現象と言われているんだそうです。」

    「不遇の時に抱く一番醜い感情は、嫉妬だと思うんだな、俺は。嫉妬は何て言うか、頭の中を汚す感じがする。物事を一歩も前進させないよ。」

    『いつも言うことだけど、僕に出来ることがあれば、何でも言ってください。久美ちゃんの役に立てることは、いつでも僕の喜びです。』

    「…わたしのこと、…好き?…」
    「好きだよ。」
    「どうして、…そう言えるの?」
    「四六時中、何をしてても、久美ちゃんのことばかりを考えてしまうから。…そういうのって、好きとしか言いようがないよ。」

    「ねえ、…」
    「ん?」
    「わたし、生きててよかった。」

    『彼は今、久美といる時の自分が好きだった。他の誰といる時の自分よりも好きで、この自分なら愛せるかもしれないという気が初めてしていた。』

    『なぜ人は、ある人のことは愛し、別のある人のことは愛さないのか? ー愛とは、相手の存在が、自らを愛させてくれることではあるまいか? 彼は今、誰よりも久美を愛していた。そして、彼女の笑顔が、自分の傍らにある時にこそ、最も快活であって欲しかった。彼女にとっての自分が、そういう存在でありたかった。』

  • ラブストーリーの王道を平野氏が書いたらこうなりました的な作品。ラストも完璧なハッピーエンド。ご都合主義的なストーリーだが僕はこういうディズニーみたいなの好きです。マチネよりこっちを映画化すればよかったのに。

  •  作者の唱える分人主義がベースになっているけど、そんなことを抜きにして楽しめる恋愛小説。事故で片足を失った女優と、その義足を手がけるプロダクトデザイナーの愛のお話です。足を失うことでもたらされる深い悲しみを乗り越える様は、安っぽい感動ストーリーになってしまいがち、だけどやっぱり心打たれるものがある。

     著者は、この本に関するブログのエントリーで以下のように述べている。
    ー幼少期の親子関係が、成人後の恋愛観に大きな影響を及ぼす、という話は、実感として分かります。しかし、そこに相互に影響を及ぼし合う「つながり」があるのなら、恋愛がうまくいくことが親子愛を修復させ、親子愛の修復が恋愛をうまくいかせる、という可能性はあるはずです。ー

     親が親になった年齢を超え、親が退職して社会における役割を全うした今、社会での地位をようやく確立した我々世代。親との関係に今更ながら痛みを覚えているのは私だけじゃないはず。親子愛と恋愛という視点でこの本を読むのも面白いなと思いました。

  • 2017/10/30
    恋愛小説なんだけど、ただ相手のことが好きっていう高校生の恋愛じゃなく、人を愛するとは?という人間の普遍性を追っていると思う。
    その人といる時の自分が好きって当たり前かもしれないけど、意識せずにいてとても大事なことだと思う。

  • 事故で片足を無くした女優と彼女の義足を依頼されたデザイナーの恋愛物語。著者の『私とは何か』や『空白を満たしなさい』を読んで分人主義(他者との関わりの数だけ自分存在するという考え方)についての理解があったので話が分かりやすかった。人間には影の部分と光の部分が存在する。それを理解し受け入れてくれる他者こそ、自分を愛させてくれるのだと思う。郁哉も久美もそれぞれの存在を介して、未来へ前を向いて歩いていくラストが良かった。平野さんの作品は奥深く、読んだあともいろいろ考えさせられる。近著しか読んだことないけど、はまりそう。

  • 人物の感情描写がうまく感情移入しやすかった。
    人間らしい義足、ファッションとしての義足、健常者が羨む義足や義手などが世の中に溢れたらいいのに。

  • 相良郁哉(プロダクトデザイナー)
    叶世久美子(女優タレント)(中村久美)

    原田紫づ香(臨海ひかりの病院経営)
    淡谷大三治(装具士)
    庄司(リハビリ科の医師)
    緒方くん(郁哉の社員)
    曾我社長(叶世久美子の所属事務所社長)
    三笠竜司(久美子の元カレ)

    相良(郁哉の父)
    相良幸恵(父の後妻)
    滝川理沙(郁哉の幼馴染)

    相良志帆子(郁哉の実母)

  • 久しぶりの平野啓一郎氏の作品。王道のラブストーリー。マチネよりも読みやすい。彼が書くものは私の中で少し硬い印象があるのだが「こういう作品も書くんだ‼︎ 」と少し意外だけど良かった。また他の毛色が違う作品も読んでみたい。

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著者プロフィール

作家

「2017年 『現代作家アーカイヴ1』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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