あなたへの歌

著者 :
  • 中央公論新社
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感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (295ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120044779

作品紹介・あらすじ

東京のお菓子メーカー「サンディフーズ」で働く中国出身のメイは、結婚資金を貯めるため、中国語講師の副業を始める。大学時代から付き合っている日本人の彼は二歳年下。煮え切らない態度と別れを考えるが、天津への転勤が決まった彼にプロポーズされて-。そんなある日、中国語講座の生徒の一人、片瀬さんから「中国人の妻・阿桂の連れ子が天津に家出をしてしまった」と連絡が入り、思わぬ展開から、中国各地を探して回ることになる…。そして阿桂の隠された過去が明らかになって…。現代の日本と中国を舞台に描く「結婚」小説。

感想・レビュー・書評

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  • 4~5年前、愛読していた光文社のPR誌「本が好き!」に連載されていたのを毎月楽しみに読んでいたが、連載途中で無念の休刊。いずれ単行本として発売されることを待ち、待ち、待ちましたよ!
    日本で食品会社に勤める中国人の明月。結婚に焦るアラサーだが、忙しい日本人の彼とは心がすれ違い気味。そんな中、ひょんなことから中国語教室の講師を引き受け、戸惑いながらも教室の人々との交流を深めていく明月。
    この彼氏がね~、女はこうすべきだのうるさいくせに自分には甘々で、恩着せがましくて自己中でイライラする。まあ憎めないところもあるんだが…今どきの男はこうも女に押しつけがましいか?と思ったが、よく考えたら2000年になりたての日本と中国の舞台設定だった。当時のアラサーなら、明月も彼も自分と同世代でした。そう考えると、男の古風な価値観に納得。明月の、結婚と仕事の間で揺れる心もよくわかるのだった。
    きっと、そういう明月の迷いにスポットを当てて、日中間の恋愛の価値観の違いを軸にして展開されるのかと思っていた。が。描き下ろし部分の後半のストーリーは、予想を超えてスケールでかく広がっていく。
    中国語教室の生徒、片瀬氏の中国人の妻。連れ子である彼女の息子が諸事情により中国で失踪。中国に居を移した明月は、なり行きでその息子探しに関わることとなる。
    明月の恋愛とは無関係っぽい謎のプロローグの意味が、読み進めるほどに明らかになっていく。息子探しには、あまり仲の良くなかった中国語教師仲間の張さん、そして教室の生徒たちの中国観光ツアーも絡み(観光シーンの描写が楽しい)、ミステリー的要素を孕みながらの展開。中国に住む明月の姉や友人の結婚生活、食品会社同僚のキー&美伊子の国際結婚カップルのエピソードなども違和感なく挟み込まれ、盛り込みすぎなようだが不思議と破綻しない。独特の緊張感の中、ふっと気が抜けるようなコミカルな部分もあり。
    で、やっぱり気になるのが明月と彼の関係。人探しに夢中になられすぎては彼もへそを曲げるわけで、相変わらずぎくしゃくは続き、地雷も踏んでしまう。国際結婚だからこそ立ちふさがる壁。その壁の高さを痛感する。それでも互いに歩み寄りながら、少しずつ成長していく二人の関係には大いに共感できた。
    一体どういう方向に話が進むのか見えづらいときもあったけど、息子探しを通して片瀬の妻の過去を知ることで、明月もまた自分と彼との関係を見つめ直す。
    中国という国のスケールの大きさ、複雑さについても改めて考えさせられる。巻末には中国の地図とその主要都市(物語で訪れるところ)が載っているので、是非見ながら読んでほしい。
    連載時のタイトルは「牽手~手をつなぐ」。このタイトルが本書の内容を象徴してるなと読後つくづく思う。「牽手」は中国の歌。この歌詞が大事な場面でたびたび登場する。どんな歌なのか聴いてみたいな。楊逸作品は純文学色が強い印象があったけど、この作品は比較的エンタメ寄りで、飽きることなくのめり込んで読めた。たくさんの鳥が、思いを運ぶように飛び立っている表紙イラストも大好きだ。読了後はおいしいお酒を飲んだあとみたいに、じわ~っと、心があったかくなります。

  • 読んでいて、なんとなく元気で明るく前向きな気持ちになれるので、この著者の書く話は好きだ。

  • ◆きっかけ
    東方書店インスタ 2016/11/28

  • 主人公の中国人女性がたくましい。日本での生活、就職、結婚。いろんな問題を抱えながら強く生きていくことに、日本人にはあまり見られないハングリー精神を感じました。中国語を勉強したくなりました。

  • 楊逸さんの日中結婚物語

    桂林、陽朔も思い出しながら

    楊逸さんの小説はだんだん読みやすくなって来た、日本語がこなれて来たのか、私が中国人の思考方法に慣れて来たのか、

  • まず、装丁がいい!イラストの情景が。
    そして、ラブストーリーと日中交流をうまく絡めて
    展開させているところ。とても愉しく読んだ。
    私は楊逸さんの書く主人公の女の子がすき。
    なんともいえない純粋な可愛らしさといおうか。
    それにしても、恋愛ごとって国が違っても共通する
    ものがあるんだなぁ。これ、SATCでも思ったけど、
    国の違いより男女の違いの方がよほど大きいのだと思う。
    日本以上に「女性も働くことが当たり前」な中国で育った
    明月も「いつ結婚してくれるの?」という日本人女性に
    よくある感情に悩むのだから。
    ともかく、読んでさわやかな、ハッピーな気分になること
    間違いなし!女性におすすめ。

  • ヤン・イーの作品は本当に面白い。日本で見聞きする中国人の驚くような言動が中国人からみると当たり前のことだったりする。

    またその逆ももちろんある。

    中国人のメイは日本人の夫との間にギクシャクとした空気をなんとかうまくいかせたいと努力している。

    でも、アルバイトをやっていることを一年もだまっていたり、中国に旅行に行くことをなにも相談しないできめちゃったり、日本人からみたら、やっぱり理解できないよー

    それに、友達のために人探しをやってあげるのはいいけど、そのために、自分が一生懸命働いたお金をどんどん使って、夫が反対しているのに、友達を優先させるなんて、夫、怒っちゃってもしょうがないよ。

    でも、国際結婚なんだから、相手の国の悪口を言わないようにしているっていうのは、えらいよね。

    人に対する愛情はどの国でもやはり同じなのかな。風習が違うだけで。

    それから女性も結婚してからも、キチンと働いて自立したい、そうするのが当たり前というのはいいと思う。

    中国人の知り合いがいないので、ヤンイーの作品が中国を身近に感じ、一般市民の中国人を少しでも理解するのに役立っている。

    外国人がこれだけの日本語で小説を書けるのは本当にすばらしい。もっと読みたい。

  • 個人的には職業的に、中国語教室でのやりとりや学生さんたちとの絡みがおもしろかったです。

  • ところどころ(いや結構頻繁に)出てくる中国語が、少しだけ勉強してた私には面白かった~。
    夫婦の形はいろいろだけど、大事なものはなんだろう・・・
    ってことだよね。

  • 日本人でも中国人でも男女関係に悩む気持ちは変わらない。

    数年後めでたしめでたしの部分はいらなかったかな。

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著者プロフィール

(ヤン・イー、Yang Yi)
作家。1964年、中国ハルビン生まれ。
87年、留学生として来日。95年、お茶の水女子大学卒業。
2007年、『ワンちゃん』(文藝春秋)で文學界新人賞受賞。
翌08年、『時が滲む朝』(文藝春秋)で、
日本語を母語としない作家として初めて芥川賞を受賞。
『金魚生活』『中国歴史人物月旦 孔子さまへの進言』(以上、文藝春秋)、
『すき・やき』(新潮社)、『あなたへの歌』(中央公論新社)、
『わが敵「習近平」』(飛鳥新社)、『中国の暴虐』(共著、WAC)など著書多数。
現在、日本大学芸術学部教授。

「2021年 『「言葉が殺される国」で起きている残酷な真実』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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