ドミトリーともきんす

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (126ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120046575

感想・レビュー・書評

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  • 科学とか、物理とか、普段の生活にはとんと縁のない世界。それを少し身近に近づけてくれる。

    ふしぎだと思うこと これが科学の芽です。
    よく観察してたしかめ そしてかんがえること これが科学の茎です。
    草子て最後になぞがとける これが科学の花です。
                        朝永振一郎

    詩と科学遠いようで近い。出発点が同じだからだ。
    どちらも自然を見ること聞くことからはじまる。
    バラの花の香をかぎ、その美しさをたたえる気持ちと、
    花の形状をしらべようとする気持ちのあいだには、
    大きなへだたりはない。        
                        湯川秀樹

    そんな、科学者や物理学者たちに、
    ごきげんいかが?って、お声かけした、本でおます。

  • とも子さんが娘のきん子ちゃんと暮らしながら寮母をつとめる学生寮『ドミトリーともきんす』。寮にはトモナガ君(物理学者の朝永振一郎)、マキノ君(植物学者の牧野富太郎)、ナカヤ君(物理学者の中谷宇吉郎)、ユカワ君(物理学者の湯川秀樹)の4人が下宿し、研究にいそしんでいる。
    科学者の研究内容と著書のエピソードを漫画でわかりやすく紹介した本。

    知っているのは名前だけで、研究の内容や経歴などはほとんど知らなかった研究者たちだが、まるで本当に彼らに接した人からエピソードを聞いているようで、それぞれの人物が愛おしく、研究のことをもっと知りたくなる。

    トモナガ君は何を見ても自然の中の不思議をついつい考えずにはいられない。研究に行き詰り、「だいたいぼくは物理なんか大嫌いなんです。」と愚痴る彼には、人間としての共感を感じずにはいられない。

    マキノ君は自由でユーモアいっぱい。小説『ボタニカ』や朝ドラで注目され、本屋で著書をよく見かけるようになったので、これからもっと研究や人となりを知ることができそうだ。

    ナカヤ君は子供の頃に聞いたおとぎ話や伝説を心の中に大事に持っており、自然に対して驚異の念をもって接することができる。戦中に北海道で昭和新山を造り上げた自然の力を「闘争や苦悩の色がみじんもなく、それはただ純粋なる力の顕現である。」とする彼の言葉は、些細な事で右往左往する自分を一瞬冷静にさせてくれる。

    ユカワ君は不器用で恥ずかしがり屋だ。作文が苦手なので、他の人と違って自分の気持ちを表した著書はあまりないようだが、物理学の将来を見つめる真剣なまなざしを感じる。
    同級生だったトモナガ君とは、お互いに自分にはないものを持つ相手に対する羨望と尊敬があったようで、素敵な友人関係だと思う。

    最後に引用されている湯川秀樹の「詩と科学」という詩が印象深い。
    「…いずれにしても、詩と科学とは同じ場所から出発したばかりではなく、行きつく先も同じなのではなかろうか。/そしてそれが遠く離れているように思われるのは、とちゅうの道筋だけに目をつけるからではなかろうか。/どちらの道でもずっと先の方までたどって行きさえすれば、だんだんちかよってくるのではなかろうか。/そればかりではない。二つの道はときどき思いがけなく交差することさえあるのである。」

  • 牧野富太郎について気になっているものの、どこから手をつけようか迷って、この本から入ろうと手にとってみたら、思った以上に興味深い内容でした。

    四人の科学者が暮らすドミトリーともきんす。寮母さんと娘さんと彼らの会話から、彼らがどんなことを扱っていたのかわかり、しかも彼らのエッセイを中心とした読書案内もしてくれて、いい本でした。

    研究内容だけに特化していたら、多分わからなすぎて敬遠していたと思うのですが、エッセイを中心に紹介してもらうと、その人の人となりも一緒に知ることができるので、興味が持てる気がします。さて、牧野さんのエッセイを読もう。

  • 面白かったです。そして、登場される明治大正昭和をまたにかけた天才秀才たちの本を読んでみたいなと、次々読書が繋がりました。ぶつりはわかりませんが、湯川秀樹先生の旅人という随筆は、幼少期からの環境や思っていたこと、感じていたことが書かれていて、そういう家族で、こういう少年で、ああゆう天才だったのかぁと、興味深く読めました。

  • 不思議な学生寮「ともきんす」に住む4人の寮生さん。朝永振一郎、牧野富太郎、中谷宇吉郎、湯川秀樹。世に出る前の彼らとの架空の交流を想像して、科学の言葉を読み返す。
    シンプルな書体とひんやりとした雰囲気、佇まい。わかるようでわからない。それでも何とか彼らの考えていることに近づいていく感覚。これはおもしろい。難しいからおもしろい。何度も読んだら科学の中にある詩に私も近づけるかしら。

  • 高野文子さん著書を探してブク友さんの本棚から見つけてお取り寄せ。
    画風がまた違う。
    私にとってはとっつきにくい自然科学を高野さんが漫画で読書案内をしてくれる。
    あとがきからの高野さんの言葉を抜粋、誠実なお人柄でじんとくる。
    『自分のことから離れて描く、そういう描き方をしてみようと思いました』
    『道具は、製図ペンを使いました。頭からしっぽまで同じ太さが引けるペンは、じつに静かな絵が描けます』
    『素直に読み、静かに伝えることに注意を払いました』

    寮母さんのとも子さんとそのお子さんのきん子さんと寮生として朝長振一郎、牧野富太郎、中谷宇吉郎、湯川秀樹をキャラクター化。著書やエピソードを中心に、人間味あふれる表情で交流していく姿はとても親しみやすい。
    トモナガ君とうどんを頂きながら鏡の世界で左右だけが反対で上下は逆さにならない話
    ナカヤ君が雪は天からの手紙だということで読み上げていく話
    マキノ君が窓から出入りしながらチューリップの巻いた葉は降った雨を集める漏斗の仕事をする話
    ユカワ君の数をかぞえることと抽象化の話
    きん子さんの持っている松ぼっくりとの関係をxとyとzで教えてくれるなんて、へー。へー。と感心してしまう。

    日本の科学者たちが残した言葉をたどって高野さんが読み直して私たちに伝えてくれる
    ちょっとずつ彼らの著書を読んでいきたい
    巻末の盆踊りの章はおまけみたいで実は面白い
    画の構成コマ割りが独特

    覚書
    プロメテウスの火 鏡の中の物理学 朝永振一郎
    植物記 牧野富太郎
    イグアノドンの唄 中谷宇吉郎
    数と図形のなぞ 湯川秀樹

    • 111108さん
      ベルガモットさん、こんばんは!

      高野文子さん、変幻自在ですよね。そんなにたくさんの作品を読んだわけではないのですが、この本では寮母さんにな...
      ベルガモットさん、こんばんは!

      高野文子さん、変幻自在ですよね。そんなにたくさんの作品を読んだわけではないのですが、この本では寮母さんになりきって?ちょっと一緒にこのお兄さん達のお話聞いてみましょうよ、と私達読者の所におりてきてくれてるのかなと思いました。
      ちょっと物語に疲れた時とかに読むと楽しいかもしれませんね。
      2022/08/21
    • ☆ベルガモット☆さん
      111108さん、コメントありがとうございます!

      素敵な本のご紹介もありがとうございます☆
      変幻自在ですね、びっくりしました!
      な...
      111108さん、コメントありがとうございます!

      素敵な本のご紹介もありがとうございます☆
      変幻自在ですね、びっくりしました!
      なるほど、読者の側になってくれてるんですね~
      お兄さん達が窓からやあ!と紹介のところに並んでいるのが、親しみが持てて何度も眺めてました。
      他の自然科学のこともこんな風に紹介してほしいなあ。
      高野さんの本、また読んでみたいと思います。
      2022/08/21
  • 球面世界
    ドミトリーともきんす(トモナガ君 おうどんです―朝永振一郎「鏡のなかの物理学」
    トモナガ君 泣かないで―朝永振一郎「滞独日記(一九三八年四月七日‐一九四〇年九月八日)」
    マキノ君 お正月です―牧野富太郎「松竹梅」
    ナカヤ君 お手紙です―中谷宇吉郎「簪を挿した蛇」
    ナカヤ君 コタツです―中谷宇吉郎「天地創造の話」
    マキノ君 蝶々です―牧野富太郎「なぜ花は匂うか?」)
    Tさん(東京在住)は、この夏、盆踊りが、おどりたい。

  • 摂南大学図書館OPACへ⇒
    https://opac2.lib.setsunan.ac.jp/webopac/BB99698897

  • 朝永振一郎、牧野富太郎、中谷宇吉郎、湯川秀樹―。科学者たちの言葉をテーマにした、高野文子さんのコミックス。不思議な学生寮「ともきんす」。お二階には寮生さんが4人。科学の不思議が感じられる一冊です。

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著者プロフィール

高野文子(たかの・ふみこ)
1957年新潟県生まれ。漫画家。1982年に日本漫画家協会賞優秀賞、2003年に手塚治虫文化賞マンガ大賞を受賞。作品集に『るきさん』『おともだち』『絶対安全剃刀』『ラッキー嬢ちゃんのあたらしい仕事』『棒がいっぽん』『黄色い本』がある。漫画作品の他に、絵本なども手掛ける。

「2022年 『増補 本屋になりたい この島の本を売る』 で使われていた紹介文から引用しています。」

高野文子の作品

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