キム・フィルビー - かくも親密な裏切り

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制作 : 小林 朋則 
  • 中央公論新社 (2015年5月8日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (447ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120047190

キム・フィルビー - かくも親密な裏切りの感想・レビュー・書評

  • 冷戦の時代。イギリスのみならず西側世界に大きな衝撃をもたらした
    稀代の二重スパイ、「ケンブリッジ・ファイブ」のひとりでもあるキム・フィ
    ルビー。本書はフィルビーの評伝であると共に、スパイ同士の友情の
    物語でもある。

    フィルビーと同様にイギリスの上流階級に生まれたニコラス・エリオットは
    無二の親友を亡くした直後にフィルビーに出会い、その人間的魅力に惹か
    れた。

    生まれ育った環境が似ていたふたりの心が通じ合うに多くの時間は必要
    なかった。情報機関に所属し、ふたりは共に出世街道を歩む。

    そのなかでフィルビーがソ連に通じていることは何度か発覚しそうにはなる。
    1回目はソ連の在外大使館員によるもの。イギリス情報機関の二重スパイに
    関する情報を携え、イギリスへの亡命を打診して来た人物はフィルビー自身
    によって見殺しにされた。

    2回目はアメリカ情報機関の暗号解読班によるお手柄だった。これはイギリ
    ス側も無視することは出来ない。だが、状況証拠のみによる二重スパイ疑惑
    は、フィルビー擁護派と懐疑派にイギリス情報機関を二分しただけで、本人
    は事情聴取も上手く切り抜けた。

    しかし、3回目には疑惑は決定的なものとなった。過去、フィルビーにソ連の
    スパイにならないかと誘われた人物の証言が得られたのだ。

    その年月、約30年。祖国イギリスではなく、ソ連に向けたフィルビーの愛国心
    が完全に暴かれることとになる。

    親友の不遇の時代、精神的な支援はもとより経済的にも支援を惜しまず、
    フィルビーの家族さえも支え、信じ、多くの秘密を分かち合ったエリオットは、
    自らフィルビーの尋問を買って出る。

    どんな心境だったのだろうな。後年、エリオットは自体が発覚する前から
    フィルビーを二重スパイだと疑っていたと語ってるのだが、それは後付けの
    言い訳なのだろうと思う。だって、ソ連側へ情報を渡すのにエリオットだって
    利用されていたのだから。

    ただ、エリオットはどこかでフィルビーを憎み切れなかったのではないかと
    思う。フィルビーへの一連の尋問を後任に引き継ぐ際、フィルビーに監視も
    つけず、尋問場所であったベイルートを離れているのだもの。

    筋金入りの情報部員であるエリオットだ。うっかりしていた…なんてことはない
    だろう。著者も推測しているのだが、すべてが明るみに出る前にフィルビー
    が亡命できる機会を作り、イギリス情報機関の面目を少々保つと同時に、
    友を重罰から守ったのではないだろうか。

    エリオットの出世はフィルビー亡命で閉ざされた。だが、エリオットよりも酷い目
    にあったのはアメリカCIAのジェームス・ジーザス・アングルトンだ。

    CAIの前身となる情報機関は諜報のプロフェッショナルであったイギリスで教え
    を受けた。アングルトンもその時のメンバーであり、講師となったフィルビーに
    心酔した。

    そうして、フィルビーがワシントン支局に赴任した際には一緒に食事をしながら
    多くの秘密を共有した。エリオット同様、アングルトンの漏らした秘密はすべて
    フィルビーを通じてソ連に報告され、潜入した多くの工作員が殺されたり、行方
    不明になったりしているのだ。勿論、失敗した作戦も山積みだ。

    フィルビー二重スパイの衝撃は、アングルトンにパラノイアをもたらした。以降、
    アングルトンは誰彼かまわずにソ連のスパイだと疑ってかかるようになってしま
    うのだもの。

    スパイを扱ったノンフィクションは他にも読んで来たが、スパイと二重スパイの
    友情にスポットを当てた本書は、これまでのノンフィクションと... 続きを読む

  • [優雅なる友喰らい]英国と米国をおよそ四半世紀にわたって騙し続けてソ連に加担し続けた伝説のスパイ,キム・フィルビー。現在に至るまで多くの謎に覆われているその男が,仮面の下で築き上げた「友情」に焦点を当てたノンフィクション作品です。著者は,インテリジェンス分野の優れた著作で高い評価を得ているベン・マッキンタイアー。訳者は,同著者の『英国二重スパイ・システム』の翻訳も手がけた小林朋則。原題は,『A Spy Among Friends: Kim Philby and the Great Betrayal』。


    最低な人々の最高な物語が思う存分堪能できる稀有な一冊。騙し騙され,そして傷つけ傷つく濃密なスパイ劇の内幕が丹念に綴られており,次の展開にハラハラしながらページをめくる手が止まらなくなること間違いなし。

    〜私は彼らを笑っていたのではない。私はいつも,個人的レベルと政治的レベルという二つのレベルで活動していた。この二つが衝突したとき,私は政治を優先させなくてはならなかった。〜

    マッキンタイアー氏の作品はいまだハズれたコトがない☆5つ

  • 英国二重スパイの伝記。

    裏切られた側との人間関係を中心に描く。元ネタがおもしろい。こんな事が起きていたとは。

  • ルカレを読みたくなった。

  • 同時にイギリスドラマ『ケンブリッジ・スパイ』を見ていたのだけど、やはりドラマの理想と現実の間で苦悩しててかわいそう!幸せになりますように!と違って、現実はカサカサとした手触りで、どうぞバチが当たって不幸になりますようにとしか思えなかった。

  • 本物のスパイの世界は渋く地道で、しかしかっこよい。
    そして現実は小説より奇なり、を地で行くキムの裏切りの物語。
    最高の一冊だった。

  • 内容以上にキャッチコピー考えたコピーライターすごい

  • おもしろいんだけど、フィルビーが裏切り始めるまでは、彼の魅力やら人間関係やらが、なんかすごい細かいことまでたっくさん並ぶので、おもしろい。けど眠い。という展開だった。
    フィルビーが裏切りがバレ始める段になったら、俄然おもしろい!
    こんなにも人を裏切って、それを気づかせないでいることって出来るんだな……
    人が望むように、それを思わせるってのは可能なのかも知れないけれど、その以前に人に好かれる魅力がそれを可能にするのか。

  •  原書が出版された2013年は、キムフィルビーがソ連へ亡命して50年であり類書が他にも出版されたということで、このショックが如何に英国現代史上の出来事だったかを如実にあらわしている。
     英国情報機関MI6の幹部で、将来長官とも目されるほど有能であり、すべての秘密情報を知りうる立場にあった主人公は、密かに共産主義を信奉したがゆえにソ連のスパイとして多くの情報を提供していたという、驚くべき実話である。特に冷戦初期40-50年代の米英のすべての作戦はソ連に筒抜けであり、今なお計り知れない多くの犠牲者や損害が出ている。
     本書では、彼を取り巻く家族や友人同僚などとの関係を中心に描いている。実に魅力的で誰にも好かれ仕事もできる紳士だったようで、彼を信じてきた人々は真実が明るみになった後に、明らかに言動がおかしくなったようである。副題のように、かくも親密な裏切りにあっては、正常ではいられまい。
     007のイアンフレミングも同時期に情報機関にいたこともあり、本書を読めばあれが半分くらいは事実かもしれないというくらい、当時のスパイ合戦は凄かったようである。
     米ソ冷戦時代には本書に書かれたことがあったということを知るのは、現代史として大切かもしれない。時代の流れは変えられなかっただろうが、情報機関を中心にさまざまな影響を残したに違いない。50年経ってもさまざまに振り返りされるくらいだから。

  • 誰からも愛されながら、その全員を裏切っていた男――MI6長官候補にして、ソ連側の二重スパイ。衝撃の亡命までの三十年に及ぶ離れ業を、MI6同僚との血まみれの友情を軸に描く。

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キム・フィルビー - かくも親密な裏切りの作品紹介

冷戦下の世界を震撼させた英国史上最も悪名高い二重スパイ。そのソ連亡命までの30年に及ぶ離れ業を、M16同僚との血まみれの友情を軸に描き出す。

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