盤上の向日葵

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (563ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120049996

感想・レビュー・書評

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  • 最後の解説の羽生善治さんが良かったです。
    真剣師は命とも言える金を賭けて勝負をする。だから絶対に負けられない。
    「勝てる」ではなく「負けない」ような手堅い指し方を好むので、対戦時間が長くなることが多い。

    ゴッホにとって向日葵は、まばゆい南フランスの太陽、そして彼が体現しようとしているユートピアの象徴であったといわれています。
    ただ、圭介にとってはゴッホの向日葵はゴッホの、また母の狂気であり、さらに自らの将棋での最善手でもあったのですね。

  • 圭介の物語と刑事の石破と佐野の聞き込みの話が丁寧に描かれていて飽きずに読めた。
    佐野が奨励会出身という設定がこの本の魅力を際立たせている。
    唐沢の視点はとても興味深く読みました。
    他人の子供にこんなにも愛情を注ぐことができるのだろうかと!?
    真剣将棋の東明とベテラン刑事石破が似てるとこがあると石破自身が述べているとこに面白いと思った。
    まさか圭介が庸一の子でなかったとは驚きました。

  • 柚月裕子は初めて読んで、これはとても個人的な好みなんですが、ときどき緊迫感が物足りないと感じる描写がありそこに気を取られたりした。
    基本淡々とした文体なのですらすら読めると言えばそうなんだけど、回りくどかったり難解な比喩も楽しみにするタイプなので。
    くたびれたおやじと美青年の珍道中。きこえは楽しげだけどなかなかに理不尽なのがおもしろい。勧善懲悪って感じではなく、もうあと一歩、痛い思いしてくれ〜〜っと思うなど。(それが話としていいとかではなく自分の感情として)

  • 将棋を全く知らないので、単純に対局の描写が入り込めなかった。とうぜん将棋を通して得られる畏怖の念や絆のようなものも理解出来ないので、ラストの桂介の言動や死体遺棄をした動機も、大切な駒を埋めた理由も理解出来なかった。将棋を理解してれば面白いんだろうなと思った。

  • 将棋に生き、将棋に生かされた桂介の生涯と、山中で見つかった死体遺棄事件を追っていくストーリー。将棋の世界の表と裏、両面を見ることができ、将棋を詳しく知らなくても棋士の迫力に面白さを感じる。見つかった死体が東明のものと分かり、それまでの流れでびっくりした。現場に残された駒を追う刑事は、駒の行方を追うだけで特に意外性はなかった。敏腕そうな刑事も活躍の場もなくて正直浮いた存在だった。

  • 数人の登場人物の視点で書かれていたが、主人公の気持ちにいまいち思い入れができなかった。駒の持ち主を辿る過程は面白かったが、どうして遺体と一緒に埋めたのか共感できず、終わり方も自分の中では、すっきりしなかった。

  • 今年最初の小説読了本。
    読んだことない作家さんの本を読もうと思い手に取った。

    山から身元不明の遺体が発見された。その遺体とともに埋められていたのは初代菊水月の駒。操作を進めるうちにたどり着いたのは上条圭介、東大出でサラリーマンを経、異例の采配でプロ棋士になった青年だったーー

    ミステリって人生を描くジャンルなんだよな、ということを思い出させられた作品でした。圭介という人間の人生を追いながら、事件の真相を少しずつ読者にだけ解き明かしていく。その形式から、彼が自分のことを警察に話すことはないのだろうなと途中から気づきはしたけど、終盤予想外の方向からのずっしりとした重み。なんともやるせない……

    将棋はほとんどわからないけど、わかればもっと将棋の場面は楽しめたろうなー!
    囲碁を少しかじっているのでタイトル戦や奨励会、賭将棋のあたりはなんとなく想像がついてよかった。

  • 面白かった!

    将棋に関しては何も分からない素人だけど、とんでもない勝負ということは雰囲気でわかった。

    埼玉県のある山で見つかった身元不明の死体に高価な将棋の駒が胸に抱かれていた。警察はこの駒が事件解決に導くと信じ駒の経歴を捜索する。

    物語は事件が起きたあとの刑事パートともう1人の棋士の人生が交互に展開される。序盤の刑事パートに出てきた棋士ともう1人の棋士が同じ名前というだけで犯人なんだなというのはわかったけどそれ以上に関わった人たちの感情や背景が細かく練り込まれていて実際にその場所にいる関係者のような感覚になった。犯人がわかった上で読めない展開にドキドキする。

    あれだけ大事な駒をほぼ他人の弔いにするにはなんだか惜しい気がしたけど、知人の少ない人間にとっては貴重な理解者だったのかもしれない。

    終始びっくりするほどクズがでてこなくてそこまで殺伐とした話でないかな。ハートフル。

    めっちゃ分厚い本だけど2日で読み切っちゃった!
    将棋の勉強がしたくなる作品(*^^*)



  • 身元不明の死体が見つかり、一緒に貴重な将棋の駒が埋められていたために過去に棋士を目指した刑事が捜査に任命されるところから話は始まる。

    犯人探し、事件解決だけのミステリーではなく、視点を変えながら、主人公の棋士上条桂介の生い立ちや師弟関係、対戦のシーンが丁寧に描かれているので、重く苦しい展開が続いたり、将棋に不慣れだったりしてもかなり読みやすい本だった。

    上条桂介の父親への情や、重慶への恩などには理解ができないところもあったが、不憫な生い立ちや将棋への姿勢から強くハッピーエンドを望んでた。数日は虚しい気持ちが残った。

  • 評判がよかったので読んでみました。
    私が将棋に明るくないせいか、特にこれと言った感想を持てないまま読了。

    柚月さんが将棋のことを大変よく調べて書かれたことは十分に伝わってきました。
    棋戦シーンは将棋ができる人にはたまらない描写なのでしょう。
    棋戦以外の部分でも、奨励会がどのような組織なのか、プロ棋士になることがどれほど大変なことなのかは私にもよく理解できました。

    が、その部分を取り払って、ミステリーとして読むとどうかと言うと、満足度としては低いのです。

    埼玉県の山で見つかった身元不明の白骨遺体。遺体と共に高価な将棋の駒が埋められていた。
    奨励会出身の刑事・佐野と型破りな掲示板・石破のコンビが駒の行方を追っていくと捜査線上に有名なプロ棋士・上条が浮かび上がる。

    その上条は長野県に生まれ、幼くして母親を亡くし、以後父親から暴力やネグレクトなどの虐待を受けた過去を持つ。
    近所の老人・唐沢が幼い上条が新聞配達をし、古紙回収の束から将棋雑誌を盗ろうとしたことを不憫に思い、自宅へ招い将棋を教えると彼の稀有な才能に気付く。父親から離れて奨励会に入会させようとするも、父親は強く反対し、上条自身も父親を捨てきれず奨励会入会は叶わなかった。
    その後、唐沢と疎遠になっていた上条だが見事東大に合格。父親とも離別する決意を唐沢に報告する。
    奨励会を諦めた時から将棋から離れていたが、在学中に真剣師の東明と知り合い、再び将棋の面白さに魅了されるがー。

    刑事達の視点と上条の視点が交互に描かれる構成で、幼い上条の境遇には胸が痛んだのですが、社会に出て以降の言動は「頭いいのになぜ?」と思うようなものが多いし、出生の秘密は突然すぎたし、向日葵も中盤まで母親を思い出す際にふんわりと描かれていた印象が、終盤なぜか棋戦で閃く際に頭の中で咲く花という重要なものに変わっていたり。

    犯人捜しを楽しむミステリーというよりは、上条という男性の人生にフォーカスを当てた作品ですが、二兎を追ったせいか突出した面白さを見出だせないまま終わってしまいました。

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著者プロフィール

1968年岩手県生まれ。2008年「臨床真理」で第7回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、デビュー。13年『検事の本懐』で第15回大藪春彦賞、16年『孤狼の血』で第69回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)を受賞。同作は白石和彌監督により、18年に役所広司主演で映画化された。18年『盤上の向日葵』で〈2018年本屋大賞〉2位となる。他の著作に『検事の信義』『月下のサクラ』『ミカエルの鼓動』『チョウセンアサガオ咲く夏』など。近著は『教誨』。

「2023年 『合理的にあり得ない2 上水流涼子の究明』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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