- Amazon.co.jp ・本 (447ページ)
- / ISBN・EAN: 9784120051128
感想・レビュー・書評
-
詳細をみるコメント0件をすべて表示
-
「植物は、愛なき世界に生きている。」植物の生態からの言葉。三浦さんの物語には、この世界に生きている優しさをいつも感じます。今回も味わい深く浸れました。
-
初めて読む作家、図書館の人気コーナーにあり、装丁のエッペンドルフ(マイクロチューブ)が気になって手にとってみた。オビ(見返しに貼り付けてくれている)を読むと、植物学の話のようでとても面白そうだった。舞台は日本最高峰T大とその向かいにある洋食屋という狭い地域、さらにほとんどが目の前数十センチと顕微鏡の中と頭の中の世界で繰り広げられる。アオリでは純文学的恋愛小説のようにかかれていたが、そんなこともなくとても読みやすかった。植物学分野の日々の仕事や研究者の悲喜こもごもが描かれていて大変興味深く読みやすい。主役の本村と藤丸にSF映画『インディペンデンスディ』(1996)のデイヴィット(主役)とその父の関係を思い出した。全く違う分野の人との会話や関わりというのがいかにインスピレーションを与えるか、とか、一見関係のないことでも重要な鍵があったり、失敗に成功の種があったりとか(ほとんどが失敗は失敗だけれども)、いろんな無駄に見えることが無駄ではなくて、いろんなことを面白がる事というのは大切だな、と思い出させてくれる、とても良い物語であった。この作家の他の作品も読んでみようと思う。
-
美しい装幀。
シロイヌナヅナもこの中にいるはず!
「舟を編む」で何年もかけて広辞苑を作る人たちの世界を丁寧に描いていて面白かったが、
今回は植物を研究している大学院を中心に、これまたマニアックな世界が描かれている。
タイトルは「愛なき世界」だが、実は「植物に対するなみなみならぬ愛、にあふれた世界」が微笑ましい。
普段近寄りがたい研究者という人たちの日々の生活や、研究にたいする葛藤など
興味深いことばかりだった。
輝かしいノーベル賞やいまだ謎のSTAP細胞を思い出してしまうが…
日々、地道な基礎研究を続ける人たちへの大きなエールとなる作品だと思う。
大学近くの洋食屋で働く藤丸青年と、大学院生本村さんのういういしい交流も
応援したくなった。 -
脳は記憶している。
誰かを好きになって、心臓がどんなふうに鼓動したかを。
私は、脳の仕組みなんて 知らないけど
記憶は 勝手に刻み込まれた。
たぶん、大切なことだからだ。
深い海のような 宇宙のような 美しい装丁と
『恋のライバルは草でした』のキャチコピーで
本屋さんで とびきり目を引いていた本。
購入を どうしようか 迷っている丁度のタイミングで
本好きの友人から ポチッたとの知らせ。
んっ? それならば、私も!
と 購入ww
気孔や松茸を可愛いと プリントしたTシャツを着て
研究への只ならぬほどの熱意を持つ 本村さん
殺し屋の風貌、頭脳明晰、
でも、心優しい一面も覗かせる松田研究室の室長 松田さん
口は悪いが、料理の腕は 天下一品
情にも厚い 円服亭の店主、円谷大将
好奇心旺盛で まっすぐ素直な 藤丸くん
そのほか チャーミングな人ばかり出てきた。
私も この本の登場人物になれないかな…
大学の葉っぱをお掃除するオバチャンくらいになら
してもらえるかな?( *´艸`)
そうだ!
東大は 銀杏がきれいなんだっけ…
今年は、見に行ってみよう (*´ω`*)
みんな 光を食べて生きている! -
植物オタクと犬系料理人のほっこり不器用恋物語。
どこを見渡しても嫌なヤツがいない。
松田先生のスピンオフないかな…殺し屋ができあがるまでみたいな -
読み応えある内容。
藤丸目線での気楽な物語かと思いきや、藤丸目線は最初と最後のエピソードだけだった。
本村さん目線は研究内容が多く、研究室の実験など無縁の私にとってはとても興味深く面白かったのだが、少々疲れる部分もあった。
『愛なき世界』に生きて行くと決心している本村さんはとてもかっこよかった。
少々融通が利かず固い所もあるがかっこよかった。
それに、慎重で繊細な研究の最中やクライマックスを迎える局面でも話し掛けてくる藤丸に対して、親切丁寧に説明する本村さんはものすごく人間ができているなと感じた。
私なら集中させて欲しいので作業の後にしてもらうか、出て行ってもらうかな。
本村さんが自分の誤ちに気付いた時の松田教授の対応も素敵だった。
結果がわかっていることを研究して何が面白いのか。
松田教授の世界を知れる一コマでもあった。
一見植物の研究者と料理人という接点のない人種の様だが藤丸はその真摯な迷いなき視点から
『「愛なき世界」を知りたい情熱こそ「愛」で、その情熱を注ぐ方も注がれる方も「愛ある世界」を生きている』という結論をもたらす。
それに対する本村さんの返事も素敵なものだった。
本村さんを始め研究者達は今も尚熱心に研究を続け、藤丸は円福亭で腕を磨き、松田研究室へ出前を届けながら皆と仲良く交流しているのだろう。
和やかな面々の「愛ある日々」がいつまでも続きますように。 -
植物の世界に魅入られた女子とその女子を好きになった男子の話を主軸に置いているが、研究者の世界を徹底的に描いているように思う。独自の世界を描くのが、三浦しをん氏は上手い!高校の生物の授業を思い出しながら、めちゃくちゃ面白く最後まで一気に読んだ。