愛なき世界 (単行本)

著者 :
  • 中央公論新社
3.68
  • (357)
  • (727)
  • (626)
  • (123)
  • (26)
本棚登録 : 7678
感想 : 745
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (447ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784120051128

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • あらすじ
     東大前の洋食店で住み込み見習いの勝丸。得意客から出前を頼まれ研究室に入る。植物を専門とする、松田先生率いる研究室。本村はシロイヌナズナの遺伝子について調べている。勝丸は本村に告白するものの、ナズナに負ける。本村は感情を持たない植物の世界に夢中なのだ。勝丸は失恋しても研究室との関わりを持ち、他の院生や隣の研究室教授(イモ博士)とも交流を深めていく。

     面白かったー。愛があふれた作品だな、全編に。シロイヌナズナが好き、サボテンが好き、料理が好き、イモが好きって、人以外にもめっちゃ情熱を注げるものがあるって素敵。特に今回の登場人物たちが好きなのって、ニッチ過ぎて、人知れず好きなものが多く、公言しないけど好きって感じが「本当に好きなんだ」という様子も伝わってきた。

  • 「植物は、愛なき世界に生きている。」植物の生態からの言葉。三浦さんの物語には、この世界に生きている優しさをいつも感じます。今回も味わい深く浸れました。

  • 初めて読む作家、図書館の人気コーナーにあり、装丁のエッペンドルフ(マイクロチューブ)が気になって手にとってみた。オビ(見返しに貼り付けてくれている)を読むと、植物学の話のようでとても面白そうだった。舞台は日本最高峰T大とその向かいにある洋食屋という狭い地域、さらにほとんどが目の前数十センチと顕微鏡の中と頭の中の世界で繰り広げられる。アオリでは純文学的恋愛小説のようにかかれていたが、そんなこともなくとても読みやすかった。植物学分野の日々の仕事や研究者の悲喜こもごもが描かれていて大変興味深く読みやすい。主役の本村と藤丸にSF映画『インディペンデンスディ』(1996)のデイヴィット(主役)とその父の関係を思い出した。全く違う分野の人との会話や関わりというのがいかにインスピレーションを与えるか、とか、一見関係のないことでも重要な鍵があったり、失敗に成功の種があったりとか(ほとんどが失敗は失敗だけれども)、いろんな無駄に見えることが無駄ではなくて、いろんなことを面白がる事というのは大切だな、と思い出させてくれる、とても良い物語であった。この作家の他の作品も読んでみようと思う。

  • 美しい装幀。
    シロイヌナヅナもこの中にいるはず!

    「舟を編む」で何年もかけて広辞苑を作る人たちの世界を丁寧に描いていて面白かったが、
    今回は植物を研究している大学院を中心に、これまたマニアックな世界が描かれている。
    タイトルは「愛なき世界」だが、実は「植物に対するなみなみならぬ愛、にあふれた世界」が微笑ましい。
    普段近寄りがたい研究者という人たちの日々の生活や、研究にたいする葛藤など
    興味深いことばかりだった。
    輝かしいノーベル賞やいまだ謎のSTAP細胞を思い出してしまうが…
    日々、地道な基礎研究を続ける人たちへの大きなエールとなる作品だと思う。

    大学近くの洋食屋で働く藤丸青年と、大学院生本村さんのういういしい交流も
    応援したくなった。

  • 脳は記憶している。
    誰かを好きになって、心臓がどんなふうに鼓動したかを。
    私は、脳の仕組みなんて 知らないけど
    記憶は 勝手に刻み込まれた。
    たぶん、大切なことだからだ。


    深い海のような 宇宙のような 美しい装丁と
    『恋のライバルは草でした』のキャチコピーで
    本屋さんで とびきり目を引いていた本。

    購入を どうしようか 迷っている丁度のタイミングで
    本好きの友人から ポチッたとの知らせ。
    んっ? それならば、私も!
    と 購入ww


    気孔や松茸を可愛いと プリントしたTシャツを着て
    研究への只ならぬほどの熱意を持つ 本村さん

    殺し屋の風貌、頭脳明晰、
    でも、心優しい一面も覗かせる松田研究室の室長 松田さん

    口は悪いが、料理の腕は 天下一品
    情にも厚い 円服亭の店主、円谷大将

    好奇心旺盛で まっすぐ素直な 藤丸くん

    そのほか チャーミングな人ばかり出てきた。


    私も この本の登場人物になれないかな…
    大学の葉っぱをお掃除するオバチャンくらいになら
    してもらえるかな?( *´艸`)


    そうだ!
    東大は 銀杏がきれいなんだっけ…
    今年は、見に行ってみよう (*´ω`*)

    みんな 光を食べて生きている!

  • 植物オタクと犬系料理人のほっこり不器用恋物語。
    どこを見渡しても嫌なヤツがいない。
    松田先生のスピンオフないかな…殺し屋ができあがるまでみたいな

  • 447ページ
    1600円
    6月16日〜6月20日

    円服亭で料理の修行をしている藤丸は、近くのT大学にお昼の配達をするようになる。そこは植物について研究する人々がいて、藤丸も植物に興味を持ち始める。院生の本村のことを好きにるが、本村は植物のこと以外は目に入らない。本村のシロイ
    ヌナズナの研究は、果てしなく思えるも、ようやく願った成果が出始めたところで、初歩的なミスに気づく。

    植物の専門的な研究の話が多くて、眠くなることもしばしば。松田研究室の面々が温かくて、人間模様が楽しかった。始めは料理の話かと思っていたけれど、植物の話満載だった。植物も料理もつながるところが
    あるとか、植物の不思議とか、植物は光を食べて存在し続けるとか、今まで考えたこともない視点から植物が描かれていた。

  • これを書くために
    どのくらい取材と勉強したんだろう、
    作者の人のも、松田研究室の人のも含めて
    熱を感じる物語だった。

    タイトルを見て
    三浦しをんさんの愛に関する話と思って
    てっきりもっとこってりした話を想定して
    読み始めたら!
    いい意味で裏切られた。

    そもそもシロイヌナズナの見た目も
    チビタンとかピペットマンとかなんにもしらなくて
    途中すこし心が折れかけたけど、
    調べながら読んでいるうちに
    だんだん物語に入り込めるようになってきて
    長く物語中にいたものだから、
    読了してこの世界から出なきゃいけないのが
    さみしかった!

  • 読み応えある内容。
    藤丸目線での気楽な物語かと思いきや、藤丸目線は最初と最後のエピソードだけだった。
    本村さん目線は研究内容が多く、研究室の実験など無縁の私にとってはとても興味深く面白かったのだが、少々疲れる部分もあった。

    『愛なき世界』に生きて行くと決心している本村さんはとてもかっこよかった。
    少々融通が利かず固い所もあるがかっこよかった。
    それに、慎重で繊細な研究の最中やクライマックスを迎える局面でも話し掛けてくる藤丸に対して、親切丁寧に説明する本村さんはものすごく人間ができているなと感じた。
    私なら集中させて欲しいので作業の後にしてもらうか、出て行ってもらうかな。

    本村さんが自分の誤ちに気付いた時の松田教授の対応も素敵だった。
    結果がわかっていることを研究して何が面白いのか。
    松田教授の世界を知れる一コマでもあった。

    一見植物の研究者と料理人という接点のない人種の様だが藤丸はその真摯な迷いなき視点から
    『「愛なき世界」を知りたい情熱こそ「愛」で、その情熱を注ぐ方も注がれる方も「愛ある世界」を生きている』という結論をもたらす。
    それに対する本村さんの返事も素敵なものだった。

    本村さんを始め研究者達は今も尚熱心に研究を続け、藤丸は円福亭で腕を磨き、松田研究室へ出前を届けながら皆と仲良く交流しているのだろう。
    和やかな面々の「愛ある日々」がいつまでも続きますように。

  • 植物の世界に魅入られた女子とその女子を好きになった男子の話を主軸に置いているが、研究者の世界を徹底的に描いているように思う。独自の世界を描くのが、三浦しをん氏は上手い!高校の生物の授業を思い出しながら、めちゃくちゃ面白く最後まで一気に読んだ。

全745件中 51 - 60件を表示

著者プロフィール

1976年東京生まれ。2000年『格闘する者に○』で、デビュー。06年『まほろ駅前多田便利軒』で「直木賞」、12年『舟を編む』で「本屋大賞」、15年『あの家に暮らす四人の女』で「織田作之助賞」、18年『ののはな通信』で「島清恋愛文学賞」19年に「河合隼雄物語賞」、同年『愛なき世界』で「日本植物学会賞特別賞」を受賞する。その他小説に、『風が強く吹いている』『光』『神去なあなあ日常』『きみはポラリス』、エッセイ集に『乙女なげやり』『のっけから失礼します』『好きになってしまいました。』等がある。

三浦しをんの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
三浦 しをん
米澤 穂信
宮部 みゆき
三浦 しをん
恩田 陸
三浦 しをん
柚月 裕子
砥上 裕將
辻村 深月
辻村深月
辻村 深月
宮下奈都
三浦 しをん
恩田 陸
米澤 穂信
恩田 陸
三浦 しをん
森見 登美彦
有川 ひろ
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×