則天武后: 女性と権力 (中公新書 99)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (204ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121000996

作品紹介・あらすじ

参考文献: 203-204p

感想・レビュー・書評

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  • 中国史上唯一の女帝・則天武后(武則天)の人生や武韋の禍による中国国内の混乱、則天武后の歴史的評価の変遷などが書かれた本。

    本書は則天武后について、政治感覚は優れているものの、権力志向が強すぎて政治面での評価は高くしていません。一方で、文化人の優遇や豪勢な宮殿の建設など、文化面は評価できるとしています。

  • 2018/04/03 18:57:01

  • 外山軍治"則天武后"を読む。

    唐の太宗の側室だった武照(のちの則天武后)は、その世継ぎ高宗に見出され皇后となり、死の前年までの15年間にわたり政権を担う。

    政権運営、妖僧の重用、知識人女性の活用などから、我が国の推古天皇がモデルケースにしたとも言われます。

    のち武后が皇帝を称して国号を「周」と改めたことから、のちに「武周革命」と呼ばれた武后の政権であったが、しかし旧唐書、新唐書、資治通鑑など正統の史書はこれを認めず皇帝扱いはせず、わずかに「則天"皇后"本紀」として記録に残すのみであった。

    著者は京大史学科から大阪外大教授になった東洋史学者。中近世の中国史が専門だったようで、他に『岳飛と秦檜』『金朝史研究』『顔真卿』などの著書があります。

    66年の刊行なので、武后が女性であることを過大に見る傾向がありますが、功罪の双方に触れた中立的な評伝といえます。

  • 文章が平易で、とてもわかりやすかった。
    則天武后がどのような人物で、なにを成したのか、比較的客観的に綴られていて、”著者の肩入れ”も少なく思う。

    彼女が如何に周到で、賢い人物であったか。そばで耳打ちする人物はいたにせよ、常人には想像もつかない魑魅魍魎が蠢く世界で、徹底的に自分の地位を盤石にし、15年も君臨したという、まさに肝の据わった人物っぷりに、読了後ますます魅力が増した。

    ただの”悪女”とは呼べない、そんな軽い人物ではない、と思う一方、じつに人間らしい一面も見せる。そんな側面を知ることができた。

  •  則天武后は中国三千年の歴史の中でただ一人の女帝であり、古今東西を通じて女傑中の女傑といわれている。日本には女性の天皇は数人いたそうだが、あの中国ではたったの一人しかいないというので、はたしてどんな女性であったのか興味を持った。

     特に良い家柄というわけでもないのに、先帝の後宮にいた女性が次の帝の妃になり、皇后になった挙句に自ら皇帝になってしまったのだからすごい。しかも前の皇后や妃を豚のように殺してしまったという。さらには重臣や王族たちを次々と殺していく。

     武后は名を「照」というが、「照」を「曌」という、上が「明」で下が「空」の文字に作り替えた。だから名前は「武照」を「武曌」と書いた。これは武后が自分の権威を示すために作らせた「則天文字」の一つで、全部で17文字ある。いかに自己顕示欲が強かったかわかるというものだ。この文字はわが国にも伝えられ、「圀」(國)という字が「水戸光圀」のように用いられている。

     最終的に彼女が皇帝になれたのは、彼女の政治的能力が確かに優れていたこともあるだろうが、私は時の皇帝高宗が政治に疎かったことが最も大きな要因ではなかったかと思う。

     後世の歴史家の間では「悪女」、「悪婆」など、暴君とする評価が多い中、近年では彼女の政治手腕を評価する専門家も出てきているようだ。歴史は勝者の論理により書かれるのが常だそうだから、武后の記録が暴君とするものが多いのも仕方がなのか。

     次は林語堂氏の”Lady Wu”の邦訳が出ているので、それを読んでみたい。

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