秀吉の経済感覚: 経済を武器とした天下人 (中公新書 1015)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (177ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121010155

作品紹介・あらすじ

一介の足軽から身を起こした秀吉は、非運の最期を遂げた主君・織田信長の後を襲い、位人臣を極めて天下人の地位を我がものとした。この史上稀にみる成功の秘密は、恐ろしいばかりに経済の仕組みを熟知し、これを実行する才覚に恵まれていたからに他ならない。商品経済の本質を巧みに活用して、大名統制・検地・貿易などにより実権を掌握し、近世社会の産婆役を果たした"算勘にしわき男"秀吉の軌跡をたどり、その現代性を考える。

感想・レビュー・書評

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  • 一介の足軽から身を起こした秀吉は、位人臣を極めて
    天下人の地位を我が物とした。この史上稀にみる成功
    の秘密は、恐ろしいばかりに経済の仕組みに熟知し、
    これを実行する才覚に恵まれていたからに他ならない。
    近世社会の産婆役を果たした、秀吉の軌跡をたどり、
    その現代性を考える。

    知らない人がいないくらい有名な豊臣秀吉であるが、
    太閤記で事績はわかっても、その政権の実態はわから
    ない。本書は、特に秀吉を経済の観点から論じている。

    豊臣政権時の農民は収穫高の3分の2を税として、納
    め、自分の取り分は3分の1であったという。
    (このような苛政がいかにして江戸期の4公6民に行
    きつくのであろうか)
    また、武家に対しては、土地は天下のものであり、一
    時的に預けられているという概念を確立したのだと言
    う。(中世においては、武士が所有権をもち土地の売
    買が行われていたというが弊害が大きかった。)

    豊臣政権は3代で滅んだため、政権基盤が弱かったと
    思われがちであるが、秀吉生存中は強力な独裁政権で
    あった事がわかり面白い。

    本書は、ネット書店では現在扱われていない。町の老
    舗の本屋さんで購入。これぞリアル書店の醍醐味です。

  • 秀吉の経済感覚を、労働力分配、土木工事、年貢、戦争、都市建設など様々な分野から評価した本。
    秀吉は都市優遇政策をとり、農村に対する負担が厳しかったという事実は初めて知った。そのため農村から都市へと人口流入が多くなり農村で過疎化が進んでいくという、どこかで聞いたことのある話がこの時代にもあったしい。それを秀吉は移住の禁止という方法で抑えたわけだけど、これは現代は使えない。
    各大名が、工事をするときに「役人(正社員)を使ったほうがいいか、日用(日雇い)を使った方がいいか」という費用対効果を分析したという資料の紹介もあり、当時の大名は常に損得を計算して動いていたというのがよくわかった。
    その代表格が秀吉であり、近代日本の経済は秀吉に始まるといっても過言ではない。行き過ぎた都市優遇政策など、批判するところは批判しながら、秀吉の功績をしっかりと伝える優れた作品。

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著者プロフィール

大阪大学名誉教授

「1997年 『懐徳堂とその人びと』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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