ストレスの肖像: 環境と生命の対話 (中公新書 1113)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (283ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121011138

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  • ストレスの研究は生理学的な領域で進められた。外部の環境と生体の内部環境、自律神経のコントロールによるホメオスタシスなどをベースにセリエによる一般適応症候群が見出される。やがて物質から社会心理的ストレス因が問題視されるにいたって、生活の変化への対処や日常への認知行動といったコーピング理論が生まれ現在にいたっている。心と身体というデカルト以来の議論は、われわれのもっとも身近なところにある。
    最近の学問の花形とも言える脳科学の知見も著者は早々と導入し、大脳辺縁系(下等動物にもある旧い脳)に制御される“情動”がストレス対応への源であると指摘する。生体の崩れたバランスを回復させる実動部隊、内分泌系、免疫系の司令塔である。これは精神分析における“無意識”領域になぞらえるものであり、大脳新皮質が司っている“意識”との対話が有効に行われることによって生体の健康は保たれる。
    ストレス因の撲滅など不可能なことであるし、万人に通用する決定的な解消法などない。心の問題である以上、心のありようによって解決してゆくほかはない。刻々とたる“瞬間”に小さな感動を見いだせる開かれた心、それが「ストレスは人生のスパイスである」ということの意味であるようだ。

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