在日韓国・朝鮮人: 若い世代のアイデンティティ (中公新書 1164)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (234ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121011640

作品紹介・あらすじ

さほど問題なく日本社会に適応しているかのようにいわれる在日韓国・朝鮮人の若者は、実際には、その多くが成長の過程で日本人側の偏見と差別にぶつかり、アイデンティティの葛藤を体験している。だが、彼らの存在と意識は、実に多様化し揺れ動いている。本書は、2世・3世と呼ばれる人々の聞き取り調査を通して、民族問題とそのアイデンティティを考えるとともに、日本社会の構成員としての90年代の「在日」の生き方を模索する。

感想・レビュー・書評

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  • 日本社会で「コリア系日本人」という概念は成立していない。彼ら/彼女らはあくまで「在日」である。なぜか。日本語で「在米」「在ブラジル」などというときそれらはその国への一定の滞在を意味する。移民などによりその国に定住し、国籍などを取得すれば「日系アメリカ人」「日系ブラジル人」と呼ばれる。それなのに、母国の文化以上に日本の文化を内面化している韓国・朝鮮籍の若者たちをあくまで「在日韓国人・朝鮮人」と呼び続けることには象徴的意味がある。彼らの存在の現実とは別次元で日本社会の一般的構成員のコンセンサスとして、彼らはいつまでも“仮住まいの非定住者”にすぎず基本的な部分で文化を共有しているにも関わらず、彼らを“純粋な非日本人”の側に押し出す、無意識の共同主観的メカニズムが働いているからである。

  • もう初版は20年近く前になるので、そういう前提で読めば、それなりに興味深い内容です。

    できれば、同じような内容でここ数年に書かれたものがあると比較できてなお価値が上がると思います。

  • 在日と言ってももちろんその中には様々な思考の人がいる。しかしどうしてもそのことを忘れがち。その点、5種類のグルーピングは合点がいくものであった。インタビュー豊富なのがいい。

  • ・在日○○という呼称は本来仮住まいの際に使うものである。
    そしたら、「日本人」を「在日日本人」と呼ぶよりも「在日コリアン」を「コリアンジャパニーズ」って呼ぶ方がいいのではないか。
    ・渉外婚姻(いわゆる国際結婚の法律用語)
    ・「中国は少数民族に対して日本のような抑圧的な政策をとっていない。」本当?
    ・韓国では冒頭のR音を発音しない。北朝鮮では発音する。
    ex)李→イ

    差別の問題に解決策なんてないんだろうけど、だからといって「行動することが意味になるんだ」ってのも違う気がする。

  • 1996年,韓国への教職員派遣の前に読む。

  • [ 内容 ]
    さほど問題なく日本社会に適応しているかのようにいわれる在日韓国・朝鮮人の若者は、実際には、その多くが成長の過程で日本人側の偏見と差別にぶつかり、アイデンティティの葛藤を体験している。
    だが、彼らの存在と意識は、実に多様化し揺れ動いている。
    本書は、2世・3世と呼ばれる人々の聞き取り調査を通して、民族問題とそのアイデンティティを考えるとともに、日本社会の構成員としての90年代の「在日」の生き方を模索する。

    [ 目次 ]
    序章 「日本人」と「非日本人」
    第1章 「在日」の歴史
    第2章 「在日」の現在
    第3章 「在日」若者世代のアイデンティティ状況
    第4章 共に生きる―民闘連の若者たち
    第5章 在日同胞のために―在日韓国青年会の若者たち
    第6章 在外公民として―朝鮮学校卒業の若者たち
    第7章 一個人として―自己実現を追求する若者たち
    第8章 日本人になりたい―帰化する若者たち
    終章 共生社会の実現のために

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    [ 参考となる書評 ]

  • 斜め読み。特に感想なし。

  • すみません、すみません、在日韓国・朝鮮人の方を差別したり苛めたりした経験も、それを目撃した経験もなかったもので、この問題(?)に関する知識や見識を深めてこなかった。著者により在日二世、三世の生の声が興味深いし、4つのタイプ「祖先志向」「共生志向」「個人志向」「帰化志向」への分類は分かりやすかった。

  • むかーし読んだ本を、久しぶりに借りてきて読む。この人の本は『同化と異化のはざまで―在日若者世代のアイデンティティ葛藤』や『現代若者の差別する可能性』など、同じ頃に出た本をいくつか読んでいる。

    この本の「若い世代」は、1950~1960年代の生まれ、著者を中心とした聞き取り調査がおこなわれた1980年代末の時点で20~30代だった二世・三世の人たちで、この本では10人の事例が紹介されている。

    今回読みなおした私の関心は「名前」だった。
    創氏改名によって、朝鮮の「姓」を、日本式の「氏」につくりかえることを強要された際、通名(日本名)に民族姓を織り込んだ例が多いことは知っていたが、「通名にはあまりない」タイプの氏もあるし、若い世代では朝鮮の名付けや結婚のルール(父系血統主義にもとづく)を必ずしも踏襲しない、いわば"日本式" の名がみられる。著者の言い方を借りれば「『本名』自体が『日本的な名前』になり、必ずしも典型的な『民族名』とは言いがたくなっている」(p.63)のだという。

    また名前の読みも、通名ではなく「本名ひとつ」で暮らしている人も、それを朝鮮語で読む名(金嬉老を「キムヒロ」と読むような)と、日本語読み(金嬉老を「きんきろう」と読むような)と、自分には「二つの名前」があるという場合もある。

    こないだ読んだ『越境の時』で、金嬉老事件のあらましを書いた最初に、「金嬉老は、本名さえ曖昧な人物だった」(p.185)とある。

    実父の名や母の再婚相手の名に、民族名と通名が混じり、さらに朝鮮語読みと日本語読みがあって、それらを数えれば「七つの名前を持つことになるだろう」というのだ。裁判所の記述でさえ「金岡安弘、金嬉老こと権嬉老」と三つが書かれているという。

    名前がいくつもある、というのは、名前を奪ったことの結果なのだと、気づかされる。それは、場面にあわせて好きな自分を選ぶというようなことでは決してなくて、自分は誰なのか、「ほんとうの自分」はいったいどこにあるのかと問いをうまずにいないだろうと思う。この本のサブタイトルにある「アイデンティティ」の問題が、「名前」に象徴的にあらわれていると思う。

    この本のタイトルや本文で一貫して「在日韓国・朝鮮人」が使われているのは(そして代名詞には「彼ら/彼女ら」が使われているのは)、1990年前後の"政治的な正しさ"の言葉づかいかなあと思った。

  • 体系的に在日韓国人の心情が整理されている。
    二世・三世と言われる在日韓国人に対して、インタビューしたものを総まとめしている。僕がイマ最も会話したい人々とのインタビューが取り上げられていた。
    結論としては、「共生する社会の創造」が著者の意見だった。ここには、僕も共感する。僕は、「人類皆兄弟」という考え方で生きている。ケンカや揉め事が嫌い。カルチャーギャップが楽しくて色んな人種の人達と絡むのが好き。 だから色んな人達と共生したいという考えがある。共生するためには、お互いを受け入れあって生きていくのが望ましい。そのために、「韓国併合」、「強制連行」、「創氏改名」などの歴史をしっかりと勉強することが大切である。

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著者プロフィール

1947年生まれ。東京大学大学院社会学研究科博士課程単位取得済退学。
埼玉大学名誉教授。博士(社会学)。
部落差別問題、在日コリアン問題などの差別問題の調査研究に従事。
2003年からはハンセン病問題にもかかわり、以下の著作がある。
『栗生楽泉園入所者証言集』全3巻(谺雄二・黒坂愛衣との共編、創土社、2009)
『生き抜いて サイパン玉砕戦とハンセン病』(話者・有村敏春、黒坂愛衣との共編、創土社、2011)
『質的研究法』(G・W・オルポート著、福岡訳、弘文堂、2017)
『「こんなことで終わっちゃあ、死んでも死にきれん」―孤絶された生/ハンセン病家族鳥取訴訟』(世織書房、2018)
『ハンセン病家族訴訟―裁きへの社会学的関与』(黒坂愛衣との共著、世織書房、2023)

「2023年 『聞き取り もうひとつの隔離』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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