ノーベル賞の100年―自然科学三賞でたどる科学史 (中公新書)

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著者 : 馬場錬成
  • 中央公論新社 (2002年3月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (227ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121016331

ノーベル賞の100年―自然科学三賞でたどる科学史 (中公新書)の感想・レビュー・書評

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  • 2002年刊行。著者は元読売新聞記者のSci.Wrtr.。タイトル通り、ノーベル物理学・医学生理学・化学各賞の受賞者とその業績から、20世紀の科学史を素描しようとする。日本人受賞者の叙述が多いが、正直、他にも多くの関連書籍があることからみて、受賞を逃した日本人、また外国人(勿論、著名な研究者が多い)の業績から見た、科学の進歩発展・研究への影響の方が興味をそそる。物理・医学・分子生物学という区分は止むを得ないが、如何せん叙述分量が少なすぎ。日本人への顕著な偏頗も?(売れ筋を考えれば致し方が無いのだろうが)。
    国籍を問わず叙述してもらわないと、業績が真に意義深いかの判別がつきにくく、かつ、漏れ落ちを懸念してしまう。また、化学賞の分析が多くない(専門性に過ぎるためか?)。刊行後の受賞者、日本人なら小柴昌俊・田中耕一氏以降の叙述がないのは勿論、野依良治氏の言及も多くはない。PS.50年経てば、科学史研究者に対してはノーベル賞選考過程を開示するとある。情報公開の在り様を考える上で示唆的である。文化勲章やその他はどうやって選ばれたんでしょうねぇ…。

  • 新聞記者として長年,ノーベル賞に関連した取材をおこなってきた著者による本.前半は日本人受賞者について触れ,後半は各世紀における研究分野の変遷について触れられる.

    ノーベル賞にの選考過程についても書かれており「日本人受賞者は政治的なロビー活動が足りないから少ない」というのは誤りとしている.

  • ノーベル賞受賞者の業績から、20世紀の科学史を鳥瞰しようとする試みには、類書がたくさんある。本書は、自然科学三賞を同時に扱いつつ、コンパクトにまとめている点が新しいかもしれない。とはいえ、物理学賞と医学・生理学賞がメインであり、化学賞に関する記述は少ない。

    ノーベル賞は20世紀の幕開けとともに始まった。そして、その20世紀は物理学の時代であった。量子力学は、1895年のレントゲン(Wilhelm Röntgen)によるX線の発見、そして1896年のベクレル(Henri Becquerel)による放射線の発見がその端緒となった。この両者はそれぞれ1901年と1903年にノーベル物理学賞を受賞しているから、ノーベル物理学賞の歴史をひもとくことは、そのまま新しい物理学の流れを追うことになる。新しい物理学の勃興が、20世紀の始まりとノーベル賞の始まりの両方と軌を一にしていることは、ただの偶然なのであるが、それにしても奇妙なまでの符合である。

    科学史におけるもう一つの符号は、20世紀の後半と分子生物学のリンクである。20世紀後半以降のほとんどすべてのノーベル医学・生理学賞は、分子生物学的な研究に与えられている。だから、この賞が「ノーベル生物学賞」でなく、医学・生理学賞であることをほとんど忘れそうになる。けれども、20世紀前半のそれは、まさに医学・生理学賞だった。20世紀の前半と後半で、生物学は断絶しているのである。

    20世紀初頭のノーベル医学・生理学賞の多くは、細菌ハンターに与えられている。本書で面白かったのは、ノーベル賞受賞者の候補リストに何度も挙げられながら、惜しくも受賞を逃した、4人の日本人の話である。

    1人目は、破傷風菌の純粋培養に成功し、その毒素を取り出して血清療法を生み出した北里柴三郎である。記念すべき第1回目のノーベル医学・生理学賞は、北里の共同研究者であったフォン・ベーリング(Emil von Behring)に贈られた。しかし、その業績「ジフテリアの血清療法の研究」は実際には北里と共同で行われたものであり、しかも受賞の決め手となった論文の実験は、大半が北里によるものだった。さらに、血清療法そのものに最初に成功したのも北里だった。

    2人目は、野口英世である。野口は、梅毒の病原菌であるスピロヘータを発見した。他にも、ポリオ、黄熱病、狂犬病などの病原菌を発見したと発表するが、それらはすべて間違いだった。というのも、それらの病気は実際にはウイルスによって引き起こされるからである。野口の受賞は第一次大戦の勃発によって見送られ、その後自らが黄熱病に罹患して亡くなってしまった。ただし、もし野口が受賞していたら、間違いに与えられたノーベル賞として後世に名を残すことになっていたかもしれない。

    3人目は、その名を知る者はほとんどいないように思われるが、山極勝三郎である。彼は、ウサギの耳にコールタールを塗って人工的に癌を発生させることに成功した。ところが、山極の発見の2年前に、フィビゲル(Johannes Fibiger)が線虫によってマウスに胃癌を誘発したと発表していたため、1926年のノーベル医学・生理学賞はフィビゲルに贈られた。けれども、実はフィビゲルの発見は誤りだったことが後に明らかになったのである。これは、「ノーベル賞三大過誤」の1つに数えられている。ちなみに、残る2つのうちの1つは、ロボトミー手術の考案によって1949年に医学・生理学賞を受賞したモニス(Egas Moniz)だと思われる。もう1つは不明である(佐藤栄作かもしれない)。

    4人目は、ビタミンの発見者である鈴木梅太郎である。しかし、ビタミン発見という業績によって1929年ノーベル医学・生理学賞の栄誉に輝いたのは、エイクマン(Christiaan Eijkman)とホプキンズ(Frederick Hopkins)だった。鈴木がなぜ受賞できなかったのかはよく分からないが、次のような黒い噂がある。米糠によって脚気が治るという鈴木の発見は、東大医学部の重鎮たちから猛反発を受けていた。東大医学部は、脚気は伝染病だとする誤った学説を支持しており、東大農学部出身の鈴木を見下していたのである。そのため、東大医学部が鈴木の受賞を妨害したというのだ。

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    [ 参考となる書評 ]

  • ノーベル賞受賞者決定のニュースを受けて。
    読むのが大変だったが、ノーベル賞の歴史と政治的な部分をざっと知ることができた。

  • 2009年発行の増補版。
    前半は、日本人受賞者を中心にした歴史、後半は全体史。初版以降から2009年までの受賞者の業績もあり。
    読みやすいが、歴史を追う事を目的としている事と本の分量から分かるように、研究内容については、あっさり。
    どちらかというと科学とかが好きな文系の方向けの本かと。

  • 20世紀の自然科学はどのように進展してきたかを理解し、後につづく自分は何をしたらよいのだろうと考えたい人のために

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ノーベル賞の100年―自然科学三賞でたどる科学史 (中公新書)の作品紹介

ノーベル賞は、一九〇一年に、物理学、化学、生理学・医学、文学、平和の五分野で始まったが、中でも自然科学の三分野の受賞者とその業績は、二〇世紀の科学の歴史そのものである。この一〇〇年間に世界の科学はどう変化してきたのか。本書は、ドイツの時代からアメリカの時代へ、基礎科学から応用科学へと移りゆく足跡をたどりながら、賞の未来を展望するものである。あわせて、日本人科学者にまつわる秘話も紹介。

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