ハワイの歴史と文化: 悲劇と誇りのモザイクの中で (中公新書 1644)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (252ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121016447

作品紹介・あらすじ

ハワイ-世界中の観光客を魅了する太平洋の美しい島島。十八世紀以来、欧米、そしてアジア諸国から多くの移民が来島し、定着・活動してきた。しかし、異人種、異文化との接触が、ネイティヴ・ハワイアンに苛酷な歴史を強いてきたことも忘れてはならない。本書は、日本との交流に光をあてながら、楽園イメージの奥に横たわる、もう一つの現実を浮かび上がらせ、ハワイ文化の力強い流れを描き出すものである。

感想・レビュー・書評

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  •  多くの日本人にとって、ハワイは旅行の目的地としてしか見ないだろうが、単純な「楽園ハワイ」のイメージからは程遠い、ハワイがくぐり抜けてきた様々な歴史や、ハワイに住む人々、ハワイにやって来る人々について、主に歴史的な観点から述べたもの。具体的にはサトウキビのプランテーションで働く移民たち、真珠湾攻撃から始まる大戦の中でハワイに生きた日本人、ハワイブームでハワイに出かける日本人、ハワイ王国の成立と滅亡を中心としたハワイ小史について説明されている。
     放送大学の面接授業で「ハワイの歴史と文化」という授業をとったので、その行き帰りで読んだ。今度、はからずも初めてハワイに行くことになりそうで、静岡まで授業を受けに行った。本は写真も多く紹介されており、読みやすい。巻末には著者独自のハワイの音楽紹介もある。参考文献や読書案内もすごくしっかり載っていて、ハワイアン・スタディーズの導入にもなるかもしれない。
     個人的には「ハワイ王国」と言うと「悲劇の歴史」みたいな感じでしか捉えられず、カメハメハ大王も「最後の女王」もみんな悲劇の人、くらいにしかイメージしてなかった。実際にはカメハメハは案外好戦的な人で、悲劇的では全くないな、という部分が最も印象的だった。あとキリスト教に改宗している王も結構いるようだし。日系移民の話とか、第二次世界大戦中の日本人の様子など、具体的な人のエピソードが多く出てきて、よく分かる。
     本の話ではないが、放送大学の講義で考えたことをここにメモしようと思う。「ポリネシア人の到来」、「西洋人の到来」、「ハワイ王国の成立と崩壊」以外で、19世紀までに起こったことで三大ニュースを挙げるなら、という話があった。おれは「カメハメハの死」、「キリスト教の伝来」、「土地私有制度」だと思う。カメハメハが死んだので、白檀貿易が盛んになり、それがきっかけで貴族が破綻していったから。宣教師が来て、キリスト教の価値観を押し付けると同時に、文字が伝来したから。これまで神の土地だったのに、私有を認め、ついに外国人まで私有できるようになったので、サトウキビのプランテーションが行われるようになったから。というのがそれぞれの理由。いずれにしても、ハワイが太平洋の真ん中にあるという地理的なユニークさによって、こんな歴史を歩むことになっているのだと思った。(13/12/08)

  • ハワイを訪れる前に読んで良かった。歴史や文化を知ってるか知ってないかで楽しみ方の深さが絶対違うと思った。

    特に日系人の歩みやダニエル・K・イノウエ空港の由来が印象深い。

    今やリゾート地として名が高いけど、ただウェイウェイしに行くのは本当にもったいない。その地に暮らすハワイアンに敬意を表したい。

  • 276
    (『世界史読書案内』津野田興一著 の紹介より:)
    「ハワイは独立した王国だった。1810年、カメハメハ一世によって建国されたハワイ王国は近代化を進めるが、1893年にアメリカの白人たちのクーデタによって倒され、1898年にはアメリカ合衆国に併合されてしまう。この間、サトウキビ産業が導入され、労働力として日本人がハワイに移住する。日本に併合される前にハワイをアメリカの領土にしなくては、というのがアメリカ画集国のハワイ併合論者の根拠の一つとなる。
    本書は、移民、戦争(真珠湾攻撃)、観光(日本からやってくる大量の観光客の存在はハ割の産業を支えている)をキーワードにして、ハワイの歴史を解説している。」

    ハワイ―世界中の観光客を魅了する太平洋の美しい島島。十八世紀以来、欧米、そしてアジア諸国から多くの移民が来島し、定着・活動してきた。しかし、異人種、異文化との接触が、ネイティヴ・ハワイアンに苛酷な歴史を強いてきたことも忘れてはならない。本書は、日本との交流に光をあてながら、楽園イメージの奥に横たわる、もう一つの現実を浮かび上がらせ、ハワイ文化の力強い流れを描き出すものである。

    目次
    第1章 移民たちのハワイ
    ・サトウキビとピクチャーブライド
    ・移民到来
    ・日本人移民の生活
    ・戦後の日系アメリカ人
    第2章 リメンバー・パール・ハーバー
    ・パール・ハーバー攻撃の日
    ・戒厳令下のハワイ社会
    ・戦時下の日系人
    ・戦争の言説
    第3章 「憧れのハワイ航路」
    ・日本からのハワイ観光
    ・ハワイ観光団
    ・バブルとハワイ観光
    ・観光王国ハワイ
    第4章 これからのハワイ
    ・南の島のハメハメハ大王
    ・ハワイ小史
    ・あらたな「伝統」

    著者等紹介
    矢口祐人[ヤグチユウジン]
    1966年(昭和41年)北海道生まれ。ゴーシェン大学教養学部卒業。ウィリアム・アンド・メアリ大学大学院アメリカ研究科博士課程修了。北海道大学助教授を経て、現在、東京大学大学院総合文化研究科助教授

  • 日本からハワイに移住した人、そして2世以降の人たちが太平洋戦争に対してどのように生きたか、今まで視点として抜け落ちていた。自身のアイデンティティとしては日本人ではない、ハワイで骨を埋めるつもり、でも周りからは敵の日本人と警戒される…、心情を考えると言葉にできない。
    また、最後の章は紹介されていたハパのカバー曲を聞きながら読んだが、様々な思いを感じた上で、単なるカバーとは思えない曲の仕上がりだと思う。

  • ふむ

  • 蔵書整理で手放すので、再び出会い読む日もあるか

  • 2008初上陸とともに

  • これを読んでハワイに行くと違った視点で楽しめます。

  • 2019年11月18日読了。

    ⚫️1820年に最初の宣教師が到着。

    ⚫️カメハメハ2世(1796〜1824年)の治世のもとでは、
      カメハメハ1世の妻であったカアフマヌが政治的実権を
    握ったが、彼女は伝統に固執しようとする敵に対抗する
    ためにキリスト教に改宗した。
    その結果、キリスト教を支持するハワイアンの貴族も
    増えてきた。数多くのハワイアンがキリスト教に
    改宗し、カプと呼ばれる(禁忌)に基づくハワイの
    伝統的な宗教を信じるものの数は減っていった。

    ⚫️戦時中、ハワイに暮らす日系人のナショナリティ的な
    意識はアメリカ人。
      ダニエル・イノウエも片手を失いながらもアメリカの
    ために戦った。

    ⚫️P123
     ハワイはサーフィンの発祥の地である。
     カメハメハ大王のサーフィンの達人だったという話が
    ある。

    ⚫️最初にハワイに人が渡ったのは、西暦300年から
    750年位の間だと言われている。
    人類学的にはポリネシア文化圏に属する。
      これは、西はトンガから東はイースター島まで、
    南はニュージーランドから北はハワイまで、
    太平洋一帯に広がる大文化圏である。

    ⚫️P181
      イギリス人のジェームス・クック船長が2隻の船で
    ハワイにやってきたのが1778年1月18日。

    ⚫️カメハメハは西洋との貿易に熱心だった。
    〜白人商人が求めたのは、「白壇の木」だった。
      白壇はハワイではイリアヒと呼ばれ、香しく、
    王や貴族はその粉末を衣服にまぶしていた。
    〜白壇の香りは中国でも大変に好まれ、香木や漢方薬と
    して使われたり扇子などの工芸品に加工されたり
    していた。

  • YY4a

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著者プロフィール

東京大学大学院情報学環教授

「2020年 『東大塾 現代アメリカ講義』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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