ニューヨークを読む: 作家たちと歩く歴史と文化 (中公新書 1734)

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  • / ISBN・EAN: 9784121017345

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  • 2020年4月4日読了。

    ●ウォール街
     →1653年、当時のピーター・スタイヴサント
      総督がが先住民とイギリス人の襲撃に備え、
      イースト河からハドソン河まで達する714mの
      壁(ウォール)を築いた。この壁がのちに撤去
      され、ウォール街となる。当時のウォールはい
      わば文明社会と自然との境界線と言え、
      オランダ人たちが資本主義経済を守るための
      壁でもあった。

    ●コーネリアス・ヴァンダービルト
    (1794〜1877)
     →1810年、弱冠16歳で中古の帆船を使って、
      ステタン島とマンハッタン島を結ぶフェリーを
      始めている。ヴァンダービルトはこれをきっか
      けに莫大な財を成し、後に鉄道会社を次々に
      買収、鉄道王となった。ヴァンダービルト家は
      ニューヨーク上流階級に君臨することになる。
      ニューヨークの大富豪と言えば、ヴァンダービ
      ルト家に並び称されるのがアスター家である。
      その祖であるジョン・ジェイコブ・アスターは
      毛皮商人として成功し、それを元手にマンハッ
      タンの不動産を買い漁って、莫大な富を築き上
      げた。
     →ド・ウィット・クリントン(1769〜1828)が
      市長の時、格子状の街路(グリッド)で覆い尽
      くそうという計画を発表。

    ●P33 ホレイショ・アルジャー
     →少年向けの成功物語を量産して、19世紀末に
      一世を風靡した大衆作家。高く評価されたわけ
      ではないが、アメリカ人の精神に与えた影響と
      いう点では、どんな文学作品も及ばないだろ
      う。

    ●P39 ハーマン・メルヴィル「白鯨」(1851年)

    ●P67 イーディス・ウォートン
     →「歓楽の家」(1905年)
       …世紀転換期のニューヨーク上流階級の社交
        界。
      「無垢の時代」(1920年)
       …1993年に映画化「エイジ・オブ・イノセン
        ス」。アカデミー賞優秀衣裳賞。
        上流階級の人々は冬になると好んで音楽院
        に集まる。

    ⚫️P81
     →ナポリ出身者はマルベリー通り付近、
      西シチリア出身者はプリンス通りとエリザベス
      通り、東シチリア出身者はキャサリン通りとモ
      ンロー通りといった具合である。
      映画監督のマーチン・スコセッシはシチリア移
      民の子供で、エイザベス通り付近のイタリア人
      街に育った。

    ●P85 ジェイコブ・リース(1849〜1914)
     →「いかに残り半分は暮らしているのか」(1980年)
      ロワー・イーストサイドのスラム街を取材。
      最下層の人々の悲惨な現実を記し、
      アメリカ中に凄まじい衝撃を与えた。

    ●P89 オー・ヘンリー(1862〜1910)
     →19世紀後半から20世紀初頭にかけてのニュー
      ヨークで、どの作家よりも有名で、
      今でも人気のある作家。
     →「最後の一葉」
      
    ●19世紀の富豪と言えば鉄鋼のカーネギー、石油の
     ロックフェラー、コークスのフリックなど、素材
     や燃料の生産者であり、彼らは生産性を高めるこ
     とで巨万の富を築いた。

    ●P130 スコット・フィッツジェラルド
     (1896〜1940)
     →「楽園のこちら側」(1920年)。
      この時代の若者たちの風俗、性的な奔放さなど
      をあからさまに描き、センセーショナルを巻き
      起こした作品。
     →「グレート・ギャツビー」(1925年)

    ●ワールドシリーズの八百長話
     →シューレス・ジョー・ジャクソンが関わった
      ブラックソックス・スキャンダルのこと。
      シカゴ・ホワイトホックスの8選手がワールド
      シリーズで八百長し、永久追放になった事件だ
      が、これを買収したのは実在したユダヤ人マフ
      ィアであると言われている。少数民族として
      軽蔑的に扱われていたユダヤ人がこの時期すで
      にかなり力を得てきていること。

    ●ハーレムとは元々、南北130丁目から145丁目、
     東はマディソン街、西は7番街あたりまでを指
     す。中心地は五番街と七番街の間の135丁目で
     ある。この地は1636年、オランダ人によって
     築かれ、「新しい土地」を意味する
     「ニュー・ハーレム」と呼ばれていた。
     19世紀初頭までは孤立した田舎の村にすぎなかっ
     たが、1930年代にハーレム鉄道が作られ、
     さらに19世紀後半に高架鉄道が作られるに及ん
     で、ベッドタウンとして発展していく。
     最初は中流のドイツ系市民、さらに19世紀末には
     イタリア系やユダヤ系の市民が暮らす場所と
     なっていった。
     〜1900年、地下鉄IRT線の建設が発表。
     アパートが大量に造られたが実際には住む人が
     おらず、ここに黒人がどっと流入することに
     なった。

    ●19世紀後半から大量に流入した新移民たちの中
     でも、ユダヤ人は二世、三世の時代になり、
     教育や言語のハンディキャップを完全に克服し
     た。こうして音楽の世界ではレナード・バーンス
     タインやアイザック・スターン、学問の世界では
     ダニエル・ベルやハンナ・アーレント、文学批評
     ではアルフレッド・ケイジンやアーヴィング・ハ
     ウなど、様々な分野で第一人 者を排出するように
     なった。小説の世界ではバーナード・マラマッ
     ド、ソール・ベロウなど。

    ●ブルックリンを描いた映画
     「スモーク」「ブルー・イン・ザ・フェイス」

  • ニューヨーク通史として読むのもアリかも。

  • 部屋に転がっていた。一体いつ買った本だ?でも面白そう。

著者プロフィール

(かみおか・のぶお)1958年生まれ。アメリカ文学者。訳書に、ハーパー・リー『ものまね鳥を殺すのは』(早川書房)、ティム・オブライエン『戦争に行った父から、愛する息子たちへ』(共訳、作品社)、リチャード・ライト『ネイティヴ・サン』(新潮文庫)、他多数。

「2024年 『地下で生きた男』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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