アジア冷戦史 (中公新書 1763)

著者 :
  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (222ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121017635

作品紹介・あらすじ

アジアの近代は、国民国家の成立を待たずに帝国主義の支配に従い、次いでただちに社会主義の洗礼を受けた。このため、ヨーロッパでの東西対立のような国家関係が存在しなかった。こうした、この地域独得の多極的な力関係や歴史的背景を抜きにしてアジアの冷戦は語れない。本書は、ソ連崩壊前後に公開された機密文書、重い口を開いた証言などを綜合して、アジアでの冷戦の誕生から終焉までをたどるものである。

感想・レビュー・書評

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  • 問「なぜ、東アジアでは冷戦が終結しないのか?」答「欧州と違い、モスクワの一元管理ではなかったから」『アジア冷戦史』といいながら、東西対立ではなく、ソ連と中国(と北朝鮮とモンゴルとベトナム)の対立の歴史である。北朝鮮問題がここまで長引いているのも、金日成がモスクワと北京の共同介入を乗り越えて逆に絶対権力を掌握した事に端を発するのだろう。北朝鮮の『自主』の重みをようやく理解できた気がする。

  • 2004年刊行。著者は法政大学法学部教授。◆ヤルタ会談から21世紀までのアジア各国の抗争を検証する。本書の特徴はソ連秘密文書の分析による点。その意味で、典型的冷戦構図の米ソ対立ではなく、中ソの蜜月、対立、融和の過程が興味を引く。

  • アジアでの冷戦を概観することで第二次世界大戦から今までの東アジアの国際政治の流れが繋がった。近現代史ってのはなかなか勉強する気が起きずにいたんだけど、その意味でこの本から多くを学んだ。
    北朝鮮、中国、モンゴル、ベトナムなんかとソ連がいかに絡み合ってきたのか。ソ連崩壊後に公開された史料も合わせて淡々と歴史を説明してくれる。

  • 主にソ連崩壊後に公開されだしたロシア側の資料に基づいて、アジアという地域に焦点を当て、冷戦の始まりから終焉までの通史を描いている。
    ヨーロッパ側とは違って、アジアの社会主義陣営は当初から多元化・多極化していたところに特徴があり、そのアジア冷戦の特異性が北朝鮮など現在に至る冷戦の残滓につながっているということがよくわかった。また、アジア冷戦において、スターリンや毛沢東をはじめ「人」の要素が大きく影響を与えてたこともあらためて感じた。
    ただ、事実の羅列が多く、重複箇所も散見される本書はあまり読みやすくはなかった。

  • 意外にソ連の発言力って・・・

    ソ連と東アジアの冷戦期における関わりを描いている。
    ソ連は欧州を中心に指導力を、中共はアジアに対して
    指導力を発揮してあうことを認めた。

    →中共が経済の自由化、ソ連が政治の自由化。
    北朝鮮だけが主体思想で独自路線を使い中ソから
    敬遠されていたのは意外だった。

  • これは好い本.古い常識からすると「ええっ?!」と思うようなところも多々あるが,出典書いてあるから確かめようもある.薄いのに非常に密度高い.

  • 極東アジアにおける冷戦史を国家間のやりとりをもとに記した一冊。
    骨太な内容であり、個々の事象についてはある程度の
    事前知識が無ければおいて行かれる印象を受ける。
    とはいえ冷戦下のパワーバランスの中での北朝鮮の起こりや
    中ソ冷戦に関する記載は非常に興味深く読むことができた。

  • 冷戦をソ連・アメリカの二極構造ではなく、そこにアジアを加えた多極構造と定義して、アジアにおける冷戦史(特に60年代まで)をまとめた1冊。主にソ連の資料をもとにしているので、世界史とかではわりと雑に扱われがちなアジアの共産圏が本書の中心となっているので、なかなか面白いと思います。

  • 冷戦に関する本は数多く読んできたが、読む本それぞれ新しい内容にふれ、驚かされる。
    ・中ソ対立はイデオロギー対立というより、核による利害対立であったといえること。
    ・北朝鮮の正式名称はロシア語からの直訳であること。また中ソ対立では、巧妙に小国がゆえの立ち回りを見せたこと。

    この本は2004年と比較的新しく、六カ国協議まで含まれる。
    東アジアの複雑怪奇な冷戦史を知らない限り、語れないことも多い。

  • [ 内容 ]
    アジアの近代は、国民国家の成立を待たずに帝国主義の支配に従い、次いでただちに社会主義の洗礼を受けた。
    このため、ヨーロッパでの東西対立のような国家関係が存在しなかった。
    こうした、この地域独得の多極的な力関係や歴史的背景を抜きにしてアジアの冷戦は語れない。
    本書は、ソ連崩壊前後に公開された機密文書、重い口を開いた証言などを綜合して、アジアでの冷戦の誕生から終焉までをたどるものである。

    [ 目次 ]
    第1章 アジア冷戦の始まり
    第2章 中国革命と中ソ同盟(一九四九―六〇)
    第3章 北朝鮮―建国・戦争・自主
    第4章 ソ連とアジア、偽りの同盟(一九五四―六四)
    第5章 中ソ冷戦とアジア冷戦(一九六四―八四)
    第6章 ソ連の崩壊とアジア
    第7章 二一世紀のアジア

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著者プロフィール

法政大学法学部国際学科教授。
1948年生まれ。東京大学法学部卒業、同大学法学博士。成蹊大学教授をへて1988年より現職。専門:ロシア政治、ソ連史、冷戦史。
主な著書:『ソビエト政治と労働組合─ネップ期政治史序説』(東京大学出版会、1982年)、『ソ連現代政治』(東京大学出版会、1987年/第2版、1990年)、『ゴルバチョフの時代』(岩波新書1988年)、『「ペレストロイカ」を越えて─ゴルバチョフの革命』(朝日新聞社、1991年)、Moscow under Stalinist Rule, 1931-34(Macmillan, 1991)、『スターリンと都市モスクワ─1931~34年』(岩波書店、1994年)、『独立国家共同体への道─ゴルバチョフ時代の終わり』(時事通信社、1992年)、『ロシア現代政治』(東京大学出版会、1997年)、『ロシア世界』(筑摩書房、1999年)、『北方領土Q&A80』(小学館文庫、2000年)、『ソ連=党が所有した国家─1917~1991』(講談社、2002年、2017年文庫版『ソヴィエト連邦史』予定)、『アジア冷戦史』(中公新書、2004年)、『モスクワと金日成─冷戦の中の北朝鮮1945~1961年』(岩波書店、2006年、露版、2010年)、『図説 ソ連の歴史』(河出書房新社、2011年)、『日本冷戦史─帝国の崩壊から55年体制へ』(岩波書店、2011年)、『ロシアとソ連 歴史に消された者たち─古儀式派が変えた超大国の歴史』(河出書房新社、2013年)、『プーチンはアジアをめざす 激変する国際政治』(NHK出版新書、2014年)、『日ロ関係史─パラレル・ヒストリーの挑戦』(共編著、東京大学出版会、2015年)、『宗教と地政学から読むロシア─「第三のローマ」をめざすプーチン』(日本経済新聞出版社、2016年)。論文に「クバン事件覚え書」(『成蹊法学』No.16、1982年)、「労働組合論争・再論─古儀式派とソビエト体制の視点から」(『法政志林』No.1-3、2016年)など。

「2016年 『ロシアの歴史を知るための50章』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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