国連の政治力学: 日本はどこにいるのか (中公新書 1899)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121018991

感想・レビュー・書評

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  • 国連の現状と日本の外交政策に関して、国連の場を実際に経験した筆者が書いた本。印象に残ったのは、「外交は筋肉のようなもので、使えば使うほど強化されていく」という言葉である。

  • 非常任理事国になって国連安保理改革の軌跡。
    失敗に終わりましたが、実際まだ改革自体は
    水面下では続けられている。
    ウクライナ戦争から更に改革の必要性が問われています。

  • 保守派政治学者北岡伸一が国連大使として外交実務に携わった際の記録。想像以上に生々しい現場が垣間見えて、自分の中の国連のイメージがガラッと変わった。
    Ⅰ国連システム
    米国よりも途上国の方が強いのではと思える程に平等主義が徹底されているようだ。日本の分担金負担も重く、それに見合うだけの発言力の必要性を感じた。経済協力はそうだが、人間の安全保障が日本中心の発想だったことは驚いた。
    Ⅱ国連代表部
    国連に居る外交官は選りすぐりで、その中で激しい知的競争が行われていることが分かった。電話や交渉、会議を繰り返し、利害のすり合わせへと持っていくのは一苦労だろう。安保理での活動(特にハイチ・スーダンへの視察)は体力的にもきつそうだった。その中でも筆者は知的な仕事を魅力的に感じたという。
    Ⅲ安保理常任理事国
    筆者の歯痒い思いが伝わってきた。国連で日本の存在感を増すには常任理事国入りは必須だろうが、本交渉では米中の思惑やコーヒークラブ(初耳!)の反対をかわすために悪戦苦闘した結果、結局アフリカのよくわからない要求のせいで頓挫するという残念な結果に終わってしまった。G4は日本にしては画期的な戦略だとは思うが、安保理や国際関係の原理上なかなか難しいものがあったのだろう。
    Ⅳこれから
    キーワードはODA、PKO、安保理。筆者は国連重視を強調しているが、日本の経済低迷、少子化、アジアの台頭、米中対立を鑑みるに日本の国連での存在感(特に経済協力)は段々と薄れていくと思う。そういう意味では2005年の交渉がラストチャンスだったのかもしれない。ただ、最近は国連外の多国間連合(ASEAN/TPP)で日本が主導できる場所が増えている。そういう場所で巧みな外交を展開できれば国力低下を緩和できるかもしれないと思う。もう20年前の本なので、アフリカはもっと親中だし、日本の分担金は減った(19%→8%)。気候変動でも後れを取った日本が次にリードできる分野は何なのだろう。

  • 政治学者である著者が実際に国連で外交官として勤務していた経験を綴った1冊。
    2007年刊行の本なので少し古いが、実際の現場の様子がわかりやすく書かれていて、読んでいて楽しかった。

    この本を読んで実際の様子と日本のメディアが報道している内容は随分と違うのだな…と感じた。
    日本のメディアは優秀な人材を潰したり貶したりすることが多く、それに迎合する国民が多いことはある意味で国益に反する、との著者の意見は正しいと思う。
    そういった「国民」にウケそうな報道をするのだろう。

    国連の予算の20%ほど(当時)を負担しても日本は常任理事国にはなれない。大国も小国も1国1票の投票権。
    この本の時点で既に12年ほど議論されていた国連の安保理改革が未だになされていないことを考えると国連不要論に傾きがちだが、それなりに機能している部分もありますよ…ということは理解できた。
    中国の日本批判に対する現実的な意見が特に良かった。

  • 国連に次席代表として席を2年半置いた著者が
    国連の簡単な仕組みから、各国と渡り合う日々、
    安保理の現場を臨場感を持って伝える一冊。
    さすがに現場経験者だけあって話に説得力があり、
    国連を少し身近に感じられた。
    やや日本の力を過評価しているのではないかという面もあったが、
    国連に働きかけ、国連の行動に影響を与えていくという主張には
    納得できた。

  • [ 内容 ]
    国家を超える結束の場として構想された国連が誕生して六十年。
    冷戦とその後の激動を経て、その地位と役割は大きく変動した。
    国際社会でアメリカ中心のシステムが機能するなか、国連は世界の平和と安全の維持という最大の目的を果たしうるのか。
    また、一九二の「対等」な加盟国をもつ組織の意思決定はどうなされているのか。
    研究室から外交の現場へ身を移した著者の二年半の体験から、国連の現在と未来を照らし出す。

    [ 目次 ]
    1 国連システムとアメリカ・システム(世界の中の国連、国連の中の日本 二〇〇五年世界サミット―総会のダイナミクス 戦後日本外交と国連)
    2 国連代表部の仕事(外交という仕事 国連代表部の多忙な一日―二〇〇五年一月十日 安保理の多忙な一ヵ月―二〇〇五年七月 安保理視察団)
    3 安保理改革の軌跡(安保理常任理事国入りの大義―二〇〇四年十一月 中国の日本批判に答える―二〇〇五年四月 改革はなぜ停滞するのか―二〇〇六年三月)
    4 これからの日本と国連(グローバル・プレーヤーの条件―二〇〇六年三月 北朝鮮問題と国連)

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  • 具体的。
    文章読みやすい。

    安保理改革に実際に携わった方の著書なので
    雰囲気をつかむのにすごく助かります。

著者プロフィール

国際協力機構(JICA)特別顧問、東京大学名誉教授、立教大学名誉教授

「2023年 『日本陸軍と大陸政策 新装版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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