物語数学の歴史: 正しさへの挑戦 (中公新書 2007)

著者 :
  • 中央公論新社
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感想 : 20
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  • Amazon.co.jp ・本 (327ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121020079

作品紹介・あらすじ

古代バビロニアで粘土板に二次方程式の解法が刻まれてから四千年、多くの人々の情熱と天才、努力と葛藤によって、人類は壮大な数学の世界を見出した。通約不可能性、円周率、微積分、非ユークリッド幾何、集合論-それぞれの発見やパラダイムシフトは、数学史全体の中でどのような意味を持ち、どのような発展をもたらしたのか。歴史の大きなうねりを一望しつつ、和算の成果や19世紀以降の展開についても充実させた数学史決定版。

感想・レビュー・書評

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  • 古代から現代に至るまでの数学の通史を一気に読み通しました。数や図形から始まった数学の始まりから、現代までの捉え方とその間にあった出来事などが簡潔にまとめられていると思います。より詳しいことを知ろうと思えば、個別の数学的事象について学び続けることが必要ですね。それと同時に、この物語を読むと、普段使っている数学が数世紀前の数学だなということを実感します。今の数学を知り、使えるようになればできることも増えてくるのだろうと思います。やはりいろいろなことを知り、手を動かすことは大切だなと考えます。

  • 古代中国やメソポタミア、ギリシャの高度な文化から始まり、フェルマーの最終定理や現代の集合論に至るまでの、数学の「思想的な」歴史をたどる壮大な物語。数とは何か、数学する(数学を数学的に考える)とはどういうことかを、深く深く考えさせられる本です。
    読んでいて最初にぶつかるのが、そもそも数とは何かという、基本的でありながら容易に答えを出せない問いです。海外ではどうか知りませんが、日本語の「数」は音訓2通りの読みによって、数字や具象物に付随する計算などでは「かず」、抽象的に数学する場合には「すう」と読む。と、そんなことを、確か中学の数学で習った気がします。茲で問題になるのは、人間にとって数はいったいいつから「すう」たる存在と成りえたか、ということでしょう。個人の発達では、「すう」のような概念を扱えるのは、形式的操作という認知処理を行えるようになる10歳以降と思われます。個人がその際に体験するコペルニクス的な大変化を考えるとき、歴史の中で人間の思考が具象を離れるのは、とても重大な事件だったように思えるのです。
    現在世界を席巻している西洋数学が、古代ギリシャの数学を起源としているということは周知のことですが、筆者は本書で、そのために数学自身が抱えることになった根本的矛盾を何度も指摘しています。それは代数と幾何との間にある、計算することと図を描くこと、もっと言えば、ルーティン化された解決法と直感による解決という2つの間にある齟齬にほかなりません。私たちは教育課程で数学を習う中で、数によって図を表し、図から数を返すという行為を当たり前のことだと考えてしまいがちです。しかし、そこには凡人では分からないような大問題が隠れているようです(数と図との関係ですら、中学生には理解しづらいことだというのに!)。図という連続と数という離散、あるいは、線という連続と点という離散。心理学領域での「スペクトラム仮説」を巡る議論をはじめとして、自然科学的アプローチでは必ず問題になるこの2つの捉え方は、西洋的、あるいはギリシャ的なものの考え方に孕む宿題を、今の私たちに残しているのかもしれません。
    本書は初心者向けに書かれたものかと思いきや、要所要所でかなり高度な数学理論が紹介されています。それは限りなく平易に記述されていますが、残念ながら私は、筆者がもっとも取り上げたかったというリーマンの業績を、あまり理解することができませんでした。1+2+3+4+…と、自然数を「無限に」足した解がなぜかマイナスになるという定理でつまずいているようでは、まだまだ数学を理解する道は遠いということでしょうか。

    (2009年7月入手・11月読了)

  • KF2a

  • 第一章「数学の芽」、第二章「数学の始まり」、第三章「西洋数学らしさ」、第四章「古代から中世へ」、第五章「カメに追いつくとき」、第六章「計算する魂」、第七章「曲がった彫刻」、第八章「見えない対称性」、第九章「形に対する悦び」、第十章「感性の統合」、第十一章「フェルマーの最終定理」、第十二章「空間と構造」。西洋、東洋を含めて、数学の歴史を物語る。現代に近づくほど、説明される数学の内容が難しい。より抽象度が高くなるからか。

  • 古代からの東西の数学の歴史を、「体型構築」や「感性」の観点で解説する。非ユークリッド幾何学の意義に関する理解が深まったし、リーマンのことを学びたくなる。日本の数学のことも少し知れた。もっと勉強すればさらに意味がわかると思う。

  • 数学するということが、そもそも、どういうものであるかというところから始めているのが素晴らしかった。

    割り算が、文明によって、異なる処理のされかたをしているのが興味深い。特に、ユークリッドの互除法が割り算と強い関係にあったことに気づかされた。

    ニュートンやライプニッツが微分積分学を発見したとは言い切れないというところに面白さを感じた。

    和算がどういうものか気になってきた。ただし、西洋の数学は内に矛盾を貯めているのが特徴のようである。

    射影幾何学は長さや角度を無視する幾何学であるということを知り、ためになった。

    素人でも理解できるのは、19世紀くらいまでだと思った。20世紀以降は、層や多様体、作用素環やスキーム、トポスは理解しにくいかもしれない。

    主軸として、計算する数学と計算しない数学(見る数学)をもとにしているので、読みやすかった。

    主題があるので、歴史の順序が右往左往するが、それは、最後の年表をみれば済むことなので、気にすることはないと思う。

  • 紀元前のユークリッド「原論」やアルキメデスからフェルマーや現代の研究者までの数学の歴史について記したもの。簡潔にまとめられているが、素人には内容が難しい。特に近代の数学の理論は理解できなかった。印象的な記述を記す。
    「ユークリッド「原論」」
    「アルキメデス」
    「フィボナッチ数列(ウサギの繁殖行動)
     1,1,2,3,5,8,13,21,34,55..
     隣り合うフィボナッチ数の比
     Φ=1+1/ 1+1/ 1+1/1+...=1+1/Φ
      =1+√5/2
      =1.618033989...(黄金比)」
    「オイラーのゼータ関数
     1/1※2 +1/2※2 +1/3※2 +1/4※2 +...+1/n※2 =π※2/6」

  • 力作。
    古代文明の粘土板からトポスに至るまで、「数学」が辿ってきた道筋を丁寧になぞった一冊。
    数式をメインに据えるのではなく「数学」そのものを俯瞰する。
    そうすることで、数学の歴史を貫いているものを浮かび上がらせる。

    ぐいぐいと読ませる筆致の巧みさも見事だった。
    授業中、「そういえば余談なのだが、」と前置きして脱線する、あの感じ。
    ああ、この人は「数学」が大好きなんだなあとしみじみ思う。
    対象をこよなく愛している人が語る、その対象についての話は、やっぱり最高に面白い。

    その魅力を伝えるために、素人には難解な概念に触れざるを得ない部分もある。
    そういう部分でも、著者は思いきって踏み込む。
    けれどその前には、<blockquote>細かいところは理解する必要はないので、おおらかに一応ざっと見るくらいでよい。</blockquote>のように但し書きを入れてくれる。
    流れの理屈が理解しきれずとも、そこで言わんとしていることは、数式を眺めていればなんとなく分かる。
    それでいいんだな、と安心させてくれる。
    なんといっても、「おおらかに」という言葉がいい。

    良い本を読んだな、と読了に思える一冊だった。
    あと、やっぱ数学者って問答無用で格好いい。
    物理学者も格好いいんだけど、数学者の格好良さは格が違う気がする。
    そして、数学者って、たぶん、きっと、根本的にロマンチストなんじゃないかな。

  • 198円購入2018-06-23

  • むずかった。じっくり読む系で時間かかる。なので速読。

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著者プロフィール

かとう・ふみはる 1968年、宮城県生まれ。東京工業大学理学院数学系教授。97年、京都大学大学院理学研究科数学数理解析専攻博士後期課程修了。九州大学大学院助手、京都大学大学院准教授などを経て、2016年より現職。著書に『ガロア 天才数学者の生涯』(角川ソフィア文庫)『物語 数学の歴史―正しさへの挑戦』『数学する精神―正しさの創造、美しさの発見』(以上、中公新書)『数学の想像力―正しさの深層に何があるのか』(筑摩選書)、『宇宙と宇宙をつなぐ数学―IUT理論の衝撃』(KADOKAWA)、
『天に向かって続く数』( 共著、日本評論社)など。

「2021年 『人と数学のあいだ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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