金融が乗っ取る世界経済 - 21世紀の憂鬱 (中公新書 2132)

  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (242ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121021328

感想・レビュー・書評

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  • 経済における金融化、証券化について教えてくれる本。

    景気の波によってたまに不況になるのはやむを得ないと思うが、結局、信用創造とか財政出動によって増えすぎたお金が金融危機の規模を必要以上に大きくしているのではないかと思った。

  • 日経新聞で匿名の(大新聞が書評欄に匿名のレビューを載せて恥じないとはどういう神経なのだろう?!)書評氏が「古い日本型経営への郷愁が強すぎ」などと嫌味を言っていたが、なるほど、バブル期には日本型経営を礼賛し、失われた20年で打って変わって米経済礼賛一色に変節した日経には耳の痛い話がテンコ盛りの本書ではある。

  • かなり面白かった。新書じゃなくて、ちゃんとハードカバーの分量で読みたい内容だな。
    今まで漠然と自分でも感じていたことが言葉になっていて、ちょっと目を開かされる思い。「金融」の功罪といいますか、ここ20年くらいの「金融」の社会の中での位置づけの変化といいますか(というか、どうやって社会を浸食していったか、みたいな)。
    この本の中で参考文献として紹介されている本とか、こういう内容の論調も複数出ているみたいなので、読んで行ってみたいと思う。
    【ノート】。

  • 日本を長年研究してきた英国人研究者による本。
    世界経済の中で金融の影響力が強くなってきた傾向を「金融化」というキーワードでとらえ、グローバル化と並ぶ世界の潮流としてとらえるべきと訴える。
    高度な金融商品が混乱する市場、株主の発言力が強くなり短期的な利益重視にはしる企業、資本や人材の金融への集中、など多くの現象を筆者は問題視する、金融化の流れを変える適切な規制が必要であると主張する。
    難しいテーマを扱っているものの、非常にわかりやすい。

  • ここ20年間ほどで急速に進展し、リーマン・ショック後は折に触れて問題視されている「経済の金融化」。その様々な現象と留意すべき点が丁寧に記述され、論点が良く整理されている。そして読む者に際限のない問いを投げかけてくる。

  • * リーマンが倒産した時の社債残高は1550億ドルだったが、社債を持たずにリーマンの倒産に賭けられていたCDS契約残高は2.5倍の4000億ドル。国際決済銀行の調べによると2006年の世界合計GNP総額は約66兆ドルであるが、その年のデリヴァティヴ契約残高はその8倍も516兆ドル!

    * 国際為替市場での一日の取引総額は3.2兆ドルで実需である世界貿易総額320億ドルの100倍!

    * 米国における総企業利益に占める金融界のシェアは1950年代は10%若であったが80年代以降急激に上昇し2002年には41%となり、リーマンショック後の2008年は流石に15%に低下したものの2010年第一四半期には再び36%に上昇。

    * P.クルーグマンに言わせれば「ここ数年間、金融業はアメリカの総生産の8%を占めた。一世代前は5%だった。その増加分の3%は、結局何も役にも立たない、無駄・詐欺に費やされた3%だろう。金額に換算すれば、その3%は、実に年間4000億ドルに上る」となる。

    リーマン・ショック、円高問題、欧州債務危機、財政規律優先主義、消費税問題、小さな政府問題などなど世の中の様々な問題はいずれも解決するの難問であるということは判るのだが、必要以上に「金融界」「投資家」なるものの声が大きすぎ、政策を歪めているような気がするのは決して幻想ではないし、本書で紹介される上記のような数字を見ると彼らの意見または「脅し」もそれなりの意味を持つことが判るであろう。

    世界を危機に陥れた金融界は税金の投入により復活し、いつの間にかまた莫大な利益を背景に各種政策に声を大にして介入しだし始めている様子だ。その力の源泉を「社会の金融化」という観点から分析しているのが本書だ。再び金融界の暴走とバブルの崩壊を起こさない為の国際的な金融改革は出来るのであろうか?それが上手く行かなければ、ますます「社会公正の実現」は困難になるであろう。

  • アングロサクソン(のうちのお金持ち)の論理である「人はその能力に応じて可能な限り儲けることが善である。それを妨げる規制は無いことがベター」を、アメリカの経済学で学位を取ったセンセイや、MBAを絶対無二の能力の証と考える国費留学帰りのスノッブ官僚は、ナイーブにも信じ込んできたのだろう。
    そのせいで、401Kなぞというものでリスクの個人負担を押し付けられ、折悪しく日本企業の資本は海外に吸い取られていったため、貧乏さらりーまんの老後に備えた資産は甚だしく目減りしている。このうえ、まだ年金は減額のリスクが高いんだぞ。

    ・・・という声にならない不満に、カタチを与えてくれるありがたい本である。

著者プロフィール

ロナルド・フィリップ・ドーア(Ronald Philip Dore)
1925年2月1日 - 2018年11月13日
イングランド南部ボーンマス生まれ、イギリスの社会学者。ロンドン大学名誉教授。専攻は日本の経済および社会構造、資本主義の比較研究で、日本の労使研究で著名な研究者。
1947年、ロンドン大学を卒業。現代日本語を専攻していた。1950年に東京大学に留学。ロンドン大学東洋アフリカ研究学院卒業後、サセックス大学、MITなどを歴任した。
主な代表作に、『働くということ』『金融が乗っ取る世界経済 - 21世紀の憂鬱』『誰のための会社にするか』『学歴社会』『幻滅』『日本型資本主義と市場主義の衝突』など。

ロナルド・ドーアの作品

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