民主党政権 失敗の検証 - 日本政治は何を活かすか (中公新書 2233)

  • 中央公論新社
3.77
  • (16)
  • (31)
  • (17)
  • (6)
  • (1)
本棚登録 : 294
感想 : 37
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121022332

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 当初は期待を集めた民主党政権だが、日に日に国民の失望は高まり、3年3か月で政権から転落することとなった。本書は、民主党政権はどこで失敗したのか、それは、誰の、どういう責任によるものなのか、どこから何を教訓として導き出すべきか、ということについて、マニフェスト、政治主導、経済と財政、外交・安保、子ども手当、政権・党運営、選挙戦略と多角的に分析している。各章で執筆者は異なるが、いずれも民主党関係者のヒアリング結果も活用しながら、感情的にならずに、民主党政権の功罪が冷静かつ客観的に検証されており、今後の日本政治を考えるうえでも有益な内容だと思われる。
    本書では様々な「失敗」の要因が指摘されているが、そのなかでも以下の5点が重要だと感じた。1点目は、国家戦略局の設置など、政治主導を実現するための主要な制度改正が後回しになって実現できず、政治主導が政治家の個人的資質に依存する属人的なものになってしまったことである。2点目は、民主党政権には日米同盟の資産を削ることへの同意はあっても、他の積極的な外交政策を展開させる能力が欠けていたことである。3点目は、子ども手当をはじめとして、党内での理念の共有が十分にされていなかったということである。4点目は、民主党議員が、「みんながリーダーになろうとし、誰もフォロワーになろうとしない学級委員体質」であったことが、組織マネジメントにとって致命的な欠陥になったことである。5点目が、政権運営に不可欠である「実務と細部」の欠如である。また、本書で指摘されているマニフェストの内在的な矛盾も、民主党政権の蹉跌の構造的な要因であったであろう。
    一方で、民主党政権には、予算編成プロセス改革としての「事業仕分け」や社会構想としての「子ども手当」など日本政治をよりよくする可能性を持つ芽が生まれたことも確かだと思う。現在は民主党政権時代のことはばっさり否定されるような風潮を感じるが、本書で示されているような民主党政権の功罪を教訓として、今後の日本政治に前向きに活かしていくべきだろう。

  • 戦後日本政治史における初めての本格的政権交代は、自民党の復権というよりも、民主党の自滅という形で3年3カ月で幕を閉じた。果たして、何が問題だったのか、民主党員へのアンケートや書籍などを通じて、その原因と内部で行われたことを丹念に新書にまとめている本。

    内容は、それぞれ頓挫した、マニフェスト、政治主導、経済と財政、外交・安保、子ども手当、政権・党運営、選挙対策、政権担当能力を磨け の7章と序・終章の10章を分担執筆している。どれも肩入れすることなく冷静に分析していると感じた。

     アベノミクス解散として、衆議院は2年で安倍首相は解散させたが、民主党の自滅を本書で学ぶとともに今の自民党にもより厳しい目をもって、有権者としての責任をこれから果たしたいと思った。

  • 失敗の原因について辛辣に指摘しているが、評価すべき点も挙げてあるところはよい。公平な視点で見ていると思う。

    民主党内部のアンケート、および外部についてのデータを元にして展開されており、納得感がある。

    こうすればよかった、もしくは選挙の負け具合を最小限にできた、という点があるともっとよかった。

  • 題目の通り、民主党政権を各分野ごとに検証する一冊。
    資料、インタビュー、アンケート結果が豊富で分かりやすく、
    どこに失敗の要因があったのかを垣間見ることができる。
    これらの要因を解決することは用意ではないが、
    頑張ってもらいたい。
    と同時に、同じ失敗を繰り返させぬよう、
    我々自身も目を養う必要を感じた。

  • 民主党政権の検証は批判一辺倒のものが多いなか、冷静に分析されていたので好感をもった。
    特に小沢一郎氏と民主党の関係、小沢氏ならばマニフェストは実現できたのか、などの項目は興味深く読んだ。
    一人のヒーロー、一党による救済に期待せずに有権者が政治を育てなければ民主主義の終わりはすぐそこに来ていることを感じさせられた一冊。

  • 民主党政権が何故失敗に終わってしまったかを様々な分野や政策(福祉、外交、経済・財政etc)ごとにまとめた本。
    実力のある執筆陣がそれぞれの章を担当しており、非常に良くまとまっている。このような失敗の理由を検証する本が出てくること自体、今後の日本政治のためになると思う(そして、何よりも有権者のためにも)。

  •  会社の近くの図書館の「本日返却された本」の棚でたまたま目に付いたので読んでみました。
     本書を取りまとめた「日本再建イニシアティブ」は船橋洋一が理事長のシンクタンクで、福島第一原子力発電所事故に関し、民間人の立場から事故の検証を行った「民間事故調」の母体として有名です。
     「第1章 マニフェスト」「第2章 政治主導」「第3章 経済と財政」「第4章 外交・安保」「第5章 子ども手当」「第6章 政権・党運営」「第7章 選挙戦略」、それぞれの章をテーマに見合った研究者が担当し、3年3ヵ月の民主党政権の失政の原因を明らかにしていきます。民主党議員へのアンケート結果も踏まえた実証的な分析はなかなか興味深いものがあります。

日本再建イニシアティブの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×