旧約聖書の謎 - 隠されたメッセージ (中公新書 2261)

著者 :
  • 中央公論新社
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感想 : 19
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  • Amazon.co.jp ・本 (233ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121022615

作品紹介・あらすじ

「天地創造」をはじめとして、旧約聖書に描かれた物語は現在、その多くが神話と見なされている。だが、他方で「バビロン捕囚」のように、世界史の教科書で史実として扱われているものもある。本書では「ノアの方舟と洪水伝説」「出エジプト」「ダビデとゴリアトの一騎打ち」など七つの物語を取り上げ、その史実性を学問的に検証。物語に込められたメッセージをも読み解き、聖書が秘めた豊かな世界へと読者をいざなう。

感想・レビュー・書評

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  • 歴史研究はパズルのピースを合わせていくようなものだ。多少の違和感がありながらも、ピースが収まれば、それが通説(教科書に載る歴史)になっていく。聖書にある出来事が事実か否かを探る内容だが、誰もが『歴史』として学んだモーセの出エジプトもいずれ真実としては変わっていくのだろうか。
    調査技術が進歩して、年代の特定精度が高まっていく中、今後も新たな歴史として作られていくのだろうか。否、歴史は歴史、過去は変わらないはずだ。
    わからない未来への恐怖は拭えないが、判りすぎる過去も自分はあまり望まない。当時に生きた人々に取って真実は一つ。無かった、という事実も一つの答え。真実を知りたい!という、燃え盛る探究心が、科学技術の進歩で消えないことを望む。

    後半のヨナ書の項、『読む際に、ジャンルを決め打って読んでいる』という指摘には、自身を振り返り何でも知識・経験で考えてしまう頭のクセを改めなければと感じた。
    頭を平らにし、文字、表現、構成が伝えようとするメッセージを感じ取りたい。

  • 自分はどちらかというと原理主義的キリスト教信仰教育を受けてきた者だが、ある程度の年齢となりそれなりの人生経験を積んでくると、過去に信じていた内容を否定するものであっても、自分なりに冷静に、そして今まで蓄えてきた知識を持って論理的な判断を下す事ができる様になる。

    この本では、旧約聖書に記されている内容が、必ずしも全て聖書に書かれてある通りの歴史的事実であるとは言えないという事を、資料を検証しながら展開してゆく。歴史的事実と信仰とを変に同一視せず、かと言って聖書に記されている内容の歴史的意味をきちんと理解している所にも好感が持てる。

  • 聖書のイメージを一新してくれる本だった

  • ☆「聖書考古学」の続編。まあ、わりとおもしろい。筆者は、虚構や誇張の背後に隠されたメッセージがあるという。

  • 『聖書考古学』の姉妹編ということで、前編で取り上げられたものを含め、旧約聖書の物語の史実性を検討している。やはり、面白い。そもそも聖書は正確に史実を記すための書物ではないということもなるほどと思わせられた。

  • 読みかけではあるが、今現在キリスト教に興味がない時期なのでこのまましばらく塩漬け(笑)

  • 楔形文字は、非セム語のシュメール語のためのものだったが、古代セム系民族はこれらの文字を採用した。代表的な言語はアッカド語
    シュメル語の洪水伝説、ギルガメシュ、アトラハシースの3つが洪水伝説として有名
    メギドでギルガメシュ叙事詩の粘土板断片が発見

    上エジプトのベニハサンには、紀元前19世紀のへきががあり、そこにはセム系遊牧民がアビシャルという名前の指導者に率いられて連れてこられるシーンが描かれている

    古代エジプト王朝は自分が負けた記録は残さないことで有名

    もしこうしたらこうなる、という条件法はハンムラビ法典など幾つかあるが、十戒にあるような、父母を敬え、殺すなという人類全体に対する絶対法は他に類がない

    1920年代に起こったとされるエリコ近辺でのヨルダン川せき止めは、たぶん虚偽

    何れにしても、エリコには城壁はなかった
    今ヨシュア記の制服記録とアッシリアの征服記録の類似性に学者たちが注目している

    ダビデ以外にもゴリアテを倒した人物がいる エルハナン しかし歴代では修正

    列王第一20:24の長官という言葉はペルシャ時代

    ヨナの時代はまだニネベは栄えていなかった
    ヨナ3:4の滅びるというヘブライ語には、転覆すると変化するという二つの意味があり、変化なら良い変化もあるので何れにしても成就する

  • 旧約聖書を考古学と歴史学から、史実なのか神話なのかを問う。
    勝手に「全部神話だろ」と思っていた。でも「出エジプト」って世界史で習ったような。てことは、それは史実?
    旧約聖書って日本の古事記みたいな存在なのかも。歴史的事実を伝えることが第一義なのではない。けど、なぜそのエピソードが伝えられてきたのかを考えることがとっても大切なんだ。

  • 20150906-0918  前著『聖書考古学』の続編?
    旧約聖書に書かれている出来事を考古学的アプローチを使って実際に起きた出来事なのか、年代の同定、人物の特定等を行っている。そもそも旧約聖書の年代なんて、私は正確なはずがないと思っているのだけど、大真面目に信じている人たちもいるのね・・・

  • 聖書って読んだことないんだけど、いろんなことが書いてあるんだね。

  • 著者の前作『聖書考古学』に引き続き、旧約聖書に書かれているエピソード史実性を調査するという内容。

    私はそもそも旧約聖書を読んだことがないけど、そういう読者にもわかるようにそのエピソード自体も解説してくれるのでとても読みやすい。

    旧約聖書自体を勉強しながら読むこともできて面白かった。

    Memo:
    エリコの征服とは:出エジプトを果たしたモーセの後継者ヨシュアが、パレスチナという約束の地へ入る際の快進撃の最初の戦い

  • 8月新着

  • 前半は面白いのだが、中盤以降は間延び。
    学者としての良心からか、意見表明がなされず(厳密に言えば明確な結論が出ないというのが意見表明だと思うが。)、ダラダラつき合わされた感じ。
    聖書学に多少なりとも通じていれば、興奮できたのかなぁ?

  • 長谷川修一『旧約聖書の謎 隠されたメッセージ』中公新書、読了。旧約聖書に記された物語は神話として扱われるものもあれば、史実のそれも混在する。本書は7つの物語を取り上げ、その史実性を学問的に検証する。語られるメッセージを読み解き、聖書の豊かな世界を案内する好著。『聖書考古学』続編。


    本書が取り上げるのは、ノアの方舟と洪水伝説、出エジプト、エリコの征服、ダビデとゴリアテの一騎打ち、シシャクの遠征、アフェクの戦い、ヨナ書と大魚。ちなみに古代イスラエル史研究から「出エジプトは聖書の描写そのままの事件ではなかっただろう」。

    ただし高校世界史の教科書には出エジプトは史実として記載されている。ユダヤ・キリスト教徒の多い国の教科書であればさもありなんだが、日本の場合、研究動向が教科書執筆者に十分知られてないだけでなく、その研究が日本の歴史学界から遊離もしているのだろう、と。

    著者は、史実性の検証によって物語のメッセージを読みとること、正典化されるまえの複数の存在とその一本化への経緯を理解することこそ、霊感的充実主義でも科学主義を装い突き放すことでもない、人間理解になるのではと指摘するが、これは旧約聖書だけに限定される問題ではない。学問としてテクストを読むということが、真性な人間理解につながるということは、どの分野においてもはずすことの出来ない観点か。

  • 勉強になりました。

  • 前年に発行された同じ著者の「聖書考古学入門」の姉妹編ともいうべき本で、考古学の基本を解説した後、旧約聖書の7つのエピソードについて、考古学的に解説している。

    考古学の基本も簡単ではあるが一番大切なことを解説しており、そのうえで数字をどのように読むのか等考古学的手法の解説が述べられており、結論というよりもこのようにも考えられるという学説の紹介で終えていることが多い。考古学も進歩しているので、数年たったら、どのような発見があって進歩したのか読んでみたいと思った。

    また中公新書の分類によると、聖書考古学は世界史、本書は宗教に分類されていた。個人的には同じ分類がよいような気がするのですが。目次から、ノアの方舟と洪水、出エジプト、エリコの征服、ダビデとゴリアトの一騎打ち、シシャクの遠征、アフェクの戦い、ヨナ書、

  • 旧約聖書の「ノアの方舟」「出エジプト」「エリコの壁」「ダビデとコリアテ」「シシャクの遠征」「アフェタの戦い」「ヨナ」、7つのエピソードについて考古学・歴史学的考察を加えた本。大変興味深いとともに、最後に記される聖書の文化的価値についても考えさせられる好著。

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著者プロフィール

1971年生まれ。立教大学文学部教授。筑波大学大学院博士課程単位取得退学。テル・アヴィヴ大学(イスラエル)大学院ユダヤ史学科博士課程修了。専門はオリエント史、旧約学、西アジア考古学。 主著に『聖書考古学』『旧約聖書の謎』(中公新書)、『ヴィジュアルBOOK 旧約聖書の世界と時代』(日本キリスト教団出版局)、『歴史学者と読む高校世界史』(共編著、勁草書房)、『謎解き 聖書物語』(筑摩書房)など。

「2020年 『旧約聖書 〈戦い〉の書物』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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