天災から日本史を読みなおす - 先人に学ぶ防災 (中公新書 2295)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121022950

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  • 地震、津波、高潮、土砂崩れと、多くの災害に見舞われてきた日本には、その克明な記録が残されている。古文書を紐解けば、過去の災害がどのような規模だったか、同じ被害を繰り返さないために何に注意すればよいのか、多くの示唆が得られる。

    地震や津波、富士山の噴火では前兆と考えられる現象が観測されていた。地名や神社の場所には、過去の災害の刻印が隠されていた。悲劇を生き延びた人々が残した戒めが、後の世の人々を救った例も多い。近世の災害や東日本大震災での事例も含め、今後も災害と向き合っていかなければならない日本人が、覚えておくべき多くの教訓が残されている。

  • 歴史家の立場で、著者や専門家に発見された歴史学から裏付けされた地震などの前兆・天災による罹災状況を著述し、防災知識として昇華したエッセイ。
    読者一人ひとりに語りかけ、被災しても、必ず生存して欲しいという著者の願いが詰まっている。
    地震、高潮、津波、富士山噴火など中身が、充実し、防災のための知識として、この作品を、1冊目としていいのではと断言してもいいと思う。

  • 冒頭、秀吉と二度の天災の章がおもしろかった。こういう発見を探すのが歴史学者なのだと今後ももっと伝え続けてほしい。未来の素敵な学者ががもっと増えそう。
    最後の東北地震の章は、編集者の意図なのか著者が本心から入れたかった話なのかわからないけれど、ちょっと蛇足感があった気がする。おわりにでサラリと話すのみでもよかったのでは的な、微妙な違和感が。

  • 過去の文献から、地震、噴火、台風の日本各地での状況を特に過去マックスの被害を受けた可能性のある場所、状況を考え今後の防災への呼びかけを訴える。
    地震では南海トラフは150年程度のスパンで起こっており、あと20年の猶予はあるかと著者は考えている。また、富士山噴火は、大地震と前後することがほとんどであり、火山灰の影響は数週間は出て、目がやられる。津波は、想定していたものより過去の最大の高さは大きい。台風や貯水池の崩壊による水害は各所忘れたことろには弱い場所に家が建っており被害を大きくしがちである。

  • 磯田道史さん 最高!歴史好きにはたまりません。忍者ものをもっと書いてほしい。

  • 天災と日本史の関わりについてわかりやすく解説されている。
    非常に読みやすい。
    人間同士の関係性についつい目が向きがちだが、歴史を学ぶときにはその時代の自然環境・気候なども含めて理解することが必要だということに気づかされる。

  • 古文書読みはこんな分野にも。

  • 「歴史学は生きている。我々の命をも守りうる現代に必要な学問である。」筆者の強い信念の元書かれた本書は防災史に残る名著であろう。

    歴史研究は決して過去のものではない。現代の目から過去を見つめることにより、未来に活かしていく学問。そんな筆者の考えが本書から伝わってくる作品。

    地震や火山活動には周期がある。人の一世としては短くとも地球から見ればあまりに短い。何千年、何万年のサイクルで見ると、繰り返される大きな地殻変動がある。東日本大震災でも津波が由緒ある神社の鳥居の手前でピタリと止まる場面が多くの場所で見られたという。それもそのはず、過去の人々は苦い経験を基に新たな集落を築き神を祀る、それが長い年月の間に忘れられてきた歴史を繰り返している。そんな実例を筆者は多くの土地を取材し実例を挙げていく。

    本書は2013年から2014年の新聞連載。当然、東日本大震災の記述が多い。古文書を紐解くと過去にも同様な災害が起こっている例の実に多いこと。人はまだ過去から学び続ける必要がある。

    本書の後書き、筆者は3つの危機を記す。第一は地震津波など地学的危機。第二は風水害、高潮、土砂崩れなど気象学的危機。そして
    「第三に、世界の人的交流の進展やテロの可能性が高まり、抗生物質耐性菌・インフルエンザ・出血熱などの感染症学的的危機も高まってきている。第三の医療・健康・感染症対策については、ここでは述べることができなかった。」

    筆者の予想は残念ながら的中し、世界は新型コロナウイルスによる感染と未曾有の経済不況に不況に見舞われている。

    本書刊行より後の話だが、筆者は今スペイン風邪その他過去の感染症の古文書を読み解き先人たちの苦闘と克服の過程を各種メディアに提供している。歴史学のあるべき姿を実践する姿勢には感銘を受ける。今後のさらなる活躍に期待しつつ、この本を多くの方に読んでいただきたいと思う。
    素晴らしい一冊でした。

  • 最近は毎年災害が発生しています。
    しかし昔の自然災害による被害は現代とは比べ
    ものにならなかったでしょう。

    そしてそれらは、その後の歴史に大きく影響を
    与えたと推測されます。

    一方で被災に遭った先人たちはその教訓を後世
    に伝えようともしたはずです。

    東日本大震災では震災遺構を残すべきか、それ
    とも「真っさら」にして「無かったこと」に
    してしまうかの議論はニュース等で見た方も
    多いと思います。

    この本は私的な悲しみを乗り越え、公的な使命
    を全うした先人に防災を学ぶ一冊です。

  • 歴史的考察の納得で、すばらしかった

著者プロフィール

磯田道史
1970年、岡山県生まれ。慶應義塾大学大学院文学研究科博士課程修了。博士(史学)。茨城大学准教授、静岡文化芸術大学教授などを経て、2016年4月より国際日本文化研究センター准教授。『武士の家計簿』(新潮新書、新潮ドキュメント賞受賞)、『無私の日本人』(文春文庫)、『天災から日本史を読みなおす』(中公新書、日本エッセイストクラブ賞受賞)など著書多数。

「2022年 『日本史を暴く』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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