人口減少時代の土地問題 - 「所有者不明化」と相続、空き家、制度のゆくえ (中公新書 2446)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (191ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121024466

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  • 空き家問題から派生して、この本。
    空き家対策の解決が難しい理由の一つとして、日本における登記制度の不完全さがあるのです。
    それは、日本における不動産所有権の登記は効力要件ではなく対抗要件にすぎないことから、相続時における名義変更が義務ではないこと。
    そんなことから、50年以上名義が変更されておらず、登記簿上の所有者がこの世にいないということは珍しくありません。

    また、自分がそういった土地を相続されていること自体を知らなかったり、自治体の固定資産税事務の担当者も、不在地主の相続人を探すことに費用と時間がかかってしまいます。
    そしてこの問題は、解決の糸口がないままどんどん拡大していってしまうのです・・・

    この本で言いたいことは「第4章 解決の糸口はあるのか」でまとめられているので、そこを読むだけで本書の意図は伝わります。
    自治体アンケートの結果は、その基本知識に厚みを持たせるためのもの、という位置づけでしょうか。

    ワクワクするような話題ではありませんが、こんな問題が日本に残ったままでは、地方創生の足かせになることは自明であると感じました。

  • 東京財団の研究員による所有者不明土地等、現在の土地の管理に関する問題について述べた本。国による不動産登記制度に問題があるため所有者の管理が不完全となっており、納税、災害対策、再開発等の行政や事業に不具合が生じている。しかしながら、個人の利益や権利とも大きく関係するため誰も改革しようとしないことが、最大の問題点であることがよくわかった。
    「固定資産税は、市町村税収の約4割を占めている」p52
    「(アンケート結果)土地の納税義務者数に占める死亡者課税の人数比率は、6.5%。約200万人と推定される。免税点未満も含めると7.4%、280万人」p63
    「公共事業目的以外で土地の寄付を受け付ける自治体はないことがわかった」p83
    「(受け取らない土地事例)「公的利用が見込めない」「個人の都合によるため」「権利関係に問題あり」「維持管理が負担になる」「原則として受け取らない」」p85
    「(地籍調査のまとめ)国土管理の基本情報で「地籍図」と呼ぶ。不動産登記法第14条1項に基づくため「14条地図」とも呼ばれる」p95
    「(地籍調査進捗率(2016年))全国52%、京都8%、三重9%、東京23%、大阪10%。沖縄、佐賀は99%」p96
    「(2010年4月1日現在)全国法務局に備え付けられている図面は約681万枚。うち284万枚は「地図に準ずる図面(多くは戦前の土地台帳の付属図で、明治時代に作成された和紙に毛筆で書かれたものもある)」」p98
    「(筆界未定)合意が取り付けられていない土地の界で、地番が「+(プラス)」記号で表示され「筆界未定地」と記載される。筆界未定地は分筆できないため、不動産物件としての価値が下がる」p102
    「売り手と買い手が合意すれば、測量をせずに公図の面積でも売買は成立する。売買契約書には「公簿面積とする」と記載」p105
    「土地売買は、農地以外は売買規則はない。農地については、農地法に定めがあり、所有権の移転に当たっては事前に農業委員会の承認が必要」p121
    「市街化区域と市街化調整区域は、それぞれ国土面積の4%と10%にすぎない」p123
    「利用の見込みがなく、買い手もつかない土地は、手放そうにも「行き場がない」のだ」p155
    「(土地の所有者等の情報)不動産登記簿、固定資産課税台帳、農地台帳、さらに国土利用計画法にもとづく売買届出などによって把握されている。しかし、台帳間の情報連携はない」p166

  • 空き家問題に興味を持っていたので手に取った。主に不動産登記にかかわる「所有者不明」問題について、制度的、構造的、歴史的な視野を踏まえた問題提起、また全国888自治体への調査で事態の切迫さを織り込みながら、漸進的で現実的な解を模索する。200頁弱とは思えない内容の充実さにおどろき、そしてその問題の重さに身をつまされた。必読。

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