科学技術の現代史-システム、リスク、イノベーション (中公新書 (2547))

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (248ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121025470

作品紹介・あらすじ

第2次世界大戦後、科学技術の力は増大する。その原動力は豊富な資金を持つ国家、特に米国だった。インターネットが生まれ、遺伝子操作が可能になり、原子力や人工衛星の利用が広がる。一方でリスクは巨大化・複雑化した。21世紀に入り、AIやバイオテクノロジーが驚異的な展開を見せ、中国や民間企業による”暴走”が懸念されるなか、世界は今後どうなっていくのか――。科学技術の”進化”の歴史と未来への展望を描く。

感想・レビュー・書評

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  • 近代の科学技術の発展の歴史を振り返る一冊。
    国家が膨大な人員と資金を集めることで科学技術の分野で大きな飛躍があった歴史がわかる。先進国が戦争を盛んに行なっていたころ、国家は膨大な資金と当時の叡智をかき集め、科学技術を軍事目的に活用している。その産物が現在の科学技術発展にも貢献している。そして、その鍵を握るのがアメリカ合衆国。この国の政府の方針がどの分野に集中して資金を投下するのかで、進歩の方向性も変わるということになる。
    例えば宇宙開発では、当時の大統領ケネディが月に人類を送ると決断し、実行したことで大きく発展を遂げた。その後宇宙開発が右肩上がりに進展したわけではない。不幸なスペースシャトルの事故や、政府が予算を削減することで宇宙ステーションの運用もトーンダウンする。
    2024年現在は、先の見えにくい時代で、基礎研究の分野も多様なため、集中した資金投入がしにくくなってきているのかもしれない。大きなブレークスルーが起きにくい中、国単位での発想ではなく、地球単位で知識と資金を集中して投下するような仕組みがだんだんと必要になってくるような気がした。

  • 軍事・外交面、社会・内政面、経済・産業面…と切り口を変えつつも、時系列が行ったり来たりしないように配慮された構成になっているので、混乱せずに読み進められた。現代史と言いつつほぼ米国史なのは、これが現実だからか。だもんで意外に歴代大統領の政策史…な趣も多分にあり。
    現代の科学者は象牙の塔の住人を決め込んではいられない、お疲れ様ですー。

  • 序章 現代科学技術と国家/第1章 システムの巨大化・複雑化ー東西冷戦と軍産複合体/第2章 崩れる権威、新たな潮流ーデタント後の米国社会/第3章 産業競争力強化の時代へー産学官連携と特許重視政策/第4章 グローバル化とネットワーク化ー冷戦終結後/第5章 リスク・社会・エビデンスー財政再建とデータ志向/第6章 イノベーションか、退場かー21世紀、先進国の危機意識/終章 予測困難な時代へ

  • 【信州大学附属図書館の所蔵はこちらです】
    https://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB28371564

  • 新卒以来ずっと科学技術関係の仕事に携わっているのでとても面白かった。第3章で触れられている利益相反,第6章はまさに今直面していたりする内容ばかり(大学の研究現場の抱える悩み(資金獲得の激化),イノベーション信奉…)。研究機関勤務の人(特に事務系)の教科書となるべき本かもしれない。

  • パワーポイントを並べたような感じで、読みにくい。

  • 序章 現代科学技術と国家
    第1章 システムの巨大化・複雑化―東西冷戦と軍産複合体
    第2章 崩れる権威、新たな潮流―デタント後の米国社会
    第3章 産業競争力強化の時代へ―産学官連携と特許重視政策
    第4章 グローバル化とネットワーク化―冷戦終結後
    第5章 リスク・社会・エビデンス―財政再建とデータ志向
    第6章 イノベーションか、退場か―21世紀、先進国の危機意識
    終章 予測困難な時代へ

    著者:佐藤靖(1972-、新潟市、科学史)

  • 第二次世界大戦からの現代科学技術史について。それはすなわち米国の科学技術史であり、冷戦終結後の米国一極体制とその後の米国、特に軍需の相対的力学低下による技術主導のグローバル&民間シフトが語られる。一方でレイチェルカーソン『沈黙の春』など、科学技術が招いた負の側面も取り上げている点がユニーク。

    1991年以前は冷戦構造を基盤とした原子力・宇宙・コンピュータ領域における垂直統合型の複雑怪奇な体制だったものが、前提が崩れたのちモジュール的水平分散型に変遷し生命科学分野などに展開していったことは大変興味深い。いまや原子力は忌避され、宇宙はSpaceXなど民間企業が主導し、コンピュータはAI含め中印が台頭している。

    時代がどう進むか歴史から学ぶための教養として読むことをおすすめしたい。

  • 現代史とは科学技術の歴史であるってことがよくわかった。とりわけ現代に近づくにつれて、紹介される技術が具体的にどんなものなのかわからなくなるのがやばい...。勉強しないと。

    203-4頁
    「個別の技術の成立・展開の過程をみると、技術は社会的に構成されているようにみえる。しかし大きな時間的・空間的スケールでみると、技術は自律的に進化し社会を駆動しているように見える。(...)
    しかし複雑な社会的環境のなかで人間が自らの意思で作り上げる個々の科学技術が、なぜマクロな視点では自律性を獲得するようにみえるのか。この点に関する定説はまだない。だが、一つの有力な説明は恒常的な軍事・経済面の競争が科学技術を科学技術を一定の方向に向かわせているというものである。」

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著者プロフィール

新潟大学人文社会科学系教授、科学技術振興機構研究開発戦略センター特任フェロー。
1972年生まれ。東京大学工学部航空宇宙工学科卒、ペンシルバニア大学にてPh.D.を取得。主な著書は『NASAを築いた人と技術』(出版会、2007年、2019年増補版)ほか。

「2024年 『EBPMの組織とプロセス』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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