暗殺の幕末維新史-桜田門外の変から大久保利通暗殺まで (中公新書 2617)
- 中央公論新社 (2020年11月20日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121026170
作品紹介・あらすじ
明治維新は近代日本の原点とされる。だが、日本史上、これほど暗殺が頻発した時期はない。尊攘論の洗礼を受けた者たちはなぜ暗殺に走ったのか。大老井伊直弼暗殺から内務卿大久保利通に至る国家の首班、外国人、坂本龍馬なのど“志士”、さらには市井の人々が次々に標的となる…。事件のリアルな実相と世間の反応を描くとともに、後世、一方で暗殺者を顕彰し、もう一方で忌避した明治国家の対応を詳述。闇から見つめる幕末維新史。
感想・レビュー・書評
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ペリ-提督の黒船来航から「明治」と改元される十数年間に百件を超す暗殺事件(政治的テロ)が頻発した。 桜田門外で主君を護ろうとして闘死した井伊側八名は忠臣として顕彰され、無傷で藩邸に帰った七名は絶家、斬に処された。坂本竜馬と中岡慎太郎は、明治12年に靖国合祀された。長州の大村益次郎は、故郷に大村神社が創建、明治11年に靖国神社に銅像建立。大久保利通暗殺の首謀者島田一郎は、藩閥政治に抵抗した政党政治の先駆者して浅草本願寺の「憲政碑」に合祀など、暗殺事件後の様々な処遇に目を奪われる血生臭い幕末維新の暗黒史。
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戦争は暴力そのものなのだ。実は政府が入れ替わる明治維新期は、歴史的に最も暗殺が行われた時代であるそうだ。本書は、そうした暗殺事件を多数取り上げて、それぞれの暗殺の理由というところに特化して語る一冊である。
ぼくには維新期の暗殺者ということで言えば、映画や大河ドラマで勝新太郎や萩原健一の演じた「人斬り」岡田以蔵のイメージが強く、彼の処刑シーンはどちらでも印象深かった記憶が残る。だが、人斬り以蔵にせよ、人斬り新兵衛にせよ、捕縛されるまでになかなか捕まらぬプロの殺し屋であったことは今更ながら異例に近いようにすら思える。
むしろ複数思想犯による斬殺とそのあとに目立つ場所に晒される首級、そして暗殺者たちも刑場の露となって消えてゆくことが、維新の暗殺史のスタンダードのようである。殺せば処刑されるのだ。
しかし、中には、生き残る殺人者もいて、それらが実は明治政府の中心人物であるばかりか、日本国首相として生き延びてゆく者すらいる。また首相ですら、また凶刃に倒れたりする、というテロまたテロという世界がこの時代の狂気の強さを表していて驚かされる。
暴力でしか解決できないサムライ、剣の文化であった。外国人を襲撃するという攘夷行動も目立つが、それらが国際戦争に直結しなかったのは今更ながらあまりにも幸運であったとしか思えない。それだけ各国の日本との交易の旨み、反して国際情勢の緊張が東アジアを席捲していたに違いない。
背筋が凍るのを通り越して、胃の具合が悪くなりそうなほど残酷な、山のように連続する暗殺行動、それらを次々と記録した本書を通して、日本の、否、世界の人間の未来に警鐘を響かせたくなる、まさに心が寒くなるような、それでいて読むべき一冊なのであった。 -
面白いし、大変勉強になったのでニ度三度読み返しそう。幕末の敵味方の思想の変遷は不勉強でまだまだ理解が難しいところがありますが、個人的には幕府側に同情的な見方になってしまいます。薩摩・長州はあまり好きになれないなぁ。
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正義と不正義が、国の方針とか声の多さに寄る世の中を現していた。暗殺された人の中にも後に位を貰った人とか靖国に弔われた人とか、まさに時の権力が後ろにいた、底知れない怖さを感じた。
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【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/803373 -
日本は、暗殺の歴史でいっぱいである。特に幕末は、歴史そのものが暗殺、襲撃の歴史である。日頃から刀を差しているということは、武士は、軍人だから常に戦いの為に生きているということだけど、意見が違うと言うだけで、問答無用というのはどうか。その上に成り立った薩長政府ひいては、明治政府の成り立ちは、かなり無理があったのでは。その無理が現代でも続いていないか。
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幕末と明治維新を暗殺という観点からまとめている。
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お侍様たちは野蛮ですなあ。
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とても興味深く読めた。
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暗殺を羅列では無くて時系列に並べてみせた面白い趣向の読み物。意外に面白かった。
この方、文章が上手。
別の時代の暗殺の歴史とか書いても面白いのでは?