国鉄―「日本最大の企業」の栄光と崩壊 (中公新書 2714)

著者 :
  • 中央公論新社
4.22
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本棚登録 : 301
感想 : 39
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121027146

作品紹介・あらすじ

1949年に設立された公共企業体・国鉄は、復興半ばの不十分な設備で旅客・貨物を一手に運び、戦後の高度経済成長を支えた。まさに、「鉄道は国家なり」であった。しかし交通手段の多様化によりシェアは低下、自立的な経営もままならず、赤字は雪だるま式に増え、労使関係も悪化、1987年に分割民営化された。少子化、コロナ禍のいま、鉄道は再び危機に瀕している。国鉄の歴史に何を学ぶべきか、元JR九州社長が語る。

感想・レビュー・書評

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  • 大変マニアックかつ熱量のある本(特にディーゼル機関車)。JR北海道のまずさが伝わってくる。

  • 鉄道開業150年というタイミングで刊行されたこともあって、ややミーハー気分で購入した書であったが、ずっしりと読み応えのある内容であった。

    新幹線物流の可能性に賭ける思いが良く伝わった。

  • 国鉄について、民営化に至った経緯、抱えていた問題点について、様々な視点からまとめられた内容でした

    更に途中、著者が関わったディーゼル機関車開発の逸話も、私自身がエンジニアということもあり、かなり興味深い内容でした

    物心ついた時が丁度JR発足間もない頃だったこともあり、国鉄の印象はほとんど無い状態でしたが、まさかこんなに桁違いな問題点をたくさん抱えていたとは思いもしませんでした

    現在のJRの姿から考えると想像できません

    また、最後の方には未来への提言についてもまとめられていました。ものすごくグローバルで長期的な視線で考察されている内容でとても面白かったです

    人口減少にIT化、DX化に向けて、旅客中心から貨物輸送中心へ転換を測ることが重要であること、そうすることで、環境対策にもつながると言うことが書かれておりとても興味深く、未来に向けた視野も広がった気がします

  • JRの前身「国鉄」の栄枯盛衰を、元JR九州社長であった著者が様々な切り口から述べている1冊。
    中でも興味深かったのは、車両開発の部分です。著者は技術者としてディーゼル車(気動車)の開発に長く関わってきました。蒸気機関車をリプレースする無煙化を進める中、国鉄時代の名車ともいえる特急用キハ81系、急行用キハ58系、牽引用のDD51型などの開発に関する記述は、開発に携わった人ならではという印象でした。
    「国鉄」は巨額の赤字を抱えてしまうわけですが、その原因としては1)運賃改定は国会での議決が必要であった、2)国策として赤字を承知の上でローカル線の建設を進めた、等々民間企業であれば普通に経営判断できる根本的なことの決定権がなく、その代わりにコストは国が負担するという”親方日の丸”枠組みの構造的な問題点があったことを指摘しています。
    鉄道貨物の問題にも触れていて、国鉄の貨物輸送は石炭輸送から始まり、競合する輸送手段もなく「荷物を運んでやる」ぐらいの殿様商売であった感覚が石炭輸送が斜陽化した時点でも抜けきれなかったことが赤字を膨らませた、等の事情も紹介されていました。
    JR各社の今後の展望にも触れられており、少子化、コロナ禍による社会構造の変化に直面し、旅客輸送にことさら頼りがちであった日本の鉄道の在り方を、より貨物輸送にウエイトを置いた運用へシフトすべきと提案しています。CO2削減や、ドライバー不足などの諸問題の解決策として、新幹線を利用しての本格的な貨物輸送の可能性に触れ、是非進めるべきと提言していました。
    今年は日本の鉄道が開設されて150年の節目ということで、多くの書物も出版されているようです。本書は単なる鉄道オタクモノではなく、労使問題や技術開発、近代史など多くの側面から「国鉄」を再検証しており、読み手の興味によっては読みづらい部分もあったりしますが、全体としてはさすが中公新書だけあって情報量はかなりの物でした。

  • 書店で見掛けて興味を覚え、入手して紐解き始めた。本書の各章を実に興味深く読み進めた。出逢って善かったと思える一冊だ。
    「国鉄」というモノが「分割民営化」で「JR」になってから既に三十数年なので、「全然知らない…」という人達の世代も広くなっていると思う。が、「国鉄」は日本国内で非常に大きな存在感を示していて、後にも先にも「日本最大の企業」であったと考えられる。そしてその「国鉄」には、栄枯盛衰の様々な経過が在った。
    本書では実に広範な話題について、非常に興味深く綴られている。
    「国鉄」という略称でよく知られる「日本国有鉄道」という“公社”の体制が登場する以前の、昭和10年代の戦時体制下の色々な要因で疲弊した鉄道の様から、草創期の「国鉄」の状況等に関する話題が在った。
    東海道新幹線が実現して行った経過、その大きな“達成”と、裏側で生じていた“問題”という話題が在った。
    蒸気機関車が退場して行くことになる中でのディーゼル機関車やディーゼルカーの開発に纏わるような話題が在った。
    「国鉄」の現場の様子、労使関係、複数在った“労使交渉”の主体になっていた組合、労使の対立ということに留まらず組合間の対立も存在していたというような話題が在った。
    貨物輸送に関して、国内の輸送需要の中で圧倒的な部分を占めていた時代の後、ドンドンと占める部分が小さくなってしまって行ったというような話題が在った。
    「国鉄」の部内に見受けられた様々な問題と、経営再建の難航、「分割民営化」への経過というような話題が在った。
    「分割民営化」の後に登場したJRに関すること、更に昨今のJRの状況やという話題が在って、加えて鉄道の未来に関する提言も在った。
    大雑把に振り返って、これだけの豊富な話題で、実に読み応えが在った。
    著者は、所謂“キャリア”として国鉄に入社し、技術者として車輌開発に携わり、やがて様々な現場の管理職を務めるようになって行ったという方だ。国鉄の最末期には、首都圏本部長を務めていたが、部内の事情によって九州総局長に異動し、JR九州の準備に携わった。そしてJR九州の初代社長を務めたという。
    こういうような著者で、鉄道の歴史に纏わる著作や、鉄道に関連する提言等も多くしている方であるという。本書に関しては「現場での様々な見聞や経験が在る者のみが語り得る…」というような内容も多く交っていて、実に興味深かった。
    そして本書では、「国鉄」が「巨大に過ぎる硬直化した機構」であるが故に、色々と不具合が生じ、不具合を修正し悪くなり、現場の荒廃というような情況も見受けられた旨が語られる。こういうことを通じて「1940年代後半から最近までの我が国の社会?」という問題提起もしているかもしれないと思いながら読み進めていた。
    鉄道の未来に関する提言ということでは、JR各社の中で“問題”が殊更に大きいように見受けられるJR北海道に関する事柄、北海道での鉄道による物流の可能性に関する話題が興味深かった。
    また、鉄道の未来に関して、著者は「新幹線を物流に生かす」ということが必要であると強調していた。
    非常に読み応えが在って興味深い一冊なので、広く御薦めしたい。

  • 【星4.0】
    国鉄→JR→現在と今後の課題、という感じで国家の鉄道網でについて語っている。

    「国鉄」という響きの懐かしさからなんとなく手に取ってみたのだが、国鉄が抱えていた超ド級の問題、現状のJRの問題など、身近な鉄道について知らないことが多々あるという気付きに繋がった。

  • 新幹線を物流に活用する提案には賛成だ。

  • 戦後復興期に設備投資ができなかったことが後々まで尾を引いた件と、今時点のJR北海道への支援の必要性がうまくリンクしていた。

  • かなり中身の濃い国鉄の歴史を総括した良著。
    中にいた人だから分かる具体論。

  • 読んでよかった。

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著者プロフィール

石井幸孝
1932年,広島県生まれ.1955年,東京大学工学部卒業,日本国有鉄道入社.開発期のディーゼル車両設計(キハ81形,DD51形等)に従事し,その後経営全般に転進.広島鉄道管理局長,工作局長,常務理事・首都圏本部長などを歴任.1987年の分割民営化にあたってJR九州社長となる.条件の悪い三島会社であるJR九州の経営を軌道に乗せ,1997年,会長就任,2002年退任.鉄道史・交通史を研究すると共に,鉄道の未来についても提言を行う.
主著『蒸気機関車』(中公新書,1971),『キハ58物語』(JTBキャンブックス,2003),『DD51物語』(JTBキャンブックス,2004),『キハ82物語』(JTBキャンブックス,2005),『九州特急物語』(JTBキャンブックス,2007),『戦中・戦後の鉄道』(JTBキャンブックス,2011),『人口減少と鉄道』(朝日新書,2018)ほか.

「2022年 『国鉄―「日本最大の企業」の栄光と崩壊』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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