防衛破綻―「ガラパゴス化」する自衛隊装備 (中公新書ラクレ) (中公新書ラクレ 338)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121503381

感想・レビュー・書評

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  •  日本の軍事力が充分で妥当だとは思っていないし、現在の国防体制が最善だとも思ってはいないが、あらためて本書で日本の現状を読むと、日本に必要なのは、具体的な「軍事力」という「ハード」よりも「戦略」という「ソフト」のほうなのではないのか思いをいだく。
     世界経済はすでに「グローバル化」して久しい。
     「アメリカ」ですらすでに「中国」のハードランディングは望んではいないし、世界の主要国においては、どの国がコケても他の国に波及せざるをえない。
     そういう意味では、「世界史」という時間軸では「軍事力」というパワーの比重は低くなってきているのではないのかと、本書を読んで感想を持った。
     本書は日本の軍事力について「役に立たないガラパゴス化」を告発しているが、考えようによっては、「役に立とうとして巨額の軍事投資」をするよりも、「必要がない軍事投資を賢明に避ける方法」を日本は無意識に選択しているのかもしれないのではないだろうか。
     そういう意味で、本書の視点「防衛破綻」というのは成り立たないと思った。
     大体いまどき日本本土に侵攻する外国軍隊があるとは、とうてい思えない。

  • 自衛隊の兵器や世界の軍隊についてのおおまかな概要がわかる。自衛隊や防衛省について簡単に理解したいならオススメな一冊。
    終わりを読んでいて、時代も戦後とはちがうのだから情報機関(CIA、KGB、MI6)みたいな機関だけでも設置すればよいのにと脳裏をよぎったものである。

  • 勉強になります。

  • [ 内容 ]
    国防に関する「世界の常識」が通用しない日本。
    「高い、古い、遅い」兵器の通達に税金が浪費されている。
    政治家もメディアも指摘しない、自衛隊の装備調達の異常な実態を明らかにする。

    [ 目次 ]
    第1章 「買い物官庁」防衛省と「丸腰」自衛隊(他国との価格差は一〇倍にも!;シビリアン・コントロールが効いていない ほか)
    第2章 自衛隊の兵器を検証する 陸自編(89式小銃―性能は凡庸。しかも外国の四~五倍の値段;機関拳銃―使い勝手の悪い、ギャング向けの銃 ほか)
    第3章 自衛隊の兵器を検証する 海自編(潜水艦―巨大化の一途を辿るも戦略なし;護衛艦―海上保安庁より遅れている ほか)
    第4章 自衛隊の兵器を検証する 空自編(空中給油機―四機ではまったく足りない;F‐X―混迷の度を深める次期戦闘機選定)
    第5章 日本の防衛産業の行方(商社は悪か;防衛産業の緩慢な死 ほか)

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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 88ページ
     側面のスカートも薄い鋼鉄製の装甲版であり、
      ◆装甲版→装甲板

    169ページ
     その会社の工場や実際にその商材を使用するデモストレーションを見に行ったりもする
      ◆デモストレーション→デモンストレーション

    206ページ
     ですがおたくの会社が日本へ進出するは認めません
      ◆進出するは→進出するのは

  • 非効率な調達を強いられているのは分かってるし、それが自衛隊側だけの問題ではないことも分かった。自己完結が必須の組織に効率だけを求めても無理なんじゃないか、と思う。

  • 今の自衛隊はセーターやジャージなど業務に必要な服すら隊員に身銭を切らせて買わせている。
    シビリアンコントロールのキモは人事と予算。
    防衛省は自分で仕様を書かないでメーカーに任せている。
    情報収集にお金をかけていない。
    防衛予算が現象しているから、商社が防衛産業から手を引いている。
    平和な時代になって、これらの戦闘機やらがなくなる時代が来ることを祈る。

  • 仕事での課題図書である、勉強中なり~。

  • 『防衛破綻―「ガラパゴス化」する自衛隊装備』(清谷信一、2010年、中更新著ラクレ)

    本書は、我が国の自衛隊の兵器や装備について分析しつつ、兵器の調達コストが高い理由を明らかにしている。

    「ガラパゴス化」しているといわれる自衛隊の装備の現状を陸・海・空に分けてそれぞれの装備の欠陥を指摘する。「ガラパゴス化」とは、外界から隔離されたガラパゴス諸島に生息する動物のように独特の進化を遂げた状態を指す比喩であるが、「防衛省の常識は世界の非常識」と筆者がいうほど防衛省・自衛隊はガラパゴス化しているという。

    調達コストが高い理由は、大量発注ができないために1単位当たりのコストが高くなること、企業を複数存続させるために小分け発注せざるを得ないことなどが指摘されている。企業を複数存続させる理由は、防衛省・自衛隊の省員・隊員の天下り先確保のためではないのかという分析がなるほどと思わせる。


    (2010年1月26日)
    (2010年7月5日 大学院生)

  • 自衛隊・防衛省(庁)の調達に関する考え方は、基本的にいざとなったらアメリカに防衛してもらう、もしくはそもそも戦争を想定しないのではないかと思える。なぜかというと、この国の軍隊は表向きの装備品目はよくても、戦争を続ける能力が欠如しているからだ。

    自衛隊の装備は軍事パレード的な装備品種類の見栄えはあるが、実働戦力として本当に戦力と言えるのか疑問になってしまう。兵員の個人装備の支給内容に始まり、兵站の備蓄、兵站システム、戦時医療体制を含む後方支援体制、表の装備の華々しさに比べあまりにもおざなりされてきてないだろうか。戦争は現実なので、弾と食べ物は途切れないように前線に送り続けなければならないし、兵隊は実際に傷つき血を流すのであって、彼らを医療拠点まで運び、治療し、前線に送り返さなければならない。かつてこれらをできなかった軍隊がこの国には存在して、そしてそれがこの国にどういう結果をもたらしたかは、皆さん重々ご承知のはずだ。

    本書ではこの問題について、具体的な例を挙げながらいわゆる私のような軍事ヲタでない、普段新聞やニュースを見ている普通の人でもわかるように解説し、ある程度の処方箋を提示している。

    もはや冷戦が終了して20年が過ぎ、9.11あらも10年近くなってきた。その中で極東や環太平洋地域においては、中国が経済発展し、軍隊も近代化しつつあり、アメリカと中国の間で「戦略的パートナーシップ」が言われ始める中、我が国の地政学的な戦略的価値は低下しているのであって、アメリカが我が国を防衛する動機は冷戦期ほど十分ではない。かつてと同じルールでのゲームが展開されているわけではないのだ。我が国の防衛関係者もルールが変わったことを速やかによくよく理解して、実行力のある防衛力を持てるよう装備品調達についても多くを学び改善してほしいのが私たる一国民の願いだ。

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