私たちはこうして「原発大国」を選んだ - 増補版「核」論 (中公新書ラクレ 387)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (299ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121503879

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  • 3月11日よりも前、2002年に出版された「『核』論」に、3月11日以降の原発問題に関連して著者が話したことを「二〇一一年論」として加えて5月に出版されたもの。

    横柄な良い方になってしまうが、ぼくが今まで原発に関する報道等について、ずっと感じていた違和感を、「二〇一一年論」がすべて明文化してくれている。原発問題について口にする前に、一度は読んでおかなければならない一文だと思う。

    一方で、原子力について、自分がどれだけ知ったつもりになって考えていたのか、どれだけ一面だけを見て考えていたのかを実感したし、自分の不勉強を本気で恥じている。

  • 年代ごとに点で特定の人間や説を追って考察しているので、
    個別には深いのかもしれないが、全体の流れや、他の視点での見方
    少ないので、総合的な理解には繋がらないように思えるし、読みづらい。

    広島・長崎で被爆した日本にどうやって核が浸透していったか。
    そこにはアメリカの政治的思惑があり、冷戦の影響が大きく見えた。

    原油がないのとの同じく、原発も他国に依存しなければならないのであれば
    踏みとどまってくれればよかったのに。

    ゴジラが核実験から生まれたこと、アトムが冷静時代や、
    科学技術の未来を暗示していたこと。
    話としては面白かったが、学術的な展開から疲れる。

    先端技術は持て囃されども。
    放射性物質を健康にいいとして人気が出たことや
    原発推進を大々的に行った新聞社など、マスコミが犯した大罪も遺憾だ。

    科学的な論説ではなく反核運動の論説になっている。

    原発誘致は過疎地を運命づけられ(周囲の放射線の危険を考えれば)
    大した雇用も生まず、それどころかその危険性から雇用すらできない。
    現場で働く人間が使命感からではなく、「弱者」が雇用されている。
    大した知識もなく研修もされない。そんな現状に驚いた。

    原子力的日光。
    確かに的確な表現だ。
    核の光と影。

  • 3.11が無ければ読まずにいたであろう本。

  • もしも核の「効用」があるとすれば、それは万人に利用できるものであるべきだし、そうでないならまず弱者を救済するものでなければならない。弱者にしわ寄せをもたらしつつ成立している原子力利用の現状は明らかにおかしい。

  • 堅い文であちこち話が跳ぶので、かなり読みづらかった。様々な視点から核の来歴を学べるのはたしか。ただ3*11以後に足した文は浅い感じ。ゴジラと核の関係の話は個人的に興味深かった。

  • 岩田先生のブログで「必読」指定ありのため、購入。
    スイシンとハンタイをカタカナ書きで表記し、
    なるべく政治的立場から距離を置いて書こうと努力しているところに好感が持てる。
    原発を巡る歴史的ないきさつについて、丁寧に叙述しており、世の中に対する見方が変わった。そういう本はなかなか貴重である。

    その反面、その中立的なスタンスが、他人事のように響くところが気になる。
    原発について語ることの難しさを痛感。

  • 本書は、

    ・原発が日本に定着していく経緯を時系列に沿って振り返った「戦後史」である

    という点が最大の特徴。

    唯一の被爆国であり、憲法によって戦争放棄した日本が、

    原子力の平和利用という名の下、原発大国へと大きく変化していったのはなぜか、

    という疑問に答えてくれるのではないかという希望を持って読み始めた。

    全体の構成は、

    ・ゴジラや鉄腕アトムの登場する「文化史」

    ・初代の科学技術庁長官を務めた正力松太郎と首相に登りつめた田中角栄が関わった「政治史」

    ・原子爆弾の開発者であるオッペンハイマーや卓越した数学的センスを武器に時代を駆け抜けたジョン・フォン・ノイマンに代表される「科学史」

    ・輝く未来を提示した大阪万博やJCOの臨界事故を扱った「社会史」

    ・清水幾太郎や高木仁三郎に触れた「思想史」

    などが、時系列に沿って議論されている。

    原発問題の難しさは、科学や経済の議論を越えたマクロな話から、

    日常生活の実感に基づいたミクロな話まで様々な語られ方がされ、

    立場が違うと議論がかみ合わないこと。

    推進賛成派であっても反対派であっても、

    便利な生活という意味でその恩恵は受けているし、

    事故が起これば、被害から逃れることはできないので、

    すべての人が当事者だということから来ると思う。

    「どうしてこんなことになってしまったのか」

    という問いにたいする答は、決して短絡的に求められるものではなく、

    本書を読んで、日本の戦後史を振り返り、

    原発の歴史を理解した上で、

    「二度と歴史を繰り返さない」

    という覚悟を決める必要があるのではないか。

    新書にしては、まれに見るボリュームの本書を読みながら、

    そんな思いを強くした。

  • 今だからこそ、日本が原発推進を選んだ経緯を知りたい、という人にはおススメ。賛成派、反対派、どっちかに寄ってないところもGood.

  • 日本の核開発の歴史を散文的に解説。各賞に論旨がとっちらかっている印象だが、トピックとしては興味深いものが多い。ただ、反原発運動家にも事故の遠因があるというのは暴論であると思う。

  • 日本が世界唯一の被爆国であるにも関わらず、なぜ核技術を持ったのか。資源小国が科学技術を信じて、ということも勿論だがそれ以上に経済的な理由について考える事が出来た。

    オッペンハイマーの下りなどは哲学的な考察も有りやや難解であったが、記載されているエピソードをほぼ同時代を生きてきているので当時の社会の空気や熱を思い出しながら読むことができた。

    節目節目が何にでもあるのだが、東日本大震災が原発、核開発、社会の在り方を替える伏目となるように行動する必要性を考えた。

    豊かな生活を求め続けた結果の原子力発電所であり、現時点ではそれなしでは生活水準を維持できない状況にある。それを理解した上で日本をどうするのかを考えて行きたい。

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著者プロフィール

昭和21 年、長野市に生まれ。
長野高校、早稲田大学を卒業後、信越放送(SBC)に入社。報道部記者を経て、ラジオを中心にディレクターやプロデューサーを務める。平成10 年に「つれづれ遊学舎」を設立して独立、現在はラジオパーソナリティー、フリーキャスターとして活躍。
主な出演番組は、「武田徹のつれづれ散歩道」「武田徹の『言葉はちから』」(いずれもSBC ラジオ)、「武田徹のラジオ熟年倶楽部」(FM ぜんこうじ)など。

「2022年 『武田徹つれづれ一徹人生』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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