動員の革命 - ソーシャルメディアは何を変えたのか (中公新書ラクレ 415)

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  • Amazon.co.jp ・本 (262ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121504159

感想・レビュー・書評

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  • 「ソーシャルメディアがリアル(現実の空間・場所)を『拡張』したことで、かつてない勢いで人を『動員』できるようになった」p5

    【インターネットはストック型からフロー型へ】p22
    Cf. Twitterのタイムライン

    「リアルタイム性が高く、社会的な情報交換に使われるメディア」という特徴に焦点を当てれば、最近のツイッターやフェイスブックなどは「狭義のソーシャルメディア」とも捉えられるでしょう。p26

    事例:2009年小国モルドバでの抗議活動。
    同年イランでの民主化活動。→ツイッターなど
    2010年のタイの暴動。→ユーストリーム
    中国では一部の富裕層がVPN(Virtual Private Network)を使ってグレートファイアウォール(Great Firewall:中国政府のネット検閲システム)を抜けている。

    エジプト革命で象徴的な役割を果たしたのは、Googleの中東・北アフリカ地域担当マーケティング部門責任者を務めるワエル・ゴニム氏。彼は1/25にFB内に反政府デモを呼びかけるページ「We are all Khaled Said」を作成し、デモの呼びかけが大きなうねりになるきっかけを作った。p36

    【外へ出て行き、「変われ!」と叫んだから変わった】p40
    中東で起きた革命をソーシャルメディアが起こしたというのは、半分正しく、半分間違っている。なぜか。ソーシャルメディアは、それ単体で政治的な圧力になったわけではない。広場に何百万人も集まるという、民衆のデモが圧力になったのだ。
    ソーシャルメディアというのは、モチベーションを与えてくれるもの―言い換えるなら、背中を押してくれるメディアとして機能している。
    ⇒★ソーシャルメディア革命とは「動員」の革命である。

    【「出る杭」から「納豆」へ】p43
    「ソーシャルメディア=納豆論」:誰かが出た時に付いていきやすい―まさに納豆を一粒つまむと、粘りが次の豆につながるようなもの。
    Cf. デレク・シヴァーズのTED講演「How to start a movement?」

    【多種多様な世界の人と知り合うきっかけに】p47

    「ヒューマン・マイク」※スピーカーを使うと条例で逮捕されるため。p84
    Cf. フラッシュモブ(Flash mob)

    【ソーシャルメディアの5要素】
    ①リアルタイム―速報性と伝播力
    ②共感・協調―テレパシーのように共有し合う
    ③リンク―具体的行動につながる
    ④オープン―参加も離脱も簡単
    敷居は非常に低いコミュニティを形成 Cf. ハッシュタグ
    マイナス面:「熱しやすく冷めやすい」
    ⑤プロセス―細切れの情報が興味を喚起する
    透明性の高さ

    [セーシェル共和国の国家モデル]p118
    体験型消費

    東大教授・児玉龍彦「得手に帆を揚げる」p124

    【ソーシャルメディアは拡声器であり、情報源】p127
    Eg. 尖閣問題
    ジュリアン・アサンジ「不確かな情報の検証はプロの仕事。ソーシャルメディアはニュースへの多様な視点を提供するもの。そして拡声器であり、情報源である」

    アメリカ・シカゴのデポール大学で世界で初めて「ツイッター・ジャーナリズム」という授業を行ったクレイグ・カナリー「ツイッターは情報発信のサイクルをリアルタイムまで短縮したという点が最大の特徴。これは一過性のブームではなく、ジャーナリズム全体に"リアルタイム報道”という手法が確立されていくきっかけになる」p130

    ▲速報はソーシャルメディアで、一次検証をプロが担当しマスメディアで報道を行う。そこから先はソーシャルメディアが再びいろいろな視点を与え、埋もれるニュースを拾い上げ、重要度に応じてニュースを伝播していく。p130

    [「コンシューマライゼーション」の時代]p132
    消費者のためのサービスが技術の最先端で、その後に企業向けに移行していく。
    Eg. クラウドやソーシャルメディアなどのインターネット情報技術、スマートフォンやタブレット端末など。

    【モバイル、クラウドの発展が動員の革命を支えた】
    「ソーシャルメディア×クラウド×モバイル」

    [ソーシャルメディアに対するテクノフォビア]p135
    携帯電話黎明期とのアナロジー

    【フリースタイルが求められる時代】p144
    宇川直宏、重要なのは「スキル、アーカイビング、年齢」

    【デマとどう付き合うか】p174
    [ステーキのアナロジー]
    マスメディア=ウェルダン、ソーシャル=レア

    救済情報が消えない。p177

    モジュール化:「多数の異なる部品を要する生産において部品をグループ化して組み立てる方式」p195

    【マイクロペイメントは世界を変える】p197
    ソーシャルメディアはサイレントマジョリティの「賛」を拾うことができる。p199

    【海外のソーシャルメディアが狙うのは個人間送金サービス】
    Eg. Facebook Credits:仮想通貨を使ったオンライン決済サービス、Google Checkout+Google Wallet

    クラウドファンディング:プロジェクトを実現したり団体を立ち上げたりするためにネットを通じて一般大衆(crowd)から小口の資金を集めること。
    a. 投資型 b. 購入型 c. 寄付型

    購入型クラウドファンディングの代表例:キックスターター

    △クラウドファンディングは現状ではソーシャルメディアの動員力を金銭に換える、現時点で最も現実的なサービスといえるのではなかろうか。p211

    「ドロップシッピング」:ネット上の通信販売の一形態。ショップ運営または注文をとって商品の製造元に発注し、製造元から直接購入者に発送。在庫リスクがなく、発送の手間もかからない。p219

    【おわりに】p239
    ニュージーランド大地震、"Volunteer Army”サム・ジョンソン

    ここ数年で「ちっぽけな自分が何をやったところで社会は変わらない」というあきらめの心境が「自ら動くことで多くの人の共感が得られ、社会が少しずつ変わっていくかもしれない」という希望に置き換わった人は少なくないでしょう。ソーシャルメディアは何を変えたのか。もしかしたらそれは、人々の「希望」の持ち方なのかもしれません。p241

    「サウンドデモ」p248

    [東電の情報戦、戦略]p256
    東電の有価証券報告書「普及開発関係費」65年度:7億5千万円、2010年:269億円。

  • 色々と考えさせられることも多いが,確かにソーシャルメディアがもたらす影響を,人が動く・集まる?「動員」というもので捉えることは納得できる.
    危うさを秘めている感じもするが.

  • 最近はネットやその周辺の事柄に興味を持っているので、読んでた。
    内容はSNSなどのもたらした(人を集め動かす)、効果や可能性、その将来について著者の経験や、対談などを通して語られるという内容になります。
    2012年ですが、IT関係や最近の政治環境は変わっているのでもう古く感じますが、SNSの力に興味があるかたには楽しめると思います。

    備忘メモ
    ・デモは楽しくてもいい。
    ・ネットだけでは現実は変わらない。実際に動かなければ何も変わらない。
    ・ほとぼりをさまさず、続けることが大事。
    ・呉越同舟の方法を探す。

  • Twitterで有名な津田氏が、ソーシャルメディアによって動員力が格段に向上したことを記述した一冊。

    本人の説得力のある言説は元より、実際にその道の著名人との対談もあり、非常に勉強になった。

  •  ソーシャルメディアはデモや社会をどう変えるのか、ツィッターの申し子、津田大介が語る。

     そもそもソーシャルメディアとは何かに始まって、アラブの春などのデモ、震災時の活用など、多岐に渡り書かれている。
     ソーシャルメディアはそれ単体だけの機能ではなくて、デモのようなそこから実際に会ったり集まったりする活動や、クラウドファウンディングのような寄付など、何かと結びつくことで大きな変革を生み出しうるものだと感じた。

  • ソーシャルメディアによって情報を拡散することによって、今までより簡単に人を動かすことができる様になった。
    ソーシャルメディアの台頭は情報の流れを大きく変え、個人と個人が有機的につながることを促す様になった!

  • 当然ながらソーシャルメディアはまだまだ発展途上なんだな、ということ。日本という国はソーシャルメディアに限らず何事もちょっと遅れてその波がくるので、少々つきはなした視点から物事を見ておくことが必要だと思った。ものすごく頼って信じきることはないし、かといって全然使わない手もないし、ほどほどに付き合いたいと思う。そして、今までもこれからも何かしらモデルを生み出すアメリカという国に改めて興味がわいた。

    自分が知っていることなんて本当に限られている。
    どんなにその道の権威ある人が言っていても、それはその人の視点であるのだから、やはりそれは参考程度であって、自分で考えたことではない。自分で考えて、情報を精査して、拾い上げたいなと思う。

    (20130502)

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     新しい技術やコミュニケーション手段が出てくると、必ず一定の拒否反応が生まれます。ある種のテクノフォビア(新しい技術に対する嫌悪)ですが、ソーシャルメディアについてもそれは同様に起きています。
     「ファックスが世界を変えたか?」「携帯電話が世界を変えたか?」と尋ねられたら、それは「変えたに決まっている」と答えます。ファックスも、携帯電話も、登場したことによって、いい面、悪い面の両方が浮かび上がってきました。しかし、そういうことを議論することは僕はあまり意味がないと思っています。便利なものはよい悪い関係なく、必然的に普及していくむしろわれわれはコミュニケーション手段が変わると、世の中も変わる、ということに着目しなければなりません。
     コミュニケーション手段の変換に伴う変化を必然的なものとして受け入れ、いい面も悪い面も、両面認識した上で、現実と折り合いをつけていくという態度が何より重要なのです。とにかく使わず批判するというのが、態度としては一番よくありません。繰り返しますが、コミュニケーション革命は間違いなく起きていることを正しく認識して恐れない。そのうえで、ソーシャルメディアを使ったときの肌感覚を大事にしてもらいたいのです。
    津田大介『動員の革命 ソーシャルメディアは何を変えたのか』中公新書ラクレ、2012年、135ー136頁。

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    津田大介『動員の革命 ソーシャルメディアは何を変えたのか』中公新書ラクレ、ようやく読了。SNSを実践として関わってきた著者が情報の未来を語る一冊。現状を的確に指摘し、新しい連帯を模索する。対談含め、押さえるべき最低限の議論が凝縮されている。

    著者の立場に正反の議論が存在するし、本書はやや楽観的の感は否めない。ただし類書が「SNSで金儲け」全盛の中では、本書の価値は高い。反応の冷温を退け、その善し悪しを生活者の視点で捉える好著。

  • FacebookとTwitter、今はほとんどこれしかやっていないけれども、世間一般の流れと一緒みたいで、それならもう少し突っ込んでソーシャルメディアに参加して行こうかなと思いました。
    確かに、ソーシャルメディアが様々な動員につながるなと。自分もそれで動員されている現実があるし。

  • "Twitterの人"などと思われている津田氏がソーシャルメディアのこれからの期待的展望をまとめた本。対談をいくつか収録しているが、どれも津田氏の知識や経験の未熟さが感じられる内容であり、そこが本書の、そして津田氏の魅力でもあった。巻末の中沢新一氏、いとうせいこう氏との鼎談は、デモの音楽性などの話が面白く、読み応えがあった。

著者プロフィール

1973年、東京都生まれ。ジャーナリスト、メディア・アクティビスト、「ポリタス」編集長/「ポリタスTV」キャスター。著書に『情報戦争を生き抜く』『ウェブで政治を動かす! 』(ともに朝日新聞出版)など。

「2023年 『宗教右派とフェミニズム』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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