読売新聞朝刊一面コラム - 竹内政明の「編集手帳」傑作選 (中公新書ラクレ 620)
- 中央公論新社 (2018年5月8日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (341ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121506207
作品紹介・あらすじ
勝った人より「負けた人」幸せな人より「日の当たらない人」だから竹内政明の編集手帳は沁みるんだ!
読売新聞 名物コラム16年分から選んだ珠玉のコラム集
内容紹介
年の瀬の商店街で親子連れとすれ違ったとき、小さな男の子が「ナミダクジ」といった。手を引いたお母さんが「ア・ミ・ダ……」と笑った。(中略)そういう言葉はないが、無理に漢字をあてれば「涙籤」だろう。真ん中を選んだつもりが、予期せぬ横棒1本に邪魔されて端っこにたどり着いたり、逆に、思いもよらぬ幸運にめぐり合ったり、人の世の浮き沈みは涙籤かも知れない。(本文より)
読売新聞1面コラム「編集手帳」の執筆を退いた竹内政明氏の最後のコラム集。 勝った人より「負けた人」に、幸せな人より「日の当たらない人」に寄り添い、人々の心の襞に分け入る 当代きってのコラムニストによる自選120編の「傑作選」と、ラクレ未収録分30編を収録。「泣けるコラム」で多くのファンを魅了してきた竹内氏の珠玉の作品集。
感想・レビュー・書評
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毎日11紙に目を通すジャーナリストの池上彰さんは、読売新聞だけは1面下のコラムから読むのが常だった。
本書は、コラム「編集手帳」を2017年まで書き続けられた竹内政明さんの自選集。
執筆の心がけは、と問われ、日の当たる人より日の当たらない人により多く言葉をかけること、という。
人気力士の高見盛が引退しスポーツ面で大きく取り上げられた。その下に小さく、「武州山(ぶしゅうやま)も引退」という記事がでる。
同じ日に引退する2人が、同い年、同じ青森県出身で初土俵も同じ、と知り、竹内さんは翌日のコラムにこう記した。
◆相撲界が八百長問題で大揺れの頃である。弁護士などの調査チームが関取衆から事情を聴取し、証拠物件となる携帯電話と預金通帳を持参するよう求めた。スポーツ報知の記事を覚えている。
▲「あなたは持って来なくてもよかったのに・・・」
武州山関(36)(藤島部屋)は持参した品を突き返された。いつも全身全霊で土俵を務めるあなたが八百長をするはずがないから、と。
▲一点の曇りなき”ガチンコ力士”認定者はほかにもいたが、第1号は武州山関である。あの朝、相撲界はどこまで汚染されているのか、誰を信じていいのか分からない疑心暗鬼のなかで、その記事に心を洗われた大相撲ファンも多くいたはずである。賜杯ならぬ記憶にその名を刻し、末永く称えられていい栄誉だろう。
▲きのうの朝刊が、その人の引退を短く伝えていた。年寄「小野川」を襲名するという。
たび重なるけがに泣きながら、32歳で新入幕を果たした遅咲きの苦労人である。幕内在位は11場所、最高位は西前頭3枚目という。
稼いだ勝ち星の数や、浴びた拍手喝采の数だけでは”重み”を量れない勲章が、男の人生にはある。 (2013.1.29)
文章を紡ぐ上では、論理展開やレトリックの工夫も大切だけれど、人に対する温かく優しい眼差しを忘れてはいけないよ。
自らへの戒めとしたい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
大学時代の講義で未だに覚えている発言がある。「歴史が勝者の姿を書いたものであるとすれば文学とは敗者の姿を書いたものだ」というものだ。「日の当たらない人に、より多く言葉をかけたい」これは文章中に出てくる竹内さんの言葉だが、真っ直ぐに心を射抜いてくるのは「日の当たらない人」の姿を優しく克明に捉えているからだろう。竹内さんの文章は、単なる新聞のコラムで終わらず「文学」と言ってしまっていいと思う。
また竹内さんの文章の特徴として「引用」の多様さが挙げられる。竹内さんの圧倒的なインプットの量にはただ感服させられるのみだが、その多種多様な発言、名言、フレーズと一見無関係と思える話題とを結びつける発想力こそ、名文と呼ばれる理由だろうと考えてしまう。
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読売新聞の朝刊コラム「編集手帳」で書き手を務めた竹内政明さんの傑作選。
子供の頃はなぜ父親が熱心に新聞を読んでいるのか理解出来なかった。この本を読んだ今は、そのワケの一端が知れた気がする。 -
文章の導き方が上手すぎる。ツカミに読者の注意を引く引用や小話を持ってきて、自分の主張にさりげなく誘導するやり方は、不自然さを感じさせないのに説得力をもたせることができる技法だ。
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温かさと柔らかさ、ユーモアと教養、人柄に溢れてる文章。
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我が家はずっと読売新聞。
十数年前、なんかちょくちょく心に刺さる文章書くよな~~編集手帳おもしれーーと思うようになって。
その時調べてみて、竹内政明という人が書いていることを知った。
2001年7月から書いていたそうですね。
そして昨年体調不良で退いた知らせはショックでしたよ・・・。
もうなんていうか、目線が好きなんだよな。
そっと寄り添う感じ。
でもたまに皮肉があったりするのもいい。
文の書き方?組み立て方?そういうのも好き。
もう読めないのは残念。 -
もう竹内さんのコラムが読めなくなるなんて信じられないよ。、
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勝った人より「負けた人」、幸せな人より「日の当たらない人」――だから竹内政明の編集手帳は沁みるんだ!