シニア右翼-日本の中高年はなぜ右傾化するのか (中公新書ラクレ 790)

著者 :
  • 中央公論新社
3.87
  • (9)
  • (11)
  • (9)
  • (2)
  • (0)
本棚登録 : 136
感想 : 17
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121507907

作品紹介・あらすじ

久しぶりに実家に帰ると、穏健だった親が急に政治に目覚め、YouTubeで右傾的番組の視聴者になり、保守系論壇誌の定期購読者になっていた――。こんな事例があなたの隣りで起きているかもしれない。中にはネット上でのヘイトが昂じて逮捕・裁判の事例が頻発している。そのほとんどが50歳以上の「シニア右翼」なのである。若者を導くべきシニア像は今は昔だ。これは決して一過性の社会現象ではなく、戦前・戦後史が生みだした「鬼っ子」と呼ぶべきものであることが、歴史に通暁した著者の手により明らかにされる。

そして、導火線に一気に火を付けたのは、ネット動画という一撃である。シニア層はネットへの接触歴がこれまで未熟だったことから、リテラシーがきわめて低く、デマや陰謀論に騙されやすい。そんな実態を近年のネット技術史から読み解く。

かつて右翼と「同じ釜の飯を食っていた」鬼才の著者だからこそ、内側から見た右翼の実像をまじえながら論じる。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 若者は右傾化していない。p.11
    シニア左翼。日本共産党員の高齢化。p.260

  • 鈴木大介の『ネット右翼になった父』(当然、本書にも言及がある)などで話題になった、シニア層が突然ネトウヨ化してしまうという現象――それを多角的に掘り下げて分析した一冊である。

    若き日に右翼の論客として数年間活躍した経験を持つ著者にしか書けない、リアルで深い分析が展開される。

    といっても、けっして堅苦しい内容ではない。かっちりと分析しつつ、とても娯楽的な読み物にもなっている。

    著者が自らの体験を踏まえて書いた小説『愛国商売』は抜群に面白い「笑える本」だったが、本書もしかり。

    ただし、本書でいう「シニア右翼」や、シニアでなくてもネトウヨに該当する人が読んだら、ものすごーく不快になるだろう。次のような辛辣な記述が頻出するのだから。

    《ネット右翼は独自の理屈とか理論を持つに足りるだけの知識の蓄積を持たないので、上位の「保守系言論人」とか「右派系言論人」の言説に「寄生」するのである。宿主である彼らの主張をネットの中で瀰漫させる存在こそがネット右翼の実相的な定義になるのである》96ページ

    面白いだけではなく、ためになる。たとえば、旧・統一教会と自民党の関係を考えるうえでも、本書の内容はとても勉強になる。
    「面白くて、ためになる」――ある意味、新書の理想形である。

  • 著者の知り合いでがんがん「ホシュ」的発言なさる方が
    櫻井よしこ氏の著作を本棚に並べるも
    読んでいない

    というのは初見信じがたかったけれど、ネット上の発言を見る限り
    一方向の勉強をし過ぎた過学習に陥っている人
    だけでなく、
    自分の不満を分かりやすいところにぶつけているだけで何の勉強もしていない人
    の後者がかなり多そうで

    辛いね勉強しようね

  • かつて右派系メディアに出演するなどしていた著者が現在の右傾化したシニア世代について述べた本。
    前半では著者の右派時代を絡めて右翼とはどういうものかを定義し、後半では何故シニア世代が右傾化しているのかについて著者の考えが述べられている。

  • なんかもう泣けてきた。最後の方とかどうしようもなく泣けた。順番が逆なんだというのがすごく体験した人っぽかった。

  • ネトウヨはほぼほぼシニアである。と言われて一番なるほどと思ったのは、ネットでの彼らの相手に対する口の利き方だ。言ってる内容云々はともかく、最初から言葉使いが尊大で失礼な人が多いという印象がある。ネットの論戦相手は自分よりずっと年長者かも知れないのに、まるでそんな可能性などないかのように確信的にタメ口なのだ。それは若者がマナーに疎いからというのよりも、自分がシニアだから相手はたぶん年下のつもりで話しているという人が多いからと思うと腑に落ちる。なぜならそのぞんざいな態度にあまり悪意を感じない、無礼だけど悪気はない、という場合が多いからだ。社会経験が薄弱でネットリテラシーが低く、下品で反知性的な物言いが多いことから、従来は学歴の低い社会経験の浅い若者が中心と思われていたネトウヨだが、単純に20代と50歳以上の人口比、若くて50代、主力は60、70代の有名保守系論壇誌の読者層、何より著者がもともと保守業界でガチの論客で、その界隈の支持層がほとんどシニアであったことを経験的に知っているのがその根拠だそうだ。また、次に腑に落ちたのは、韓国人や中国人へのヘイトと女性蔑視の強度が、若い層のイメージにあまり感じなかったこと。これもシニアなら納得がいく。「LGBTは生産性がない」などという政治家の発言に、自分はLGBTに関心がないという人はいても、「よくぞ言った」と拍手喝采する若者というのはあまりにピンとこない。いったいネトウヨとは思想史においてどういうスタンスなのか、その自称保守思想はどこからやってきたのか。そもそもネトウヨは戦前の右翼とは別物で、天皇家に対しての態度がまるで違う。安倍元総理が「いずれは天皇に謝罪させる」という宗旨の統一教会とつながりがあったとわかった時、当然右翼なら激怒するかと思っていたら、激怒したのは一部の保守系の人で、ネトウヨ界隈ではほとんど反応がなかったことにどういうことなのか意味がわからなかった。本書は「ネトウヨ=シニア右翼≠本来の右翼」の構図を明らかにし、シニア右翼の成り立ちについて、シニア層が初期のネットのうさん臭さを体験していない、層としてはネットリテラシーが最も低い人たちで、現在のような動画がストレスフリーで楽しめるネット環境が整った時からネットに触れた人が大半であり、そこにたまたま大量に動画コンテンツを配信したのが右傾組織のチャンネルであったという状況を指摘する。そしてこのシニア化がなぜ日本に固有な現象なのか、その理由を戦後の日本が、戦争の起こった結果にのみ注視し、起こした原因についての総括を行わず、「民主主義、基本的人権」はなんとなくふんわりとらえていただけで、実はアメリカの反共政策の都合によって、A級戦犯を引き続き政財の指導者に据えた、要するに看板のつけかえを行っただけで実態は戦前の社会体制を引き継いでいるだけだからだと読み解く。言われてみれば、戦後民主主義の価値観の中で育ってきたはずの高度経済成長の主役である今のシニアたちの実際の基本的価値観は、終身雇用で年功序列で男尊女卑の、徹頭徹尾「組織>個人」というものだ。そしてその経済成長という輝かしい成功が、今凋落の一途をたどっているのが「何者かによって奪われているからだ」という、わかりやすい理屈にとびつき、韓国や中国に異様なまでに警戒し敵視する考えと親和していく。こうした思考の中から、現在のシニア右翼の正体が「無思慮型親米保守」という輪郭をまとって浮かび上がる。だから沖縄の基地反対者は反日であると考えているのである。本書ではそこまで書いていないが、私は彼らシニア右翼(ネトウヨ)が自分たちと対立するものになぜあそこまで逆上するのかを思う時、それは組織人間に殉じ日本を経済大国に押し上げた(それは紛れもない功績だが)自分たちのレゾンデートルが掛かっているからではないだろうか。「あなたがやっていることは全部間違いである」、と言われることには耐えられても、「あなたがやってきたことは全部間違っていた」と言われることには耐えられないからのように思うのだ。本書は戦争を起こしたことの総括をせず、民主主義をただなんとなく受け入れたままの日本では、次世代からもネトウヨが誕生するだろうと指摘する。そして基本的人権もよくわからない国民がSDGsという口当たりのよい標語にすがっていくことに危機感を訴える。他国(特に途上国)の人権の理解なしにSDGsなどありえないからだ。

  • ネット右翼の大多数は、基礎的な知識も持たずネット情報を鵜呑みにしてきたシニア右翼によると主張している。若年層の右傾化については議論が分かれるが、ネット右翼=シニア右翼であるとの主張は説得力がある。

    本来の右翼は差別的・排外的でもなかった。
    面従腹背の親米保守も少数派となり、支離滅裂なネット右翼が大多数を占めるようになった。

  • 最近よく出ているコメンテーター古谷 経衡氏、

    何者なのかと思ってこの新書を読む。

    学生時代にチャンネル桜でデビューした、「元右翼」らしい。

    ただ、右翼仲間?の言説があまりにレベルが低く、他の人が言うことをうのみに

    しているだけというのに嫌気がさして、抜け出して今日がある、ということのようだ

    つまり彼は自分で考える頭がある。

    シニア右翼にはそれがない、ということもあってか、シニア右翼を分析しつくしたの

    がこの新書。



    そもそも右翼、保守ってなに、という話から始まる。

    皇室を愚弄するような発言を繰り返す右翼がいるが、それはありえない。エセ右翼。

    親米保守。アメリカのぽちになって何が右翼、保守なものか。

    そういう出発点がある。



    しかしなぜシニアがここまで簡単に「右傾化」するか。

    古谷はその背景に、スマホの普及を見る。

    1990年代、カップラーでネットにつないでいた世代はネットのいい加減さを

    知っている。うかつに信じない。

    しかし、それを知らず、スマホで簡単にネットにつながった世代はそうではない。

    それが今のシニアなのでは、という仮説だ。

    アメリカのネトウヨ、Qアノンは若い人。日本と明らかに違う。

    単純にネットの情報を信じたシニア。



    日本は戦後きちんと戦争を清算しなかった。

    中曽根などは旧陸軍でそれなりの地位を占めていた。

    そんな彼が自己否定をせず、戦争責任を曖昧にした。

    歴史の授業で近現代がないのはそのせい、、、



    古谷の意見にほとんど合意する。

    過去をきちんと見つめないから、歴史修正主義がはびこる。

    反知性主義でいられる。



    しかも今、シニアは無駄に元気だ。なかなか死なない。

    ものの考えを変える一番いい方法は、世代が変わることだ、と読んだ。

    まさに今そんな時代なのだろう。

  • パソコン通信から現在迄を俯瞰した部分は懐かしく、かつ、わかりやすくまとまっていて良かった。

  • シニア右翼がなぜ生じるのか非常にわかりやすかった。

全17件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

古谷経衡
1982年札幌市生まれ。作家・評論家。立命館大学文学部史学科(日本史)卒業。(社)令和政治社会問題研究所所長。(社)日本ペンクラブ正会員。NPO法人江東映像文化振興事業団理事長。インターネットとネット保守、若者論、社会、政治、サブカルチャーなど幅広いテーマで執筆評論活動を行う一方、TOKYO FMやRKBラジオで番組コメンテイターも担当。『左翼も右翼もウソばかり』『日本を蝕む「極論」の正体』(ともに新潮新書)、『毒親と絶縁する』(集英社新書)、 『敗軍の名将』(幻冬舎新書)など著書多数。

「2023年 『シニア右翼』 で使われていた紹介文から引用しています。」

古谷経衡の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×