海洋国家日本の構想 (中公クラシックス)

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著者 : 高坂正堯
  • 中央公論新社 (2008年1月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (259ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121601018

海洋国家日本の構想 (中公クラシックス)の感想・レビュー・書評

  • 冷戦下の日本において、非武装中立と絶対平和の理想主義が幅を利かせた政治状況のなか、高坂の権力政治を見据えた冷徹な目と勢力均衡を前提とした極東の緊張緩和策と通商国家の構想は、当時では新鮮で意味のある試みだったのだろう。
    時は進み、冷戦が終わり多極化する世界のなかテクノロジーが戦争の形を変え、テロの横行と不寛容の嵐が吹き荒れ、そのなか極東では中国の台頭と緊張が増す朝鮮半島を横目に暮らす2017年の日本の現在。いま彼の議論を読むと甘美な理想主義だと思うところさえある。それほど高坂が生きた時代から遠くへ来てしまった。しかし、現実主義者の要諦は目的と手段との間に相互関連を認めて、双方の間の生き生きとした対話を重要視することである。時代は流れど、高坂が示した国際政治を冷静に分析し、目標を定め、そのために取り得る手段の選択肢を具体的に考える現実主義者の方法論はその輝きを失っていない。

  • 日本の特異性を指摘した上でこの国が進むべき道について提言した名著。40年以上前に書かれた本ですが、著者の意見は未だに新鮮さを失っていません。

  • 出口治明著『ビジネスに効く最強の「読書」』で紹介

    外交政策の不在、平和の条件…。日本の外交戦略を考察するうえで欠かせない一冊。

  • Thu, 17 Jun 2010

    1965年, はや40年以上まえに書かれた本であるというのに
    いささか色あせない,論理性,洞察.

    原爆の抑止力を分析した上で,
    通常兵器の価値も存在する事を指摘している.

    それは,現状の動きをみれば当っているだろう.

    そして,未来のこととして
    ・ 核では抑止できないゲリラ型の先頭,テロの活発化
    ・ 日本が後に台頭する中国と,アメリカの間で板挟みになる.
    という,ふうな指摘をしている.

    まさに・・・・.

    エッセンスを書くのは,ちょっと難しいので,
    是非読んで戴きたいところだ.

    右翼本的な,軍隊イメージもそれほどなく, あくまで,論理的な思考から
    適切な軍備と,そこから平和に至るシナリオを議論しているのが面白かった.

    一つ目の章の名前にあるように
    まさに
    「現実主義者の平和論」

  • 国際政治学者で、吉田茂宰相を当時ではめずらしく肯定的に評価し、鋭い分析と提言から天才という呼び声も高い、故高坂 正堯氏の代表的論文。

    昭和を代表する論客であり、京大教授として数々の学者、外交官、官僚を輩出させた。民主党、前原誠司外務大臣も門下生の一人。

    田原総一郎からも「余人を持って代えがたい人」との評価を受けている。

    共産主義が台頭していた終戦後の日本で、現実主義者の平和論は現在では一般的な考え方になっているものの、当時としては斬新だったのではないでしょうか。筆者は、平和という絶対的目的を達成するのいたる個々の具体的目標はとりうる手段との相互関連において決定されるべきであり、手段と目的との間の生き生きとした会話が平和理想主義者には欠けている点であると主張しています。

    たとえば、筆者はスイスが国際政治の力関係を利用して中立を守るために行ってきた外交的努力について日本は認識不足であると指摘している。

    日米安保条約について、それは日米の友好関係があってのものでありそれが崩れれば意味をなさない。日本防衛に関して不足している議論は、どのような軍備をどのようなどの程度持つべきかという議論であると述べている。まさに、現在の日本の状況を観察しているかのようである。

    ナショナリズムに代表される人間の思想はそのほとんどが環境がそうさせていると述べている。民族国家の形成に軍事力、経済力が加わり、強力な国家が形成される。中国では、歴史上初めて毛沢東がこれに成功し、100万の軍隊を操り、日本軍を撃破し、民族国家ではない根なし草の蒋介石を破った。その意味で組織的な基礎が重要であると説いている。

    最後に今後、日本がその独自の偉大さを築きうる方法は、中国との同一性ではなく、それとの相違に目覚め、東洋でも西洋でもない立場に生きるとこであると述べている。

    軍事に関する論説が多く、やや偏ったところがあるものの、この時代にして、すでに現在の世界情勢を観察しているかの如くの示唆は、確かにすばらしいと思います。ライブの講義を聞いてみたい人でした。

  • 著者の高坂は『海洋国家日本の構想』で、アジア太平洋戦戦争後の日本に対して種々の提言を行っている。特に、日本が海洋国家としてて、いかにその四方にある「海」を使うかが繁栄の鍵だと著者は述べる。50年も前に書かれた本だが、その教訓は今でも光る。

  • 話が何段も飛ばして飛躍する当時の中立論への批判、戦後極西として力をつけた日本が中国の台頭とともに極東であることを再度意識しなければならなくなること、大陸の隣にありながらその一部ではないとゆう点で学べる英国のこと、自民党が外交と世論をその後援会と圧力団体の連合とゆう形から結びつけることができず、野党は具体的な批判を持たないため外交政策が議論されない日本、現代にあっても示唆に富んだ書物と思う。

  •  1960年代前半に書かれた高坂先生の著書で,当時の国際情勢である日本の軍事力に関する話や各国の核武装に関する内容が中心となっています。ただ,現在の国際情勢にも通じる内容が多く,核武装といった具体的な言葉を今の言葉に置き換えるだけでも,十分にその内容は活用できる作品だという印象を持って読んでいました。
     アメリカとの関係,隣国中国との関係,そして日本が海という資源を活かして国際的にどのような位置付けを取って行くことが重要であるのか。この作品が示唆する内容は,昨今の日本を取り巻く国際関係にも活用できる場面が多くあるように思います。日本はやはり「海洋国家」として歩んで行くという認識は,今でも重要であると考えます。

  • ▼解説で中西氏が述べているように、その出版から半世紀が経という今日においても、本著の有用性は全くといっていいほど色あせてはいない。
    ▼政策は目的をもって形作られるべきである。もちろん、そこに理念や理想を反映しようとする心意気も否定されるべきではない。しかし、そのためには十分な現状認識と豊富な史観を有した「現実主義者」の視点が欠かせない。
    ▼そして、そこで大切なのは「完全な」あるいは「完璧な」政策はあり得ないということである。人が他人を完全に理解することが不可能な様に、国家間の関係においてであっても、対話によって慮るしかないのだ。
    ▼アジアの東端にありながらも、西洋文化圏の「極西」にも位置する日本が、どにようなアイデンティティを獲得し、どのような未来を描くのか――その闘いは、まだ始まったばかりである。

  •  初版は1965年。当時まだ30歳になるかならないかの新進気鋭の助教授・高坂正堯(1934-1996)の単行本としては初めての著作である。

     本書に収録されているのは、1963年から1964年にかけて『中央公論』や『自由』に発表された独立はしているのものの、一貫した問題意識をもった7編の論考である。収録論文はは以下の通り(出典はきちんと調べたわけではないので正確ではないが…)。

     「現実主義者の平和論」
     「外交政策の不在と外交論議の不毛」
     「二十世紀の平和の条件」
     「二十世紀の権力政治」
     「中国問題とはなにか」
     「核の挑戦と日本」
     「海洋国家日本の構想」

     この中公クラシックスというシリーズから刊行されていることからもわかるように、高坂の論は既に「古典」と化し、揺るぎない評価を受けていることはここで改めて言う必要もないかもしれない。
     また、本書の冒頭には、高坂の弟子であり現在京都大学法学部において高坂の後を襲って国際政治学の講座を担当している中西寛教授の筆による立派な解説がついているので、浅学非才の徒が今さら何を付け加えるのも憚られる気がする。
     それでもあえてレビューをつけてみたいという欲求にかられるほど示唆に富んだ著作であることが本書の最大の魅力だろう。

     読み進めながらぼんやりと感じたことだが、高坂は「理論」よりも「直感」の人ではなかろうか?本書に収められている論考は権力政治としての米ソ冷戦構造の中で、非軍事国家である日本という「島国」がいかに舵をとるべきかという目的意識の下に描かれている。

     高坂は冒頭の2篇で、進歩的論壇や社会党の外交論が理想と現実の乖離しているのみならず、その間隙を埋める努力を怠っていると論じている。つまり「非武装中立」や「世界平和」を実現するための当面の具体的方策が存在しないというのである。
     目的を実現するための手段の有無によって、目的そのものも規定されるべきであるとする高坂の指摘は尤もなことである。
     しかし、特に中国問題や核問題を論じる後半の論考において、現状の権力政治をとりまくジレンマから、具体的な構想を高坂自身も示すことができていないのである。
     それもそのはずである。高坂が冒頭に説く実現に向けての具体的な手段を検討するためには、現状の外交状況を精密に分析する必要があるのは自明であるが、高坂はそのような作業を省略しているからである。
     もちろんこのような手法にならざるを得なかったのは、現在進行形でダイナミックに変化する1960年代前半の国際社会とそれに対応する能力を欠く池田内閣や安直な中立論や対米自立を説く世論へ警鐘を鳴らす必要があったからである。しかし、そうではあっても、抽象的な観念論ではなく、具体論の中から今後の方針を探って行く努力をすべきではなかったのだろうか?

     最後に、本書のタイトルともなっている「海洋国家日本の構想」についてごく簡単に述べたい。そもそも高坂の説く「島国」文化論についてはかなり疑問があるが、それは側面的な問題でありここではさておく。正面の問題は日本の安全保障である。
     高坂は、「島国」日本にとってアメリカ第七艦隊を実質的な楯として、事実上核兵器によらない通常兵器による海上防衛を担当している存在とみなしている。高坂自身の論からは、この役割を日本政府が一部でも担うということは一切論じられていない。米ソの均衡状態での核兵器の使用は無いという前提の下、通常兵器をも漸次的に縮小し海上自衛隊は沿岸のゲリラ対策と海洋調査を想定すべきという意見に至っては、とても「現実主義者」とは思えない。
     高坂が何度も述べているように核保有を行わない日本が(というより一般的な国家が)通常兵器... 続きを読む

  •  「現実主義者の平和論」において、高坂は日本の価値を実現する方法で目的となる安全保障を獲得するためには流動的な手段を選ぶことが必要であると述べる。日本の追求すべき価値とは憲法九条に規定された絶対平和である。しかし、目標としての絶対平和は正しいが、原水爆の脅威から軍事力を無視し、非武装による軍備なき絶対平和に即座に移行することは不可能だ。高坂は目的への手段として中立論を選択することは手段の自己目的化に繋がるとし、現実主義的立場から極東の緊張緩和を行うべきであると主張する。
     また「海洋国家日本の構想」において、高坂は魂を失った日本が海洋国イギリスを参考にし、今後国際社会においてどう進むべきかを示した。第二次世界大戦後、日本は敗戦の反動から国際政治的位置に適応した経済優先主義と内政中心主義の政経分離へと進んだが、それは米国の軍事的庇護を前提としたために日本独自の防衛・外交政策の発展を妨げることになり、島国である日本の地理的要因も相俟って、日本の魂を失った繁栄へと繋がった。高坂は日本とイギリスの類似点の中で、どちらも海洋国の地理的要因を活かすことが可能であり、大陸と隣り合ってはいるが大陸の一部ではないことを挙げている。そこで高坂は日本が現状維持を続ける限り、いずれは対米従属もしくは対中従属を避けられないと警鐘を鳴らし、それを回避するためにイギリスのような海洋国家的独自性を持つ必要性を述べる。そしてそのためには国家の外に開かれた部分に対して理解を示し視野の広さを回復し、長期的施策を慎重な政治により現実化することが必要だとした。
     感想として、高坂の提案は大航海時代を日本で再現するようなものに感じた。しかし、これは十五世紀から十七世紀におけるものとは異なり、発見ではなく再認識の冒険である。現代の日本において世界への知識で知らないことはほとんどない。だが、その情報による世界を見る視野を日本は自ら閉じてしまっている。私は高坂の提案を閉じた瞼を大洋に向かって開き地平線へと日本を突き進ませるものと受け止めた。
     また、この論文での論点として、手段として極東の緊張緩和を選ぶ正当性と日本が海洋国家と成りうるかが挙げられる。私は前者に結果として肯定的であり、後者に部分的に肯定である。前者は筆者が「現実主義者の平和論」を書いた時期が冷戦期であり、歴史を振り返るに当時の日本が取るべきは中立ではなく極東の緊張緩和であったからである。また、後者は日本が海路の輸送システムを自国で運用できる場合に限り達成できると考える。これは他国の輸送システムより日本のものが優位性を示せるかどうかである。
     最後に、本著の今日の日本での意義について、吉本隆明の指摘した公私の乖離を明確化し、政経分離から脱しなければいけない日本にとって、政治と経済の一貫性を示せる海洋国家構想は日本に意義のあるものであると私は考える。

  • むかーし読んでちょっと感化されかかった本。
    地政学。

  • [ 内容 ]
    東洋でも西洋でもなく、資源に恵まれない日本ゆえ「通商国民」として大きな利点を持つ。
    先天的海洋国家として生きる日本の指針。

    [ 目次 ]
    現実主義者の平和論
    外交政策の不在と外交論議の不毛
    二十世紀の平和の条件
    二十世紀の権力政治
    中国問題とはなにか
    核の挑戦と日本
    海洋国家日本の構想

    [ POP ]


    [ おすすめ度 ]

    ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
    ☆☆☆☆☆☆☆ 文章
    ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
    ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
    ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
    共感度(空振り三振・一部・参った!)
    読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)

    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 中国には国際関係はなかった。今まで中華思想だったが、今後中国がどのような国際関係をもつか注目である。
    吉田、池田首相のラインで築いた戦後日本の外交を今後どのように展開していくか。

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