アメリカにおけるデモクラシーについて (中公クラシックス W 82)
- 中央公論新社 (2015年10月22日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (178ページ)
- / ISBN・EAN: 9784121601612
感想・レビュー・書評
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トクヴィルの『De la démocratie en Amérique』は誰もが認める名著だが、あまりに大部なために近寄りがたくなっているとすれば惜しい限りだ。抄訳があってしかるべきと前から思っていたが、中央公論の「世界の名著」シリーズに入っていたことを迂闊にも見落していた。この度、新たに解説が付されて再び日の目を見たことを喜びたい。10年程前に岩波文庫から松本礼二氏の全訳が出たが、それ以前はこの「世界の名著」の抄訳の他には悪名高い井伊玄太郎訳しかなく、何度も投げ出したくなるのをこらえて四苦八苦しながら読んだものだ。松本訳も好訳だが、この岩永訳も日本語として実にこなれた素晴らしい訳だ。本書の核心とも言うべき民主主義が陥りがちな「多数の圧政」及びそれを緩和する制度的工夫を論じた第二部の7〜8章が選ばれているのも適切だ。
「多数の圧政」については、松本訳の該当巻『 アメリカのデモクラシー〈第1巻(下)〉 (岩波文庫) 』のレビューに書いたので割愛するが、それに劣らず興味深いのは民主主義と宗教の関係を論じた第9章だ。トクヴィルはフランスでは自由と宗教は敵対するが、アメリカでは両者は協力関係にあると言う。フランスでは宗教が世俗的な権力を持とうとしたために、それが抑圧に転化し、人々を反宗教に追いやったが、アメリカでは宗教が政治から距離を置き、魂の問題に専念したために、人々は安んじて宗教を受け入れている。宗教心なき民主主義は専制と結びつき易いというのがトクヴィルの持論だが、アメリカでは政教分離によって人々の自然な信仰心が守られ、それが結果として専制なき民主主義の維持に寄与しているというのだ。
一つ難を言えば、中公クラシックス全般に言えることだが、コスパが悪過ぎる。解説が差し替えられているとは言え、翻訳自体は40年以上前のものだ。本書も含め『世界の名著』シリーズは概ね好訳が揃っているので必ずしも改訳の必要はないが、それならもう少し価格を抑えることを考えて欲しい。本書の序文以外は全て松本訳の1巻(下)に含まれているが、人種問題を論じた捨てがたい第10章は本書では省かれている。にも関わらず価格は松本訳のほぼ1.5倍だ。敢えて本書を買おうという人がどれだけいるだろうか。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
久しぶりに読み直した。この時代確かにユグノーはすでにイエズス会に乗っ取られていたかもしれないと思う。一応悪口は出てはくるけど