水と緑と土: 伝統を捨てた社会の行方 (中公新書 348)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784121903488

作品紹介・あらすじ

かつて日本人は自然を愛し自然に対応して生きる民族だった。それがなぜ現在のように自然を破壊するようになったのか。伝統的な自然観との断絶の跡をふりかえり、自然と人間社会とのバランスを崩した土地利用が何をもたらしたかを、水害、水不足、熱公害、大面積皆伐などの具体的事例から追求する。土壌の生産力こそ真の資源であり、それを失った文明は必ず滅亡するという警告は、日本人に深い反省を促さずにはおかない。

感想・レビュー・書評

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  • 水との繋がりを絶ってしまった社会の末路

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  •  自然界の「分業化」に警鐘を鳴らした日本環境論の古典。本書は1990年の時点で28版を重ね(初版は1974年)、2010年には新版が出るなど、長年にわたって読み継がれてきた本である。
     著者の主張を要約すると、本来は水(河川)と緑(森林)と土(土壌)は一体のものであり、長い年月をかけて相互補完的な関係を築き上げてきたという。しかし、高度成長期の都市開発が、自然界を「分業化」させてしまい、その結果、より多くの環境問題を引き起こすことになった。例えば、治水事業として各地に築かれた「堤防」は、水と緑・土の繋がりを断ち切ってしまったため、これまで森林や土壌が吸収していた水や土砂が全て河川に閉じ込められ、より大規模な水害を引き起こすことになったと著者は批判する。また、ようやく取り組まれ始めた自然保護政策も、その「分業化」を前提にしている点では変わらず、効果は限定的であるとも述べている。
     本書は、こうした都市開発による自然破壊をただ糾弾するのではなく、そうした開発を是とする人々の「思想」にまで遡って分析を行っている点が興味深い。現代の日本が抱える環境問題の”原点”を学ぶ上で、非常に参考になる一冊である。

  • 素晴らしい本。はじめて読んだのは学生の時。レイチェルカーソンの沈黙の春と同じ位、自分にとっては衝撃的で、環境問題を考えるきっかけになった本。

  • かつて自然を愛し自然に対応して生きる民族であった日本人が,なぜ現在のように自然を破壊するようになったか。この本は1974年に書かれたものだけれど,現在の日本に通ずるところは沢山あると思う。日本の国土に住んでいる人達皆に読んでもらいたい。

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    [ 参考となる書評 ]

  • 「私はこの国土で行われてきた破壊の事業のあとをたどりながら、そのどこに誤算があり、誤算はどのようにして生まれたか、その秘密を探って行きたいと思う。」という序章のとおり、水を、農地を、国土を“破壊”したこの国の業績をたどっている。
    2010年7月刊ではあるが、1974年発行の改訂版なので、事例としては昭和のものが紹介されている。しかし恐ろしいことに、その問題は今日でも同じ軌跡をたどっていることが見て取れる。

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著者プロフィール

●著者/富山和子(とみやま・かずこ)
群馬県に生まれる。早稲田大学文学部卒業。立正大学名誉教授。日本福祉大学客員教授。評論家。主な著書に『日本の米』『水と緑と土』(中公新書)『水の文化史』『水の旅』(中公文庫)がある。児童向けには、『川は生きている』『道は生きている』『森は生きている』『お米は生きている』『海は生きている』『びわ湖』(以上すべて講談社)がある。『海は生きている』は、青少年読書感想文全国コンクール課題図書にも選ばれた。川、道、森、お米、海と続く、「生きている」シリーズは、日本の自然と人々の営みをわかりやすく説いた児童向けノンフィクション作品としてロングセラーとなっている。

「2017年 『海は生きている』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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