鯨神 (中公文庫 A 147)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (228ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122008427

感想・レビュー・書評

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  •  『〝クジラ〟強調月間始めました!』9

     第9回は、宇能鴻一郎さんの『鯨神』です。
     60年前(1962年)の作品です。昨年、新潮文庫から『姫君を喰う話 宇能鴻一郎傑作短編集』が出版され、「鯨神」も収録されていますが、中公文庫版の古書を購入しました。
     宇能鴻一郎さんが、官能小説へ舵を切って行く以前の純文学作品で、第46回芥川賞を受賞しています。全四編の短編集です。
     表題作は、巨大な鯨と一人の若く勇敢な刃ザシ(銛師)との壮絶な死闘の物語です。
     祖父・父・兄の復讐、備前和田浦集落の存在理由を賭けた闘いの描写が見事で、先に読了した伊東潤さんの『巨鯨の海』を思い浮かべ、双璧をなすと感じました。
     冒頭の「鯨絵巻」伝承や終末の「鯨神と一体になる幻想」に見る展開の構成、並びに登場人物の役割と個性設定が素晴らしく、短編ながら読み応えがありました。
     他3編の中に、もう一つ「地獄銛」という鯨漁の刃ザシの物語があり、こちらも秀作でした。いずれも後世に残すべき名作で、多くの方々に読んでいただきたいと思いました。

  • 芥川賞、解説:武蔵野次郎
    西洋折りの女◆地獄銛◆光りの飢え◆鯨神(芥川賞)

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著者プロフィール

宇能鴻一郎(うの こういちろう)
1934年、北海道札幌市生まれ。本名鵜野広澄。家族4人で、東京、山口、福岡、満洲国(現中国東北部)撫順、長野県坂城と移り住み、満洲国奉天にて終戦を迎える。福岡県立修猷館高校から東京大学教養学部文科二類に入学。修士課程在学中の1961年、仲間たちと創刊した同人誌『螺旋』掲載の「光りの飢え」が『文學界』に転載され、これが芥川賞候補となる。次作の「鯨神」が翌年1月に芥川賞を受賞。以後おもに性を主題として新しい文学を切り開くが、文壇では正当に評価されず、1971年から徐々に女性告白体の官能小説に軸足を移した。歴史小説、ハードボイルド、推理小説でも独自の世界を築いている。
 主な著書に『密戯・不倫』『楽欲(ぎょうよく)』『痺楽』『肉の壁』『黄金姦鬼』『お菓子の家の魔女』『切腹願望』『金髪』『斬殺集団』などがある。

「2022年 『甘美な牢獄』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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