窯変 源氏物語〈11〉 雲隠 匂宮 紅梅 竹河 橋姫 (中公文庫)
- 中央公論新社 (1996年7月18日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (511ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122026520
感想・レビュー・書評
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源氏物語は雲隠の章を経て光源氏亡き後を描く「宇治十帖」へ。
「雲隠」は表題のみとなっているはずなのに、橋本さんはここで紫式部自身の置かれた身の上と、作品を書くに至った心境を描く章にしている。
そしてそれまでは光源氏の一人称語りだった物語が紫式部が語部(作者だから語部になって当然といえば当然)となる。
ここからの主役となっている薫と匂宮の紹介とか、前段までの髭黒の血筋がどうなったかあたりを書いているのだが、話が動かない!
読み進むのにとても苦労しました詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「雲隠」で源氏と紫式部の魂が交差して交代するあたりがさすが。確かに「源氏物語」は現代の小説と比較すると、かなり骨太・男性的な感じがする。
この11巻の「橋姫」からは宇治十帖と言われるシリーズへ。薫と匂宮の二人は仲がよいが、決して慕わしく思い合ったり競い合ったりしない。無関心がベースにあり、お互い適度な儀礼で距離を保っている。
キラキラ源氏の後に地味な光の裔物語は物足りなさも感じる。
女性達の気持ちの有りようや、置かれた立場でできる精一杯の意思表示らしきものを、源氏はとてもよく気づいてた、そりゃモテるよなあ -
本巻では、雲隠・匂宮・紅梅・竹河・橋姫までが収録されていました。
大胆なのは雲隠。本来はタイトルだけの帖なのに、式部自身の境遇や物語を紡ぐに至った経緯などが描かれていて、ここからは物語を書く女の物語としてあらためて宇治十帖が始められるのねと、読み手側も気を引き締めなおし心構えができました。
だから語り手が源氏から紫式部へ移っていくのもスムーズに受け入れることができ、さすが橋本源治、とまたもや唸りました。。
本巻で印象に残ったのは玉鬘の奮闘です。
この帖で、平安時代の常識というものを再認識。光源氏はある意味現代的な考え方の持ち主だったので彼を一人称に物語が進んでいくと忘れがちだった当時の価値観が、式部の語りも相まってものすごく浮き彫りになった気がしました。
あとは、源氏と頭中将に対する、薫と匂宮の関係の対比の記述が目から鱗。ひとことでいうと薫と匂宮はお互い無関心が基本なんですって。しっかり意識しながら次を読み進めていくと新たな気づきがありそう予感。
それとか、薫の非常識さと自意識の高さや青臭さなんかを(紫式部が)失笑するような表現が多くてそこも面白く、それに比べて冷泉院のエロジジイぶりはリンボウ先生の訳本の方が強い印象でした。もっと辛辣にいって欲しかったような(笑)
とにかく、いろいろ面白くなりそうな予感がする巻でした。 -
雲隠◆匂宮◆紅梅◆竹河◆橋姫
著者:橋本治(1948-、杉並区) -
橋本治 窯変 源氏物語 雲隠〜橋姫
ストーリーテラーが光源氏から 紫式部へ変更。本来 本文のない雲隠に 紫式部と光源氏の関係を論じたのは面白い
紫式部と光源氏の関係を 「女の作った物語に閉じ込められた男と 男の作った時代に閉じ込められた女」とした
光があれば闇もある〜光に照らされた輝きの横に〜影がある〜光と影は一体
源氏ロスのまま、香の世界(匂宮と薫)、宇治十帖へ
光の世界から香の世界へ(匂宮と薫)
*仏に近い性を持って生まれた者は 生来の芳香がある
*薫=源氏と女三宮の子(右衛門の督と女三宮の不倫の子)→冷泉院と秋好中宮の養子に
*匂宮(兵部卿の宮)=明石中宮と今上帝の子
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「雲隠」から宇治十帖の序章「橋姫」までを収録。本来は内容がなくタイトルだけの「雲隠」に大胆な創作が施されています。この巻から語り手は紫式部になります。
匂宮大好きなので「やっと出てきた〜〜!」感がありました。薫は暗いですね…。「紅梅」をとても楽しく読みました。想い出に生きる大納言がせつない。そして「竹河」!めちゃめちゃ読み辛かったです。語り手が老女なので仕方ないのでしょうが…。この章だけ他者の筆に依るものとの話を聞きましたので、その違和感を演出したかったのかもしれません。紫式部によるフォローが入るものの、誰が誰だかこんがらがりました。八の宮は欲がない人という印象でした。やはり第三部なだけあり、源氏が生きていた頃とは印象が違いますね。 -
雲隠、匂宮、紅梅、竹河、橋姫が収録されていました。
雲隠、こうするか…!と感動しました。何これ素敵。源氏がついに死んでしまいました…。
源氏の一人称だったので源氏が死んだあとはどうなるのか、と疑問だったのですが普通に違う人視点で始まりましたね。 -
雲隠。
ああ雲隠、雲隠
作家の力量を感じました。底が知れませんね。
読んでて思ったのが、女形ってやっぱりすごいんだと思うということ。
橋本治の「三島由紀夫」とはなにものだったのかという本の中で、
中村歌右衛門に触れて、
いかにも全身が理屈で出来上がっていそうな美しいお姫様
まるで生きていることが悲劇であるような
。。。
次は宇治十篇に続くのである。
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内容紹介:女の作った物語の中に閉じ込められた男と、男の作った時代の中に閉じ込められた女―光源氏と紫式部。虚は実となり、実は虚を紡ぐ。本書は、物語を書く女の物語として、改めて始められる。 (「BOOKS」データベースより)雲隠・匂宮・紅梅・竹河・橋姫
資料番号:011220209
請求記号:F/ ハシモ/ 11
資料区分:文庫・新書 -
5年ぶりに続きを読み始める。光源氏の死で、語り手が本来の紫式部になる。女房言葉での語りにより、心理小説としてより濃密になったようだ。階級社会の上澄みの生活も大変そうだ。