イズァローン伝説 1 (中公文庫 コミック版 た 1-11)

著者 :
  • 中央公論新社 (1997年1月1日発売)
3.92
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本棚登録 : 125
感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・マンガ (275ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122027886

感想・レビュー・書評

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  • 人と魔の戦い、人の情や愛、魔物と人間の中間にある生物たちのそれぞれの存在と戦い、心の影に現れる魔性を書いたSFファンタジー。最初は普通のファンタジーかと思っていたら、展開が本当に読めなくて、終盤は壮大になっちゃって、作者どう決着つけるんだ??ええ!?こうなるの?!とびっくりしまくりでした。
    また中盤から終盤にかけての作者の絵柄の素晴らしいこと、衣装や情景の美しさにも見入ってしまいます。

    ★★★
    人の心に神が生まれず、人と魔が分かれていない頃の物語。人々は魔を逃れるために両性体として生まれ、成長するとどちらかの性に決まる。
    主人公はイズァローン王国の二人の王子。両性体のまま成長したティオキア王子は魔から人を救う運命にあったが魔王に取り憑かれ、人にとっては救いを与える救世主とも、また人を滅ぼす魔王ともなり、その間で苦悩する。両性具有というのが謎だったり鍵だったりするんだが、そのせいかメイン主人公なのに相当不安定。優しく気弱な王子で世界を滅ぼす魔王で人を惹き付ける救世主で、寂しがりやで頑固で精神分裂症で死にたがり、男は色仕掛けでたぶらかし、女からは精神の清さで聖者様と慕われ…、本人も苦悩しているが周り読者も大変だ。
    従兄弟のルキシュは王となり人間としての治世に励むが孤独の中にいる。周りからは若輩王扱い、政略結婚相手の王妃には惚れ込んでいるのに心を許されず、しかも自分が選んだ腹心の部下はその王妃の引き裂かれた元恋人、そんな余計な事実をルキシュ自身も知ってしまい、彼らを傷つけたと罪悪感を持ったり。
    半身のように求め合い惹かれ合いながらも、裁かれる者と裁く者として再会せざるを得なかった二人と、取り巻く人々。
    ティオキアの従者カウス・レーゼンは、文官出身のくせに短気で腕っ節強くて口調ぞんざいで皮肉屋で、主君には厳しく心身強靭で開き直りが早くて前半おバカ担当で…と興味の尽きない人なんだが、「敬愛すれども盲従しない」の忠誠心で魔に惹かれそうになるティオキアを人として留め守る信念は一貫して貫き通し、究極の忠義と愛とを捧げる。前半のまだ未熟で目の前の出来事にピーピー騒いでた頃は物事に動じない人物を見て「こーゆー越えた人間に私もなりたい!」とか苦っていたけど、ある意味誰よりも越えた人になっちゃいました。まあ入れ込んだ相手が悪かった。両性体で魔王で救世主で(以下省略)を普通の人間としてすべてを受け入れようというんだからもう腹をくくるしかない。
    ルキシュの政略結婚相手フレイア王妃は、王国を守る魔女であり花の女神であり軍神であり理知的な政治家。夫のルキシュからの求愛を初恋の相手を忘れず拒み(完全拒絶は最初だけで充分惹かれ合ってるんですけどね)、自分の勤めを果たそうとしながらも人間の情には不慣れな面を持つ。
    またティオキアを魔王として求める魔物たち、その両雄が遠い過去にも魔王の左右で人を滅ぼしたグリフィン(人面ライオン)と、ゼーダ(乱れない人間は苦手らしくて強いんだか弱いんだか)。
    救われることを求めながら現実的欲求に救世主を見捨てる群集たち。

    <<以下ラストネタバレ>>。
    世界は魔王の人としての愛により救われるが、ティオキアはその魂に魔を融合させて人外へと去る。世界は滅亡の危機にあったことも、それから救われたことも全てを忘れて新たな現実が始まる。
    遠い時代で魔王=ティオキアが復活した時のためそれぞれ遺された魔王と人間の側近。グリフィンは「人と魔は永遠に追いかけっこ、完成しないからゲームは面白い」と嘯き、カウスは人でありながら不死の身となり、魔と人との新たな歴史を見つめそしていつかティオキアの全てを受け留めるため、果てしない未来に向けて力強い歩みを踏み出す…。
    ★★★

    作者は基本設定だけ決めて話を流れるままに進めたらしいです。そこでこのラストになったとは…。
    最後にすべてを引き受けて消えていった人と、果てしない運命をあっさりと受け入れた人の「人」としての命運は過酷に思えるけれど、「パンドラの箱」を開けて受難が始まったけれど、99の絶望の底に1つの希望は確かにある、ってことでいいのかな。
    しかし。設定などでよく分からなかったり途中で変わったっぽいところがあり気になってしょうがない。まあそういうず~っと昔に完結した漫画の設定を真面目に考えてしまうだけのパワーのある作品なのです。

  • 子供の頃に読んだので、よく分からない部分が多かったですが、壮大で難しい話だな~って印象でした。
    ルキシュとフレイアの関係が微妙に変わっていくところが良かったな。
    今読んだらまた感想が変わりそうです。

  • 壮大なファンタジー長編。ものすごい読み応えでした。ファンタジーの典型ともいえる世界観を存分に楽しめました。
    人の中にある魔、世界にあふれている魔、そして愛すること。最終的には愛がすべてという終わり方になりましたが、個人的にはそこが結構好きだったりします。
    カウスとティオキアがいい…!ルキシュもカウピも好きだよー

  • 長大なファンタジー作品。
    序盤~中盤にかけては面白いのですが、ラスト近辺はやや納得しかねるものがありました。
    ルキシュとカウス・レーゼンのキャラクターとしての魅力に引きずられて、最後まで読み通しました。
    ただ、きちんと回収し、完結させてあるので、そこはさすがだと思います。

    オウガバトル64をプレイした方に一度読んでもらいたい作品。キャラクター名にいろいろ思い当たるところがあるはず。

  • 長編ファンタジー。
    両性具有に生まれた皇子(姫?)の物語。

    面白かったと記憶しているが詳細は失念。
    マンガは沢山読んだからなあ。
    ああ、全部思い出したい(^^ゞ

  • 4巻あたりからほとんどティオキアとカウスしか真面目に見てなかったよ、私。

    なんかもう、カウスに惚れる以外道はない、と思うほどカウスがアレなんですけど、何かの陰謀ですか?お前王子に甘すぎだよ!しかも主従関係とかめちゃくちゃ弱いのに、ツボつきやがってくそー。最終巻呼吸困難に陥ったっつーの。
    あれはずるいと思うんだよね、さすがに…て言うかカウスはいつの間に王子にそこまで惚れたのですか。確かこの人、王子がイシュカに左遷される時に初めて会ったから、ほとんどの時間、気が触れた王子としか行動してないはずなんですが。あの王子のどこに命を賭ける要素が?自分がついてないとコイツは生きていけないんだという使命感でしょうか(それなら分かる)。
    何かもう、それこそが王子の魔力だった気がしてなりません。それでいいのか、カウスよ!当初の設定は学士だったはずなのに、頭いいところ見せてくれよ!

  • 救世主の役を背負ってしまった者の苦悩や従者の心の葛藤が実に良く表現されていて、何度読んでも読み飽きない。

    ・・・と、こんな風に書いてしまうと、難しいお話なんじゃないかと誤解されてしまうかもしれない。
    私は15年以上このマンガを読み返しているが、読むほどに解釈が深まり味が出てくる。
    噛めば噛むほど美味しくなる「高級料亭の茶碗蒸しの中にあるシイタケ」のような作品。

  • テーマはまんま聖書

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著者プロフィール

1950年、徳島市に生まれる。徳島大学教育学部中退。68年『リンゴの罪』でデビュー。70年、雑誌連載をきっかけに上京。以後、SF、同性愛、音楽、歴史などを題材に多彩な執筆活動を展開。80年、『風と木の詩(うた)』『地球(テラ)へ…』により第25回小学館漫画賞を受賞。主な作品に『ファラオの墓』『イズァローン伝説』『私を月まで連れてって!』『紅にほふ』『天馬の血族』『マンガ日本の古典 吾妻鏡』などがある。京都精華大学にて2000年~教授就任。14年~18年学長。2014年紫綬褒章受章。

「2021年 『扉はひらく いくたびも 時代の証言者』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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