すばらしい新世界 (中公文庫)

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著者 : 池澤夏樹
  • 中央公論新社 (2003年10月1日発売)
  • Amazon.co.jp ・本 (723ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122042704

すばらしい新世界 (中公文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 分厚いけれど、清涼感いっぱいの本。国際協力関係の授業で使うといいかも、と思えるほどNGO、ODA関連のことが出てくる。ネパールへ行きたくなる本。

  • ヒマラヤの奥地に風車を作る会社員とその家族。含蓄の多い話。ボランティアの在り方や、宗教のこと、バランスのいいところ、理想的なところに視点をあて、そこへ向かっていく感じ。物語としても面白く、長編だが退屈せずに読めた。凡庸で誠実な林太郎、いいなぁ。彼が理科の先生だったら理数も楽しんで学べたかもしれない。書かれた時点では911テロも311の地震による原発事故も起こっていないが、これらを経た今読むと、色々唸らされる。

  • 日本人技術者が、現地で活動するボランティア組織の要請を受けて、ネパールの貧困の村に風力発電の風車を設置する、というお話です。

    では、そこへ行くまでの困難な道のりや、現地人との対立、機械の不具合といった波乱に満ちた冒険小説なのかな、と思いましたが、そういった要素は少なく、現地で主人公が感じたことや、日本に残っている妻とのやりとりから、たくさんのことを考えさせられる内容でした。

    自然との共生、先進国から途上国への支援のありかた、人間らしい暮らし、幸せ、宗教、教育、など、多岐に渡るテーマが扱われていて、どれも一見「堅苦しい、難しい」と思ってしまいがちですが、いま居る位置から一望できる範囲に、わかりやすく並べて見せてくれるので、すんなりと入ってきます。

    わたしたちがライフラインと呼ぶ、電気・水道・ガスさえもない途上国の小さな村の、貧しいながらも心豊かな生活を、主人公の目を通して垣間見ただけでも「不自然」が当たり前の先進国で生まれ育ったわたしたちには二度と取り戻せないものがあるのだ、失ってしまったことにすら気付いていないか、気付いていない振りをしているのだ、(取り戻す術がないから。)と、そんな、少し悲しい気持ちになりました。

    日本ではなじみが薄く、「怪しい・金儲け」のイメージが強い宗教も、本来は人々の心の支えであって、それを捨てたわたしたちは、金銭的に豊かでも果たして幸せと言えるのか、と、強く考えさせられます。

    かと言って、ナムリンの人々の暮らしが唯一の幸せの在りかたであり、一番の人間らしい生きかただ、と押し付けてくるわけではありません。日本で暮らす主人公家族だって、充分幸せそうに描かれています。
    ただ、こういう問題がある、こういった生き方もある、と、新しい視点を与えてもらったという感じです。

    こんなにも長く、堅いテーマを扱っているのに、それを感じることなくスルスルと読めたのは、全編が作者の優しさと慈愛に包まれていたからかなぁと思います。
    各章のはじめに作者の解説が入るのも面白く、小説というフィクションを通すことで、現実に世界が直面している問題に抵抗なく目を向けることができる、すばらしい作品でした。

  • ビジネスのためにネパールに行ったけれど、いざ行ってみると宗教やら生活スタイルにまではまってしまうというその過程が面白いです。冒険小説のようなわくわく感もある。次作『光の指で触れよ』に繋がる心の変化が描かれています。
    日本は不幸の理由を探して、それを退治することで幸福を実現しようとする。というのはなるほどな、と思いました。ナムリンでは素直にそこにあるものに感動し、幸福を感じているみたい。
    プロセスの違い、と言えるのかもしれないけれど後者の方が豊かな感じがするのは何故だろう。

  • 世界のある部分を切り取って、手のひらにのせて見せてくれる小説。
    (バルザックか!)
    読むのに時間がかかったけど、飽きることはなかった。
    現実に対する問題提起と小説というものがきちんと融合していて、すごく良かった。

  •  700Pに及ぶ長編小説というだけあって、本当に多くの事柄を含んだ小説。それでいて、読み辛いとかくどいとかいうことは一切ない。むしろ、1章1章に読ませる部分があって、うんうん唸ったり、クスリとほくそ笑んだり、グサっと心に刺さったりする。「やがてヒトに与えられた時は満ちて…」を読んだ時の衝撃も、それはそれで大きなものがあったのだが、この小説もまた違った意味で自分の中に大きく残る小説だった。

     この小説は本当に色んなメッセージを含んでいて、「これはこういう小説だ」と一言で表せるようなものではない。むしろ表そうとすること自体がナンセンスであるほどだ。でも、これほどある意味で欲張りに、詰め込みに詰め込んで書いた小説がこれほどサッパリと読める、心に入ってくるというのは本当にスゴイことだ。自分のような凡人が、これほどのメッセージを一つの物語に詰め込もうとしたら、冗長になりすぎてくどいと言われるに違いない。確かに職業としての小説家なのだから、それが出来て当然なのだと言われれば確かにそうなのかもしれない。しかし、ただ一つのテーマを書くにも冗長にならざるを得ないのだ、と開き直っているような小説家がこの世の中にはいないだろうか?

     池澤夏樹の文章の魅力はそこにある。小説の中に、「形容詞が多すぎる文章は疑った方がいい。そのような文章には、必ず裏に知られたくない真実がある」というようなことが書いてあった。これは全く疑う余地がないほど正しい。本当に文章が上手い人、或いは話が上手い人というのは、少ない言葉、簡潔な言葉で伝えたいことを伝える。ムダに話が長い人、文章が長い人(自分も含めて)は言いたいことは少ないのに、それを伝える文章、言葉が冗長なのだ。「完璧とは、何かを足せない状態になることではない。 何も削るものがなくなった状態のことだ」。つまり、そういうことだ。

     その池澤夏樹が、700Pに及ぶ長編小説を書いているのだ。そこに含まれるメッセージが多岐に及ぶのは当然だ。そして、それが決して冗長にならず、すっきりした言葉で読者の胸に迫ってくる。そんな小説が良い小説でないはずがない。今まで、池澤夏樹を知らない人に何か一冊薦めるのならば、取っ付きやすさなどをふまえて「南の島のティオ」あたりを薦めるのが妥当だと思っていた。しかし、これから「池澤夏樹がどんな作家か知りたい」と言われたら、迷うことなくこの作品を薦めるだろう。それほど、この作品は池澤夏樹という作家の成分を多く含んだ良作だ。

     続編である「光の指で触れよ」が今年発売されている。是非、そちらも読んでみたい。

  • みすず

  • ネパールの奥地にある国に灌漑用ポンプのための電力を風車でつくるはなし。
    下町ロケットのような痛快話ではなく、宗教、エコロジー、未来、人として…のあたりを混ぜたおはなし。夫婦でやりとりするメールがひたすら長いので割愛した。そんな長いメール書く奴おらんやろ??
    また、主人公の男は好きだが、その妻の考え方が、いかにも、な感じで好きになれなかった。。
    渾身の一撃ではないかと思う作品だが、嗜好か合わないので星二つ…

  • 風力発電をヒマラヤブータンの奥地に建設。エネルギー革命は小容量、地域密着型に。

  • 大手メーカーの風車の技術者林太郎は、妻アユミにかかわる縁から、ネパールで風車を建てることになった。その地で林太郎が見、感じたモノとは。21世紀の生活スタイルを問うた作品。原発事故前ではあったが、原発には批判的な内容でもある。

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