マレー蘭印紀行 改版 (中公文庫 か 18-8)

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (184ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122044487

感想・レビュー・書評

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  • 昭和初期の南国マレーシアの湿度をたっぷりと含んだ情景をまるで静謐な水墨画で描き上げたかのような旅行記。 旅行記と言っても、本人がほとんど登場しない。 熱帯林、ゴム農園、椰子の木や人食い鰐、マラリア蚊、蝙蝠と女衒たち。まだ未開の地での血生臭いマレーシアの人々の暮らしも、金子光晴は美しい日本語でただ見たままに書き残している。 この間読んだ夏目漱石の『草枕』にとても似ている気がした。 どちらも旅をしながら目に映る自然のあるがままの姿を美しい日本語で絵を描くように綴っている。

  • はじめての金子光晴さん
    脈絡がわからなくても
    だんだんすこし楽しく読めるようになる
    すごくではなくすこし

    • workmaさん
      phiさんのコメントの、
      「すごく ではなく すこし」という表現が とっても いいな~ と、思ったので、「いいね」しました( ´ー`)
      phiさんのコメントの、
      「すごく ではなく すこし」という表現が とっても いいな~ と、思ったので、「いいね」しました( ´ー`)
      2021/12/12
  • 高橋源一郎の小説家になるための推薦本である。金子光晴全集(中央公論)六巻で読んだ。100ページ弱である。土地や国名が当時の漢字で書いてあるのでわかりにくいこともある。印象的なことはジャパユキさんの境遇について書かれていることである。聞き書きでもあろう。

  • ママレーシア・バトゥパハの茶餐室で本書を読むという、この世で1番趣のあることをしてしまった。
    金子光晴文章うますぎる。
    朝霧のところと、バトゥパハの最後の女の人の描写。

  • 現在、アジアを中心に旅行記を執筆する様々な作家に影響を与えた作品。昭和3〜7年、シンガポール、マレー半島、ジャワ、スマトラでの体験が詩人ならではの描写で綴られている。数多の旅行記にはない魅力溢れる書である。

  • 「ねむれ巴里」の続編は「西ひがし」なのだが、よく判らず本書を手にする。しかし、この段階で本書を読んだのは良かったと思う。冷徹で透明度の高い文章は第3楽章の趣。

    「ねむれ巴里」の始まりでは、三千代夫人をパリに送った後、自身はシンガポール、マレー、スマトラなどを金策のため旅したとある。徒歩で細道を超えたり、原野でスコールに会いずぶぬれになったり、ジャングルを刳木舟でのぼっていったとある。しかし、この段は至極あっさり。どんな旅だったんだと思う。その事情が判るのが本書。

    弛まぬ川の流れ、凶暴な相を見せる植物、溢れかえる陽光、突然の驟雨、闇に蠢く野獣たちの気配。著者はこの豊潤さの中で空虚を見ている。
    幾らでも引用したくなる切れ味鋭い文書が続く。著者自身の事情についての記述は殆ど無く、ろくでもない知人達は登場しない一人旅は、前2作と印象がかなり異なる。単独でも十分読み応えある純粋な紀行文。スラスラと文章を堪能しながらの読書ができた。

    後半は炎天の下、鉄鉱石を拾う痩せ老いた中国人苦力や売られて奥地へ進んでいく女性達の姿が描かれる。
    悲しき亜熱帯なんて詰らない冗談が頭に浮かぶ。
    爪哇(ジャワ)の段では、三千代夫人も登場する。Mとして表記されている。時系列で並べられた紀行ではないわけだ。

    さて、この後は「西ひがし」に取りかかろう。

  • 反骨、無頼、ってこういう人のこと。

  • 「どくろ杯」などで著名な、金子光晴のアジアを
    旅行した際に感じたことや、風景などを
    独特の世界観で語っています。

    本書の中に出てくるマレーシアの部分で
    「バトゥパハの日本人倶楽部」というところに滞在した際の
    記述に「ゆったりとした独特の時の流れ」の記述が
    実際に現地を旅した私にとっては正に言い得ているなという
    感じだった。

    他にも彼の独特の視点で描かれたディープなアジアが
    見えてくるはずです☆

  • ジャカルタに行く際に読んだ。最初はとっつきにくい印象だったが、次第にそれも慣れてきた。戦前のマレー半島、蘭印地域の熱帯特有の蒸し暑さを含んだ熱気が文章から感じられ、それと同時に、今日の飛行機を使った旅と金子の時代のゆったりした時代の違いや決して変わらないものを見つめる機会になった。上質の紀行文と言える。

著者プロフィール

金子 光晴(かねこ・みつはる):詩人。1895年、愛知県生まれ。早稲田大学高等予科文科、東京美術学校(現・東京芸術大学)日本画科、慶應義塾大学文学部予科をすべて中退。1919年、初の詩集『赤土の家』を発表した後に渡欧。23年、『こがね蟲』で評価を受ける。28年、妻・森美千代とともにアジア・ヨーロッパへ。32年帰国。37年『鮫』、48年『落下傘』ほか多くの抵抗詩を書く。53年、『人間の悲劇』で読売文学賞受賞。主な作品として詩集『蛾』『女たちへのエレジー』『IL』、小説『風流尸解記』、随筆『どくろ杯』『ねむれ巴里』ほか多数。1975年没。

「2023年 『詩人/人間の悲劇 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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