- Amazon.co.jp ・本 (321ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122049857
感想・レビュー・書評
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「夏休み、さゆりと洋介の姉弟に毎日届く父の手紙は一日一話の小さな「お話」。物語を通して生まれる新しい家族の姿。」
著者等紹介
井上ひさし[イノウエヒサシ]
1934年生。上智大学外国語学部フランス語科卒。「ひょっこりひょうたん島」など放送作家として活躍後、戯曲・小説・エッセイなどの執筆活動に入る。小説では『手鎖心中』で直木賞、『吉里吉里人』で日本SF大賞および読売文学賞など、受賞多数
「読んでいる私は次のお話を二人の姉弟以上に待ちわびてしまう。一つ一つのお話の世界を描く和田誠さんのイラストがまた素晴らしい。ー実は、毎日届けられる「お話」には秘密がある。そのことで童謡するさゆりだが、田舎で出会った様々な経験や、陽介の励ましに助けられながらそれを乗り越え、大人になって行く。」
(『小泉今日子書評集』の紹介より)詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ひとつのお話の中にお話がいっぱい……。
その上、敬愛する和田誠さんのイラストがちりばめられて……
なんと贅沢な……。
超高級、おせち料理をいただいた気分です。
お二人ともありがとうございました。 -
井上ひさしの連作小説『イソップ株式会社』を読みました。
『東慶寺花だより』、『モッキンポット師の後始末』に続き、井上ひさしの作品です。
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夏休み。
いなかですごす二人の姉弟のもとに、毎日届く父からの手紙には、一日一話の小さな「お話」が書かれていた。
物語が生み出す、新しい家族の姿。
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2004年(平成16年)5月から2005年(平成17年)1月の期間『読売新聞土曜日朝刊』に連載された作品… 和田誠のほのぼのとした挿絵が印象的でした。
■はじめのお話 スフィンクスのなぞ唄
■第二のお話 絵の具の秘密
■第三のお話 黄金の壺
■第四のお話 日本一きれい
■第五のお話 小さな王様
■第六のお話 一瞬のまばたき
■第七のお話 一九一八六一
■第八のお話 小さな王様、船出する
■第九のお話 すてきなジーパン
■第十のお話 うっかり博士の最後
■第十一のお話 小さな王様、取り引きする
■第十二のお話 近眼先生と八助
■第十三のお話 悲観主義者と楽天家
■第十四のお話 見えないライバル
■第十五のお話 小さな王様、帽子の秘密を知る
■第十六のお話 泡の一生
■第十七のお話 おろか村
■第十八のお話 小さな王様、陸に上がる
■第十九のお話 偉ぶった市長さん
■第二十のお話 東京とお日さまと
■第二十一のお話 小さな王様、水玉を発見する
■第二十二のお話 利発な王子
■第二十三のお話 魚清のお兄さん
■第二十四のお話 小さな王様、お天気づくりの魔女と話をする
■第二十五のお話 どっちがうまいか
■第二十六のお話 アメリカかぶれ
■第二十七のお話 小さな王様、天気の神様に会う
■第二十八のお話 口をきくお金
■第二十九のお話 ゴンベ狸
■第三十のお話 小さな王様、怒りだした地球を知る
■第三十一のお話 長助さん
■第三十二のお話 巡り会い
■第三十三のお話 猫のミラノ
■第三十四のお話 苦心の歯医者さん
■第三十五のお話 後日談
■第三十六のお話 小さな王様、尖んがり帽子を縫う
■おしまいのお話 小さな王様、島へ帰る
■あとがき
東北に住む祖母・トキばあさんのいなかの家で夏休みを過ごすことになった、星さゆり(中学1年生)と洋介(小学4年生)の姉弟に海外出張中の父・光介から届く手紙は、一日一つの小さな「お話」… 魅力あふれる古今東西の物語が、新しい家族をつくりだす、、、
童話作家の父が子どもたちに伝えたかったこと… 物語を通して生まれる新しい家族の姿。
豊かな自然、林間学校にやってきた子どもたちとの交流、地元の人たちとのふれあいを通してひとまわり成長する姉弟… 少し大人に近付くんですよねー
手紙を待つ気持ち、手紙を開くときのドキドキ、懐かしい文字や愉しみにしている「お話」… 姉弟の経験や成長を通じて、家族の在り方が描かれており、年代を問わず愉しめる作品だと思います。
特に弟・洋介の成長が著しくて逞しくなったと感じさせられましたねー 和田誠のカラーイラストがたっぷりなのも嬉しい作品です。 -
井上ひさしさんの作品はひさびさ。
1日ひとつずつお話を書いてくれるお父さん、それを楽しみに待つ子供たち。夏休みのお話の内容と日常が綴られている。
お話は分かりやすく教訓が含まれているものもあれば、なぜそうなるのかと思うような話もあり、それ自体、昔話と共通してなんだか面白い。 -
毎日届くショート話。そこに秘められたラブロマンス。
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挿し絵が入っているので話のイメージがしやすかったです。
もっとサクサク読めるかと思っていましたが意外と時間がかかりました。
注記の入れ方からやっぱり子ども向けなのかなぁと感じました。 -
星新一さんの本の絵だ!と思って読んだ。
夏休みの物語。
こういうほのぼの系の話に、
母がいない家庭、父が再婚するかも、
と言ったテーマは正直イマイチ。
大人だけでなく、十代もターゲットにしている話でしょ?
だったら、あえてそのストーリーは必要なのか?
と思った。
純粋に、父の格言(だっけ?)を話ごとにつけて、お姉ちゃんとやんちゃな弟君が成長していく、という形でも、個人的には良かったのでは、と感じた。
最近、絵本でも、母親が亡くなる話が流行っているが、
絵本を読む世代に、全く必要の無いテーマであり、
「死」=「感動」
という絵本の読み聞かせをする世代を実はターゲットとしているチープな感動話はアホらしいと思う。
ということで、この作品にも、引っかかる嫌な気持ちを感じた。 -
こんな童話を井上さんは書いていたのね!
十年くらい前の刊行のようだ。
夏休み、母のいないさゆりと洋介きょうだいは、田舎のおばあちゃんの家で過ごす。
父は童話専門の出版社の社長として、海外のブックフェアを回り、買い手を見つける出張にでかける。
そこで毎日、きょうだいのために、童話を送ってくる。
社員の、いつもにっこり弘子さんの手を通して。
いたずらっ子の弟洋介が、しっかり者の姉、さゆりの心を開いていくのが面白い。
大切な人が大切にしている人は、自分たちにも大切だ。
洋介は普段しょうもないいたずらばかりしているけれど、そんな素朴な愛情を表現できる子どもであるようだ。
しかし、この本が面白いのは、メタ物語になっているからだ。
このさゆりたちが出てくる話の中に、父や、弘子さんが書き送ってくる話、他の登場人物たちがする話が埋め込まれている。
その話の一つ、温暖化で水没しようとしている南の島の、小さな王様の物語は、父の会社、イソップ株式会社にやって来て...と、話と話が交差していく。
子供のころ、この本に出合っていたら、夢中になっていただろうなあ。
今、短い大人の夏休みを過ごしながら、この本を読み、うとうとしながら、ああ、夏休みが終わっちゃう、家へ帰らなきゃ...と思ってしまった。