漂泊 (中公文庫 と 25-19 警視庁失踪課・高城賢吾)

著者 :
  • 中央公論新社
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感想 : 59
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  • Amazon.co.jp ・本 (449ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122052789

感想・レビュー・書評

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  • 明神愛美が、火事に伴なうバックドラフトにより重傷を負い、入院。そんな衝撃的な冒頭部に、たちまち作品世界に引き込まれた。
    彼女はいつの間にか、高城賢吾にとってかけがいのない相棒になっていたことを痛感しながら、失踪者を追いかける高城。今回の失踪者は、火事現場の遺体かもしれない有名な作家。
    そして、その失踪には、哀しい背景があった。
    この作家の告白の一部には、著者の思いもあるのだろうか。自分の小説に疑念をいだき悩むこの作家と著者の立場は、対極に位置するのではと、一般読者は邪推するが・・・

  • 失踪課のメンバーである明神愛美が偶然居合わせた火事のバックドラフトに巻き込まれ負傷。
    物語は愛美の復帰までと、火災現場に残された二つの遺体の事件の解明。
    失踪届が出された人気ミステリー作家の行方を追う三つのストーリーが同時に進行し、互いに絡み合う複雑な様相を呈していく。
    昇進に並々ならぬ意欲を持つ阿比留に気を使いつつ、高城は人気ミステリー作家である藤島の行方を追う。
    ストーリーは二転三転しながら、徐々に事件の核心に近づいていく展開は相変わらず面白い。
    本調子とはいえないまま現場復帰を果たした愛美へ素直に優しくできない不器用な高城もいい。
    優しい言葉のひとつもかけられない人間は、ちょっとした優しさをみせるだけでグッと印象が変わる。
    今回はあらためて高城の不器用な優しさと、警察官としての本人も気付いていないかもしれない秘めた熱さを感じる物語だった。

    作家と呼ばれる人たちにまつわる描写も多い。
    本好きな身としてはとても興味深かった。
    作家の苦しみと悩み。編集者の思惑。
    リアリティのある描き方で、ひとつの作品を生み出すことがいかに大変なのか。
    「なるほど」と思いながら読み進んだ。

    余談だけれども、鳴沢了シリーズの主人公・鳴沢の名前が出てきたことも面白かった。
    鳴沢だけでなく、このシリーズには大友など堂場作品の登場人物がたまに顔を出す。
    「一緒に仕事をしたことがない。今後もそういう状況は避けたい」と高城に思わせるほど鳴沢の噂が響き渡っていることが面白い。
    鳴沢も好きなキャラクターだったので、ほんの少しの同情を感じつつも笑ってしまった。

  • ビル火災に偶然居合わせた高城・明神コンビ。人気作家の失踪に絡みストーリーは展開していく。逮捕に至るまでの明神・井形の女性パワーも侮れません。最後の部分で高城と藤島の対話で見え隠れする作家という人格分析が作家自身と重なる部分があるのかと興味深かったです。「小説なんて(途中略)、人の心理を描くための道具です(文中より抜粋)」の一言が印象的でした。


    再読ーーーーー爆発場面から始まるこの作品。しかも、被害者は誰?なかなか見えてこない事件像にヤキモキしてしまいます。作家という職業のやりきれなさは想像するしかないのですが、ストーリーを構築し、言葉を紡ぎ出す才能には憧れます。 さて...自作は「裂壊」何と実家にあるようです。送ってもらうにしても、この新型コロナ情勢下。国際便にもかなりの影響が...というわけで、実家で探してもらう、プラス国際便の遅延により、このシリーズ、ちょっと間を置くことになります。次は何を読もうかなあ〜

  • もっとつっこんで書いて欲しい。

  • 久しぶりに失踪課シリーズを読みました。
    今回の小説家にしてもそうだし、これが作詞家・作曲家など、モノを生み出す事を職としている方の苦悩を知った。

  • 2020.5.4-299

  • 警視庁失踪課・高城賢吾 シリーズ第4弾。

    書き下ろしです。

    署の近くの雑居ビルで火災の爆発に巻き込まれ、ケガをしてしまった明神巡査。

    火災現場には他殺と思われる2体の男性遺体が発見される。

    捜査本部が設置され、捜査が進んでいくと、そのうちの一人が、捜索願が出されていた有名作家の藤島憲ではないかという事実が浮上する。

    高城達、失踪課面々は捜索願が出されている藤島を捜す形で、捜査本部の補助的な役割として動き出すが、失踪課の捜査が、本部捜査の本筋となっていく。

    果たして殺されたのは藤島なのか?

    作家の周りに出現する高校時代の友人、編集者、作家仲間などがいろんな伏線を醸し出してくれる。

    このシリーズの中では一番好きな作品かも。

  • 3.5 安定の高城シリーズ。だんだんとキャラの特徴や成長、関係性の変化などが見てとれるように。これぞシリーズ本の醍醐味ですな。シリーズはまだまだ続く。

  • ビル火災のバックドラフトに巻き込まれ負傷した明神。鎮火後の現場からは、殺しの痕跡のある身元不明の二遺体が出た。犯人による隠蔽目的の放火だったのか。傷つけられた仲間のため、高城は被害者の身元を洗う決意をする。調査の中で、ひとりは捜索願の出されていた作家ではないかとわかり、事態は思わぬ方向に進んでいく。

  • シリーズ4作目。
    久々に読んだけれど、やはり面白い。
    派手さはないものの、それが何だか良い。
    高城のダメ男度が減り、敏腕刑事っぽくなってきましたね。
    今回は小説家の失踪という事で、小説家や編集者の心の底を垣間見たような気分。

    モノを作り出す人の産む苦しみ、孤独が書かれていたのですが、これは作者の思いと通じているのでは、と勝手な憶測をたてています。

著者プロフィール

堂場瞬一(どうば しゅんいち)
1963年茨城県生まれ。2000年、『8年』で第13回小説すばる新人賞受賞。警察小説、スポーツ小説など多彩なジャンルで意欲的に作品を発表し続けている。著書に「刑事・鳴沢了」「警視庁失踪課・高城賢吾」「警視庁追跡捜査係」「アナザーフェイス」「刑事の挑戦・一之瀬拓真」「捜査一課・澤村慶司」「ラストライン」「警視庁犯罪被害者支援課」などのシリーズ作品のほか、『八月からの手紙』『傷』『誤断』『黄金の時』『Killers』『社長室の冬』『バビロンの秘文字』(上・下)『犬の報酬』『絶望の歌を唄え』『砂の家』『ネタ元』『動乱の刑事』『宴の前』『帰還』『凍結捜査』『決断の刻』『チーム3』『空の声』『ダブル・トライ』など多数。

「2023年 『ラットトラップ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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