木魂,毛小棒大: 里見とん短篇選集 (中公文庫 さ 55-1)

著者 :
制作 : 小谷野 敦 
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 21
感想 : 2
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  • Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784122054431

作品紹介・あらすじ

里見〓(とん)の真骨頂は短篇にある。『里見〓(とん)伝』を執筆し、その作品を愛してやまない小谷野敦が選んだ、中間小説的な、色気と俗気の匂い立つ短篇選集。

感想・レビュー・書評

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  •  「小説というのは、何の予備知識もなく読むべきものだというのは、近代的な芸術至上主義に毒された考え方である」という解説の一文が、この本の一番心に響くポイントだと思う。
     もちろん作品も面白いが、解説は何度も読み返してしまう。
     あと、女性からのブーイングというか、男性中心過ぎるみたいなことは、言われそうな気がするが、男性中心過ぎると怒る女性ほど結構男性にふらふら着いていってつらい思いをしてしまいがちになる人が多いので、そういう男嫌いほど読んで欲しい本だと勝手に思っている。
     「ふところ子」はかなりえげつない話。母親とその息子、ともどもいわゆる「親子丼」というか、師匠に母親が、その師匠の女弟子に息子が、という、エロくとも、ただのエロさじゃない、良い作品。特に女弟子による息子への容赦のなさとか、お金がなくなってきて別荘に住まうことになるとか、とにかくリアル。でも重たいということでもない。
     「毛小棒大」は歯医者が狙ってた女の口から友人のチン毛を見つける話で、はっきりと書いてはいないが、私は、この主人公の歯医者は女とやってると思う。まあ穴兄弟になって終わったということか。最後に陰毛を渡しに行くとか、そこもいい。
     「くちやね島」は、食っちゃ寝ひたすらする話であった。これも釣りだのなんだの楽しめた。「海の上」は男の野生が目覚めて、自然を目の前にして性的に興奮して、愛人を宿に呼んだのに、どうでもいいわとなる話。「文学」は、ものにならない作家志望の、手に職をちゃんと持った男の悲哀。これもいい。「木魂」は、運動神経抜群の野生少年が、日本一のスキーヤーとなって、昔山を案内してあげた女の子が皇族で、優勝してから再会する話。吉川英治みたいだなと思ったが、ちゃんと直立不動になって敬礼するところが吉川と違っていて、とても良い感じの場面になってる。
     「山小屋」はちょっとホラーな感じ。勝手に弁当を食べに迫ってきて、追いかけられる。乱暴されかける恐ろしさ。逃げ込んだ場所で、男がさらに手を出すまいか考えつつ、結局何もせずに終わるのが救い。
     そして「小坪の漁師」であるが、里見伝を書いたほど小谷野氏ならば、この一編をどれほど味わい深く読めたか、うらやましくなる。
     私小説の楽しみ方というのも、解説で触れられている。勉強になる一編だった。

  • 通俗味の強い昭和期の里見弴の作品を主に集めた短編集。若い頃の芸者遊びや吉原での遊蕩などといった実体験からの影響が強いであろうと想像される、男女の会話のエロチックな雰囲気を味わう。

    若さの盛りを過ぎた肉体を抱えつつ、若い女性との会話を通じたエロスをどう構築するのか、ということについて学びました。というわけで、
    ベストは「海の上」かな。いや、下らない話なんだけど。

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