黒船の世紀(上) - あのころ、アメリカは仮想敵国だった (中公文庫 い 108-2)
- 中央公論新社 (2011年6月23日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (326ページ)
- / ISBN・EAN: 9784122054936
感想・レビュー・書評
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避けられない戦争が存在するということは現実であった。しかも兵器の著しい巨大化が戦争を変えた。巨大化は軍艦で表現されていく。軍艦にはテクノロジーの最新の成果が集積していた。
黒船がもたらした心理的な傷が外圧という不安の物語のベースを作った。
政治でも革命でも戦争でも先立つものは軍資金。
祖国を持たないユダヤ人は国家に依存しない。自己を守るためには自己自身の力の外にないことを歴史的に教えられている。良かれ悪しかれユダヤ人は狭き国家人ではなく、広く世界人である。世界人であるがゆえにいたるところの国から排斥され、多民族から憎悪されている。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
第一次大戦前後から、第二次大戦前にかけて、「日米未来戦記」が流行した。この時代を包んでいた雰囲気を、日本、米国、英国の名もなき作家達の生い立ちとその作品を通じて描き出している。
黒船来航から50年後、アメリカの大艦隊がまたも日本に訪れたことはあまり語られない。このときの「白船来航」に対する国内メディアの反応は、「万歳、歓迎」の大合唱であった。これは巨大な国力を持つアメリカとの戦争を恐れての、最大限の「恭順の意」だった。その裏で、日露戦争に勝ったことを遠因として、米国への対等の意識も芽生え始める。
実は、アメリカ国内でも、移民排斥運動に加えて日本脅威論がしだいに高まっていた。大艦隊の派遣には、日本の牽制と言う意味が多く含まれていたのである。
互いを仮想敵国とするような雰囲気がどのようにして醸成されていったのかを、作家達の視点から多面的に捉えていく。